頭痛が続く、肌荒れが治らない、なぜかイライラする……など原因不明の心身の不調を感じたことはありませんか? もしかすると、その原因は食物アレルギーかもしれません。食物アレルギーは子どもの頃に発症すると思いがちですが、大人になってから、ずっと好んで食べてきたものがアレルギー物質だったと判明する人も。今回は、大人に多く見られる「遅延型食物アレルギー」について解説します。
アレルギーが起こる決め手は「腸」だった!?
皮膚や粘膜にはたくさんの免疫細胞がガードマンのように配置されています。免疫細胞は常に自分の身体の中をパトロールして、体内に入ってきたものをこのまま入れてよいものか敵として排除すべきかの判断をしています。そして全免疫細胞の約60%が配置されているといわれるのが「腸」。腸は身体の中にありますが、実は外の世界と接する機会が多い臓器の一つなのです。その免疫細胞が暴れだすと、全身のアレルギー反応に影響を与え、アトピー性皮膚炎や喘息(ぜんそく)、花粉症などさまざまなアレルギー疾患の引き金になってしまいます。
子どもの食物アレルギーの原因は?
子どもの食物アレルギーには「IgE」という抗体が関わっています。IgE抗体は分子量が大きなタンパク質に対して作られるのが特徴です。IgE抗体は食べてからすぐに作られ、喉のはれ(時には呼吸困難)、じんましん、膨満感、腹痛、胃痛、喘息、突発性の下痢など激しい症状を引き起こします。
また、乳幼児期は消化酵素が未発達なためにタンパク質が十分に消化しきれず、大きいまま吸収されてしまい食物アレルギーが発症しやすくなります。そのため、成長して消化酵素がきちんと作られるようになると改善するケースも少なくありません。
大人になってからも発症する「遅延型食物アレルギー」
一方、大人になってから発症する食物アレルギーの多くは「IgG」という抗体が関わっていることがわかってきました。IgG抗体によるアレルギーは、食べてすぐ体に異常が出るのではなく、症状が遅く現れることから「遅延型食物アレルギー」といわれます。
IgG抗体は食事の約6~24時間後に作られ、時間をかけて全身に炎症が広がっていくので、自覚しにくい傾向があります。気づかずにその食べ物を食べ続けると、慢性的な炎症からさまざまな症状に進行することに。症状は、全身疲労、頭痛、肌荒れ、便秘などの体の不調から、注意力散漫といったメンタル面まで多岐にわたります。
同じものを頻繁に食べていませんか?
一般に、同じものを頻繁に食べることでIgG抗体は作られるとされています。つまり、普段から好んで食べているものや、健康や美容のために毎日摂取しているものが原因で不調が起きている可能性も。一方で、IgG抗体は6カ月で作り直されるのも特徴です。原因となる食べ物の摂取を一定期間やめることで症状が改善すれば、再び摂取できるようになることもあります。
気になる症状がある場合は、まずはクリニックなどで遅延型食物アレルギーの検査を受けることをお勧めします。検査が陽性だった場合も、カウンセリングや食事指導、腸の調整指導といった適切な治療が受けられるので、不調改善の糸口になるはずです。
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著者プロフィール: 関由佳(せき・ゆか)
内科医、misoドクター、Foodoctor、Medical Chef
専門は内科、予防医学。研修医の頃に野菜ソムリエの資格を所得。同時期にアメリカのシアーズ博士のもとでZONEダイエットを学び、日本人に合わせた食事バランスガイドを作成。ダイエット外来や糖尿病治療にもそのメソッドを応用し独自の栄養指導を確立した後、レシピ本『ゆるゆる糖質オフダイエット』を出版。現在は薬ではなく食べもので予防するFoodoctorとして個人に合わせたオーダーメイドの栄養療法を行う傍ら、misoドクターとして味噌ファスティングの指導行うなど幅広く活動中。また2011年よりHappyAgingLabo会 を主宰し毎月さまざまなテーマでセミナー&料理教室を開催し、ブログ・Dr.Yukaのゆるゆるバランスダイエットでも情報を発信する。