猫はおしっこの病気になりやすいことは飼い主さんにも広く認知されてきていますが、微妙な言葉の表現に混乱があるようです。細かな違いですが、病気を正しく認識するために、混乱しやすい泌尿器の用語について解説します。
尿路結石、尿道結石、尿管結石の違い
これは解剖の図をみて頂ければ一目瞭然です。尿管は腎臓から膀胱をつなぐ管で、尿道とは膀胱から外にでるまでの管です。そして尿路というのは腎臓から外にでるまで全てを示します。そのため結石が腎臓にあっても膀胱にあっても尿路結石と呼びます。
尿道は1本しかないので、結石が詰まった場合はすぐに尿毒症の症状が現れますが、尿管は左右2本あるので片方が詰まっても症状が出ないことがあります。人間の尿管結石は3大激痛の1つと言われるほどですが、猫の場合は必ずしも痛みを伴うとは限らない(または痛みがあっても隠す)ためレントゲンで偶然発見されることもあります。
結石と結晶の違い
結晶ができているのと、結石ができているのは大きな違いです。結晶は顕微鏡でしか見えず(尿がキラキラ光ることはある)、結晶が凝集して目に見える結石になります。レントゲンやエコー検査で発見された場合は結石、尿検査で発見された場合は結晶のことが殆どです。
基本的には結石の方が強い症状が出やすいですが、結晶があるだけでも膀胱炎の症状が出る猫もいますし、結石があっても全く無症状の猫もいます。結石が見られた場合は詰まると危険なので結石を溶かす治療を行います。
猫で頻繁にみられるストルバイトとリン酸アンモニウムマグネシウムは同じものです。ストルバイトは地質学者の名前からとったようです。病気の用語は些細な違いですが、病気の症状や治療法が変わってきますので正確に覚えておくと、病気への理解が深まりますね。
■著者プロフィール
山本宗伸
獣医師。Syu Syu CAT Clinicで副院長を務め、現在マンハッタン猫専門病院で研修中。2016年春、猫の病院 Tokyo Cat Specialistsを開院予定。猫に関する謎を掘り下げるブログnekopediaも時々更新。