読者の方々も聞き飽きている頃だろうが、2015年7月29日のWindows 10アップグレードリリースまで残すところ約1カ月。2015年当初から「可能であれば毎月プレビュー版を更新する」と公言したようにMicrosoftは、6月29日(現地時間)にWindows 10 Insider Preview ビルド10158をリリースした。アップグレードタイミングなどを鑑みると、これが(リリース前)最後のプレビュー版となるだろう。
遂に搭載したMicrosoft Edge
Windows 10アップグレードリリース直前と相まって、さまざまな噂が世間をにぎわしている。筆者が耳にした中では、Microsoftが7月12日から5日間、フロリダ州オーランドで開催するWorldwide Partner Conference 2015の前後に、Windows 10がRTM(製造工程版)に達し、OEMパートナーへの影響が始まる可能性が高いという。
真偽のほどは不明だが、Windows Updateで提供するアップグレードプログラムのテスト期間なども考慮しなければならないため、7月29日から逆算すると7月第4週の初め(21日)には、Windows 10 RTMに達していなければならない。となれば、ビルド10158以降はバグフィックス以外のコーディング作業は存在せず、Windows 10開発陣は一区切りできるだけの完成度を目指す必要がある。
今回リリースしたビルド10158の進捗状況を元に、その完成度や前ビルドからの変更点を確認しよう。
最初に目に付くのはタスクバーに並ぶMicrosoft Edgeのアイコンである。これはビルド10147(未公開)から、Internet Explorer 11の代わりにMicrosoft Edgeが標準Webブラウザーとなったためだ。ただし、ベータ版だったProject Spartanに置き換わる存在ではなく、内部的には異なるアプリケーションとして管理しているため、お気に入りやCOOKIEなどは引き継がれない。
OSG(Operating Systems Group)FundamentalsチームのエンジニアリングジェネラルマネージャーGabriel Aul氏は「アップグレード前にバックアップしてほしい」と本ビルドのリリースを発表した公式ブログで説明している。具体的には「%LOCALAPPDATA%\Packages\Microsoft.Windows.Spartan_cw5n1h2txyewy\AC\Spartan\User\Default\Favorites」フォルダーの内容を「%USERPROFILE%\Favorites」フォルダーにコピーし、Microsoft Edgeでインポート操作を実行すればよい。
Microsoft Edgeを起動し、<…>ボタン→<別のブラウザーからお気に入りをインポートする>をクリック |
<Internet Explorer>が選択されていることを確認し、<インポート>ボタンをクリックする |
Aul氏によるMicrosoft Edgeの変更点を確認すると、新たに<ホーム>ボタンが復活している。これは多くのフィードバックを受けて対応した改善の1つだ。また、前述したように、お気に入りやブックマークをインポートする機能を追加している。本ビルドのMicrosoft EdgeはInternet Explorerしかサポートしていないが、Mozilla FirefoxやGoogle Chromeへの対応は今後の課題となるのだろう。
設定項目を眺めると「プログラムから開く」に<スタートページ>が加わっている。こちらは単にトップページを開くだけの設定だ。なお、新規タブではトップサイトやおすすめのコンテンツを表示する機能を備えて、Microsoft Edgeにも引き継がれているものの、"おすすめのコンテンツ"が表示されない。「新しいタブを開いた時に表示するページ」の既定値が「トップサイト」だったことが影響しているのか分からないが、不可解に動作する部分が残っているようだ。
詳細設定の「プライバシーとサービス」では、<パスワードを保存する>を新たに加えている。フォーム入力の記録はProject Spartanにも用意していたが、これでWebサイトのパスワード入力に煩わされることは減りそうだ。さらに<保存されたパスワードを管理する>からは、各Webサイトで記録したパスワードを管理できる。現時点では編集機能は備えず、<×>ボタンでエントリーを削除するだけだった。
<パスワードを保存する>のスイッチをオンにすることで、Webサイトのパスワード保存が可能になる |
<保存されたパスワードを管理する>をクリックすると現れるパスワードリスト。現時点での可能なアクションは削除のみ |
この他にMicrosoft Edgeを最小化した状態での音楽再生機能や、タブをドラッグすることで別ウィンドウを開く機能、ダークテーマを用意している。
安定に向けてさらに進んだビルド10158
まずはMicrosoft Edgeの新機能をご覧頂いたが、以前のビルドで悩まされていたExplorer.exeのハングアップ問題をようやく解決した。極めて当たり前なのだが、再サインインするたびに警告音とダイアログに悩まされなくなったのは、大きな開放感につながる。
ビルド10158はタブレットモードのアニメーション効果やスタートメニューの動作など、UX(ユーザーエクスペリエンス)的な改善が加わり、デスクトップモードとタブレットモードの切り替えも以前のように描画が遅延するような場面はない。また、タスクバー上のボタンにもいくつかの改良が加わった。
エクスプローラーによるファイルコピー時は進捗状況を示すアニメーションが、下から上方向に垂直に増える効果から、Windows 8.xと同じ効果に戻っている。そしてアプリケーションからの通知が発生した場合はオレンジ色で点滅する仕組みが加わった。
ユニバーサルWindowsアプリ「フォト」もストア経由で最新版に更新している。バージョンを確認すると15.618.18170.0だったが、相変わらずアルバム機能が正しく動作しない点は変わらない。こちらはピクチャフォルダーに格納した画像ファイルから類似するものを、ひとまとめにする機能と思われる。Aul氏は受け取ったフィードバックのトップは"アニメーションGIFのサポート"だったため、同バージョンから表示可能にした。また、同じくフィードバックを受けて<プログラムから開く>を追加している。
我々日本人には現時点で関係ないが、Cortanaの改善やOffice 365の統合が本ビルドから加わっている。詳細はこちらの公式ブログが詳しく、Office 365のスケジュール管理機能とCortanaのリマインダー機能が連動するといった連係が行われるようだ。
そのCortanaだが、Windows 8.xの「Windowsの機能」に相当する「オプション機能の管理」を眺めていると、「日本語の音声合成」「日本語の音声認識」といったコンポーネントがインストール済みであることが確認できる。もっとも、音声認識エンジンを選択する「時刻と言語\音声認識」のドロップダウンリストはグレーアウトしているため、Cortanaを使用できないことに変わりはないが、準備は着々と進んでいるのだろうと思いたい。
ちなみに本ビルドから「Insider Hub」はプリインストールされなくなった。Windows 10 Insider Previewに関する最新ニュースやミッションの最新情報もチェックしたい方は、「オプション機能の管理」からインストール可能だ。
断言するのは難しいがビルド10151は我々に提供される最後のビルドとなる。Aul氏によれば、6月30日(日本は7月1日)にWindows 10 SDKプレビュー版のリリースを予定していることを踏まえると、いよいよ完成に向けたラストスパートに入るのだろう。Windows 10へアップグレードする方や、Windows 10 Insider Previewで評価しつつ、Windows 7などにとどまる方も、本ビルドは高速リングを選んで可能な限りインストールすべきだ。
阿久津良和(Cactus)
■前回の記事はこちら ・短期集中連載「Windows 10」テクニカルプレビューを試す(第26回) - これは6月版? 前ビルドから9日で登場したビルド10130 http://news.mynavi.jp/articles/2015/06/01/windows10/ ■バックナンバー 一覧へのリンク http://news.mynavi.jp/tag/0021413/ |
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