石破茂・地方創生担当相は6月初旬、日本記者クラブにて『地方から創生する我が国の未来』と題して講演し、その後、会見を開きました。
「投資家は首都圏ばかりに集まり、全国での景気にバラつき」
まず、日本社会、日本経済の現状について石破氏は、
「国家は外からだけでなく内からのいろいろな脅威によって危機に直面するものだ。日本はこれまでに経験したことのない超高齢化社会を迎えており、高齢者は漠然と老後に不安を持っている。例えば欧米ではリタイアする時に持っていた資産の大部分は、寿命がつきて亡くなる頃までに使い果たし、ほぼ資産を残さないで人生を終える。だが、日本ではリタイアした時と亡くなる時とでほぼ同額の資産を持ち続けている。そこには漠然とした老後への不安が背景にある。よって、高齢者が若い人たちに資産を回さなくなり、若者にお金が回ってこない。ここにバラつきが出てくる。
同じように、首都圏と地方を比べても、投資家は首都圏ばかりに集まり、全国での景気にバラつきが生じている。景気は循環して初めて良くなるものだ。また、地方で医療・介護に従事する若者が東京圏へ移動するという現象も起きている。これが続くと、地方はさらに過疎化し、東京一極集中が進む恐れがある。まさに今、止めなければならない。これが地方創生の核心だ。都市への人材流出を抑えるためにも、元気なうちに高齢者が地方に移住する促進策を講じるべきなのだ」
と解説しました。
「東京は再生産をしない都市、人々が集中していくことはいかがなものか」
一方、高齢者の地方移住策の推進に批判が出ていることについて石破氏は、
「姥(うば)捨て山を作るとか、強制移住だとか、そういう批判もあるようだが、誰もそんなことは言っていない。そもそも東京は再生産をしない都市であるのに、そこに人々が集中していくことはいかがなものか。第二の人生を地方で暮らしたいと思っている人たちに、選択肢を提示しているのであり、地方移住を阻害している要因を除去するのが政治の仕事だ。そのために、高齢者を地方に移住させて必要な医療・介護サービスを提供する『日本版CCRC構想』を検討している。また、47都道府県、1718の市町村に対して、2016年3月31日までに、総合戦略を策定するよう促している。
地方創生の取り組みは、まだ点であり線にはなっていないが、密になってきていると言える。日本全国、どの地方でも『産官学金労言』=産業・商工会議所、官公庁、地方大学・高校、地方銀行、労働組合、言論機関(マスメディア)、皆で一丸となって参画し、地方創生を実現させたい」
と力説しました。
「第2子、第3子のいる家庭の割合は、男性が家事に参画する時間と比例」
また、労働市場改革について石破氏は、
「人口構成をどう考えるかということが重要だ。実は、第2子、第3子のいる家庭の割合は、男性が家事に参画する時間と比例している。男性の働き方を変えないと女性の働き方も変わらない」
と強調しました。
執筆者プロフィール : 鈴木 ともみ(すずき ともみ)
経済キャスター・ファィナンシャルプランナー・DC(確定拠出年金)プランナー。著書『デフレ脳からインフレ脳へ』(集英社刊)。東証アローズからの株式実況中継番組『東京マーケットワイド』(東京MX・三重テレビ・ストックボイス)キャスター。中央大学経済学部国際経済学科を卒業後、現・ラジオNIKKEIに入社。経済番組ディレクター(民間放送連盟賞受賞番組を担当)、記者を務めた他、映画情報番組のディレクター、パーソナリティを担当、その後経済キャスターとして独立。企業経営者、マーケット関係者、ハリウッドスターを始め映画俳優、監督などへの取材は2,000人を超える。現在、テレビやラジオへの出演、雑誌やWebサイトでの連載執筆の他、大学や日本FP協会認定講座にてゲストスピーカー・講師を務める。