買い物は楽しい。安く買えるともっと楽しい……ということで、「セール」を購買行動の判断材料にしている人も多いと思います。でも、このセールには消費者に衝動買いをさせる販売側の戦略があります。ここでは、お金を貯めるという観点で、セールで買い物をする際に気をつけるべきポイントをファイナンシャルプランナー の杉浦詔子 (のりこ) さんに教えてもらいました。
「お得」と「得」は違います
セールや「●点で30%割引」といったまとめ割引などをフル活用して、少しでも安い買い物をするための工夫をしている方々も多いと思いますが、この「セール」には、販売側の事情が多分に反映されています。
これは店舗でもネット通販のサイトでも共通することですが、セールの対象になっている商品をよく見ると、実は「いつもセール品になっている」ものがあることにお気づきでしょうか。一見すると利益還元のように思えますが、実際には「セールのために仕入れた商品」もあり、セール価格で販売してもお店側は十分利益を確保できるようになっているものがほとんどです。
「定価に対する割引率」を気にして、セールの値札をはがして定価を確認したことはありませんか? このような消費者心理を逆手にとったのが「セール」という商法ともいえます。
もちろん、セールで買い物をすること自体は何ら問題がありません。注意すべきなのは、「セールだから」という理由で不要なものまで買い込んでしまい、買ったはいいけど使わないものが増えてしまうということです。その結果として購入して失敗=損をした状況になってしまいます。
例えば「1足で580円」のソックスが「3足で1,280円」で売られていると仮定します。定価だと580円×3足=1,740円となりますが、3足まとめて買うと1,280円ですので、差額の460円分を「得した」気分になりますね。でも、これは本当に得になるのでしょうか。
ソックス3足を「まとめて」買う必要性があったのであればいいのですが、「本当に必要なのは1~2足だけ」だとしたらどうでしょうか。まとめて買うと得だからという理由で、無理やり3足目を選ぶことはありませんか? そして、3足目として買われたソックスが、結局使われず引き出しの奥に眠ったまま……つまり「買ったまま」の状態になっているケースは何だかもったいないです。
そうなると、決して「460円を得した」とは言えなくなります。2足しか必要なかったとすれば、本来は1,160円の支出だったのですから。しかし、3足まとめた方が得したように感じ、3足目を購入して1,280円を出費 → 結果的に3足目を使わなかったのであれば、2足だけを買った場合との差額の「120円を損した」ことになってしまいます。
購入前にいったん立ち止まることも大事
「あと●分」「残りあと●個」……ちょっといいなと思っていた商品がタイムセールの対象となり、このような表示を目の当たりにすると、おそらく心はざわつき、購買意欲がかきたてられ、衝動買いをしてしまいがちです。しかし、お金を貯めるという観点では、「本日限り」「●時まで」といったタイムセールは要注意です。
ネット通販の場合は、実物が目の前にあるわけではなく、目にしているのはスマートフォンやパソコンの画面と、その中に表示されている「情報」です。「欲しい」というバイアスがかかっているので、ユーザーレビューなどの情報も、いつのまにか「いい情報」しか見ないようになっている可能性があります。そして、画面を凝視する「一人の世界」ですから「客観的な判断力」が鈍りがちです。
このネット通販のタイムセールも、よく観察していると、いつも同じような商品が対象となっていることが多いと思います。同じような商品で特に急ぐものでなければ、一度見送って、次のタイミングで購入しても良いのではないでしょうか。このように購入までの時間をあけることで、その商品が「本当に必要なものだったのか」の判断ができるようになります。
店舗での買い物にしてもネット通販での買い物にしても、メールやSNSなどのツールでどんな時間でもすぐに友人や知人とのコミュニケーションがとれる時代です。買い物の際にセールや割引といったオプションに惑わされて衝動買いをするのではなく、いったん友人や知人と情報交換し、冷静さを取り戻す時間を得て、不必要な買い物を減らしていくことが「お金を貯める」ことにつながります。
教えてくれたのは……
みはまライフプランニング ファイナンシャルプランナー、カウンセラー。会社員・公務員・派遣社員・パート・アルバイト、会社員の配偶者様、育児介護休職者、退職者の皆様とそのご家族等へのキャリアプラン (生活) とライフプラン (家計) の相談と講義、執筆を行っています。女性のキャリアと家族や恋愛等コミュニケーションに関する相談、FP等資格取得支援にも力を入れています。
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