Microsoftは7月2日(米国時間)、Windows 10 Insider Preview ビルド10162をリリースした。6月29日にビルド10158、翌日の30日にビルド10159をリリースし、そして今回のビルド10162である。この3連打には少々驚かされた。

一週間で3つのビルドをリリースしたWindows 10 Insider Preview。画面はビルド10162

そもそもWindows 10開発プロセスに関してMicrosoftは、「Ring Progression(連続する輪)と呼ぶ仕組みを採用した」と説明している。6月末の時点で新規コードの追加は行わず、既存コードのバグフィックスに専念していると思われるが、いずれにせよデイリービルドを生成するのはこれまでどおり。その結果をOSG(Operating System Group)メンバーが検証し、安全性を確保すると、Microsoft社内の数万人が運用を開始。その次にWindows Insider Program参加者に公開するという流れだった。

Windows 10の開発プロセスとしてMicrosoftが採用した「Ring Progression」

6月の終わりから立て続けにリリースしたWinodws 10 Insider Previewのビルドは、いずれも高速リングを対象にしているが、それでも早急な印象は拭えない。直近の社内ビルドは確認できなかったが、上図で言うところのOSGリングの検証をスキップしているのではないか、という印象がある。OSG FundamentalsチームのエンジニアリングジェネラルマネージャーGabriel Aul氏は、「ほぼすべてのビルドが内部リングにあり、開発チームは"最終的な仕上げ"に取りかかっている」と言う。

振り返るとビルド10159は「Hero」と呼ばれる画像をロック画面やデスクトップの背景画像に採用し、サインイン画面を再デザインした。そのほか、300を超える修正も加わっている。そして今回のビルド10162では、信頼性やパフォーマンス、バッテリー消費の改善を行った。その結果を踏まえてAul氏は、ビルド10162の安定が確認できれば、低速リングおよびISOファイルの提供を7月第2週に予定していると述べていたが、同日早々にISO版のダウンロードリンクを更新している。

話は変わるがWindows 10は、これまでのバージョンやService Packといった区切りごとにローンチする手法から、常に更新していく「Windows as Service」に移行する。本連載でも何度か触れてきた話題だが、今後もWindows Insider Programは続く。そこでMicrosoftは、Windows 10へ移行するエンドユーザーに対して2つの道筋を用意した。

Windows 10時代のアップデートプロセス

上図はBuild 2015のスライドをde:code 2015開催時に日本語化したものだが、Windows 10は旧態依然としたプロセスを破棄し、従来のWinodws Updateによる更新プログラムのリリース「CB(Current Branch)」の直前に、早期テストプログラムとしてInsider Preview Branchを設けている。同プログラムの参加者数は500万人を突破。もちろん間もなく登場するWindows 10に対する関心の高さから、増加傾向にあるのだろう。このように7月29日に登場する(アップグレードを開始する)Winodws 10はゴールではない。今後数年以上は確実に続くであろうMicrosoftの新たなスタート地点となるのだ。

Windowsユーザーが初めて体験するパッケージからサービスへの移行は、どのように化学変化を起こすのだろうか。ちょうど既報のとおりMicrosoftは創業40周年、日本法人設立も30周年の節目にあたるが、サービスへの移行をユーザーに浸透させるため、これまで以上のチャレンジャー精神を求められるだろう。

なお、日本マイクロソフト関係者は「Windows 10搭載PCの調整や交渉で、夏から秋・冬にかけては非常に忙しい」と筆者に説明しつつ、「一部のPCベンダーが7月29日前後にWindows 10プレインストールPCをリリースする可能性はゼロではない」とも述べていた。

日本マイクロソフト代表取締役社長 平野拓也氏就任時のスライド。今年で設立30周年を迎える

阿久津良和(Cactus)