年々アレルギーの患者さんは増えているといわれます。中でも食物アレルギーは、もはや子どもやある特定の体質の人だけに現れる疾患ではありません。症状がわかりづらいタイプのものもあり、毎日その食べ物を口にしていながら気づかないという場合も。不調の原因を見落とさないためにも、食物アレルギーの調べ方と治療法を知っておきましょう。
食物アレルギーには「即時型」と「遅延型」がある
一般的に食物アレルギーと認識されているのは、「即時型食物アレルギー」のこと。子どもの頃に発症しやすいタイプで、蕁麻疹(じんましん)などの体の異常が食事直後に出ます。
一方、大人になってから多く見られるタイプを「遅延型食物アレルギー」といい、時間をかけて症状が出るのが特徴です。しかも、頭痛や肌荒れ、便秘、精神的なイライラなど慢性的な症状となって現れるので、食物アレルギーが原因とは思わないことも。そのため、不調を感じている人はもちろん、健康な人でもアレルギー検査を受けることは大切なのです。
アレルギー検査の種類
アレルギーの採血検査には主に2種類あります。まず、即時型食物アレルギーの原因となる「IgE抗体」を測るためには、一度に33項目を調べられる「MAST33」というセット検査が行われます。検査では、消費者庁が指定する表示義務品目(卵・乳・小麦・えび・かに・そば・落花生の7品目)などの食品のほか、ダニやハウスダスト、カビ、ネコやイヌ、ラテックス(ゴム)などについても調べることができます。こちらは保険治療となり、費用は約5,000~6,000円。1週間程度で結果が出ます。
2つ目は、遅延型食物アレルギーの原因となる「IgG」や「IgA」という抗体を調べる検査です。食品のみが対象となり、肉類、卵、乳製品、ナッツ、穀物、野菜、スパイス、砂糖類など96品目の食物アレルギーについて検査することが可能。こちらは保険適用ではないので、自由診療のクリニックで約3~5万円で受けることができます。検査結果は約3週間かかります。
1つの検査だけでは見逃すことも
ただ、どちらの採血検査も100%の検査ではありません。特に即時型検査で検出するIgE抗体は血中濃度が低く、濃度が半分になるまでの期間(半減期)も早いので、検出が難しいといわれています。すなわち、数値が低いのに症状が出ていることもあれば、数値が高くても症状が出ていないことだってあり得ます。
また、即時型検査で異常がなくても何らかの症状が起きている場合は、遅延型食物検査を受けることをお勧めします。即時型検査では数値が低く、問題がないように見えても、遅延型検査を受けると高い数値になっていることがあるからです。つまり、即時型検査だけでは食物アレルギーの存在を見逃すことがあるということを覚えておきましょう。
治療の原則は「食物除去」
食物アレルギーの治療では、原因食物を食べないこと(食物除去)が原則。隠れたアレルゲン(アレルギーの原因物質)を見逃さないため、逆に不要な除去をしないためにも、アレルゲンを正確に見つける検査は必要なのです。
除去する際は、医師の指導のもと、足りない栄養素の補給をしっかりと行いましょう。例えば乳製品のアレルギーがあった場合、不足すると予想される栄養素はカルシウム。カルシウム源として、アレルギーのない小魚や油揚げなどの大豆製品、小松菜などを組み合わせて摂(と)ることが大切です。
また、腸内環境を整えることもポイントに。腸の中に住む善玉菌は免疫の働きを助け、体のバランスを保つ重要な役目を担っており、その腸内環境のバランスがアレルギーと密接に関係することもわかってきています。食物アレルギーの対策として、便秘をしないように食物繊維を摂ったり、発酵食品や乳酸菌のサプリメントを毎日摂取したりすることもお勧めです。
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著者プロフィール: 関由佳(せき・ゆか)
内科医、misoドクター、Foodoctor、Medical Chef
専門は内科、予防医学。研修医の頃に野菜ソムリエの資格を所得。同時期にアメリカのシアーズ博士のもとでZONEダイエットを学び、日本人に合わせた食事バランスガイドを作成。ダイエット外来や糖尿病治療にもそのメソッドを応用し独自の栄養指導を確立した後、レシピ本『ゆるゆる糖質オフダイエット』を出版。現在は薬ではなく食べもので予防するFoodoctorとして個人に合わせたオーダーメイドの栄養療法を行う傍ら、misoドクターとして味噌ファスティングの指導行うなど幅広く活動中。また2011年よりHappyAgingLabo会 を主宰し毎月さまざまなテーマでセミナー&料理教室を開催し、ブログ・Dr.Yukaのゆるゆるバランスダイエットでも情報を発信する。