自転車に乗るなら、自転車事故とも隣り合わせ
ちょっと買い物に行くなど日常の移動手段として、休日の趣味として、毎日の通勤通学の手段としてなど、自転車を利用する人口は年々増えています。東日本大震災で帰宅難民を経験したり、その状況を目の当たりにしたりして、愛用者が増えたという話に納得する人は多いでしょう。現在の自転車登録台数は全国で7000万台にのぼり、日本人の2人に1人は自転車に乗っています。自転車事故が多いのも当然かもしれません。
しかも、最近は自転車事故による高額賠償も相次いでいます。2013年には、小学校5年生の男児が散歩中の女性と衝突し、女性が寝たきりになった事故に対し、約9500万円の賠償金を払うよう判決が出されました(下表参照)。自転車が関連する事故は2014年に約10万9000件あり、10年前に比べ約4割減少していますが、自転車と歩行者の事故は約2600件で10年前とほとんど変わっていません。しかも、自転車に乗っている本人が死傷した場合、その6割以上が安全不確認などの法令違反があるという点も見逃せません。
10月から全国ではじめて、兵庫県が条例で自転車保険の加入義務化
これを受けて、2015年6月1日から改正道路交通法が施行されました。「信号無視」「一時不停止」「酒酔い運転」「安全運転義務違反(携帯電話を使いながらの運転で事故を起こしたなど)」など14項目の危険行為で3年以内に2回以上、摘発された人には、安全講習の受講を義務付けています。講習は1回3時間で5700円。受講しないと5万円以下の罰金が科されます。
安全に力を入れる自治体も増えてきており、兵庫県では、全国に先駆けて「自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例」を施行。2015年10月1日からは自転車保険の加入を義務付けます。9500万円の賠償命令が出た県でもあるため、動きが早かったといえます。
ママや小学生はぜひ入りたい自転車保険の最新事情
損害保険会社も新型の自転車保険を次々と発売しています。今や自転車保険の老舗となったのがau損保 あうて「ケガの保険bycle」。加害者になった場合のケガや死亡の損害賠償はもちろん、自分がケガをした場合も補償。また事故で壊れてしまった自転車を無料で自宅まで搬送してくれるサービスやコースによっては弁護士の示談交渉サービスも付加できます。
三井住友海上火災保険とセブン-イレブン・ジャパンが取り扱う「自転車向け保険」は、コンビニ内のマルチコピー機を利用すれば10分程度で手続きが完了します。インターネットで加入できる「ネットde保険@さいくる」も取り扱っています。
スマホで申込ができるのが東京海上日動火災保険とNTTドコモが取り扱う「ドコモサイクル保険」。賠償責任補償額が最高2億円と高額なのも特徴。携帯電話使用料と一緒に保険料を支払える点も便利です。
通勤に使うサラリーマンはもちろん、"ママチャリ"で子どもを載せるママ、日頃の行動の基本になっている小中学生など、幅広く愛用されている自転車ですが、万一への備えも万全にしておくことが求められている時代なのかもしれません。
<著者プロフィール>
酒井 富士子
経済ジャーナリスト。(株)回遊舎代表取締役。上智大学卒。日経ホーム出版社入社。 『日経ウーマン』『日経マネー』副編集長歴任後、リクルート入社。『あるじゃん』『赤すぐ』(赤ちゃんのためにすぐ使う本)副編集長を経て、2003年から経済ジャーナリストとして金融を中心に活動。近著に『0円からはじめるつもり貯金』『20代からはじめるお金をふやす100の常識』『職業訓練校 3倍まる得スキルアップ術』『ハローワーク 3倍まる得活用術』『J-REIT金メダル投資術』(秀和システム)など。