経済産業省は3日、「2015年版通商白書」を閣議に報告した。それによると、海外展開する日本企業は他国企業と比べて"稼ぐ力"が弱いと指摘し、世界市場で日本の強みを発揮するためには「グローバル経営力の強化が不可欠」だと主張している。

日本の「輸出する力」「呼び込む力」「外で稼ぐ力」に変化

白書は、今後の国際的な事業環境に影響を与える可能性がある中長期的な課題を踏まえた上で、日本の対外収支や海外事業活動をもとに「輸出する力」、人や企業を「呼び込む力」、「外で稼ぐ力」について分析。併せて、国内外一体となった経済政策展開の在り方を提示した。

2014年の対外収支の動向を見ると、経常収支は過去最少の黒字となった一方、貿易収支は過去最大の赤字を記録。サービス収支は、海外企業からのロイヤリティを含む知的財産等使用料の収支が過去最大の黒字となったほか、旅行収支が過去最少の赤字となり、赤字額は過去3番目の小ささとなった。また、第一次所得収支は直接投資収益が黒字額を更新したことから、過去最大の黒字を記録した。

白書は、このような経常収支構造の変化は、日本の「輸出する力」「呼び込む力」「外で稼ぐ力」の実態の変化を示唆している可能性があると分析している。

貿易収支、経常収支の概観(出典:経済産業省)

企業の呼び込みはイノベーションや英語に課題

「輸出する力」については、日本は世界の需要を取り込んでいる品目もある一方、他国に比べ、伸びる可能性がある需要の獲得割合が小さいことが判明。また、「高付加価値化と数量増加を同時に進められていない」と指摘している。

「呼び込む力」を見ると、観光客については、2014年の訪日外国人数、訪日外国人の消費金額がともに過去最高を記録。他方、企業の呼び込みについては、人材や技術の集積など個別の強みが評価されているのに対し、イノベーションや英語でのビジネスコミュニケーションなどには課題があると分析している。

低収益部門の割合が高い日系の多角化企業

「外で稼ぐ力」では、日米欧とアジアのグローバル企業について、2006年~2013年度の成長性・収益性を比較。その結果、日系企業は売上高成長率、営業利益成長率、売上高営業利益率のいずれも他国より低いことが判明。また、日系企業のうち多角化を行っている企業は、総じて成長性、収益性が低く、さらに低収益部門の割合が他国より高いことがわかった。

グローバル企業の稼ぎ方国際比較 図1 本分析対象企業の成長性・収益性(2006-2013年度)(出典:経済産業省)

白書は、日本企業は多角化によるメリットを十分得られておらず、逆にリソースが分散し、高成長へと転換するための投資が困難になっている可能性があると指摘。世界市場で競争していくためには、事業分野の見直し、および高収益につなげる経営力を迅速に発揮していく必要があると主張している。