WWDC15で発表されたMac向けの新OS「OS X El Capitan」。El Capitanは前バージョンOS X Yosemiteの名前となったヨセミテ国立公園の中にある名所で、高さ1000mにもなる花崗岩の一枚岩の事だ。
ネコ科時代のOS Xでも、LeopardからSnow Leopardへとバージョンアップしたことがあり、このときも成熟が中心だった。今回、同じヨセミテ国立公園内での命名が続いたことから、デザインも含めた大幅な変更が行われたOS X Yosemiteをもとに、より洗練を深めたバージョンであることがうかがえる。
実際、基調講演のプレゼンテーションの中でも、OS X El Capitanの機能向上について説明するスライドには、「体験」と「高速化」の2点にフォーカスされており、非常にシンプルだった。
最も大きなメリット、パフォーマンスの向上
筆者もコンピュータが高速化していく歴史の中でユーザーとして利用してきた。OSの刷新は、PCの買い換えのタイミングでもあった。機能が向上し、よりマシンパワーが必要になることが多かったからだ。
しかし昨今のAppleは、こうした常識に逆行するように、OSをバージョンアップすると動作が軽くなることがあるのだ。今回のOS X El Capitanも、アプリの起動や動作が、実感が湧くほどに速くなるとみられている。
具体的には、Yosemiteと比較して、El Capitanではアプリの起動速度が1.4倍、アプリ切り替えが2倍、メールを起動して1通目を開くまでの速度も2倍、プレビューでPDFを開くまでの速度も2倍と、普段よく使うアプリの動作が非常に高速化されている。
こうした高速化は、最新のマシンではより早くなる事は間違いないが、筆者のように4年前のMacBook Proを気に入って使い続けているユーザーにとっては、無料でOSをアップグレードするだけで、マシンが速くなることが体験できるのではないだろうか。
また、超薄型・最軽量モデルとして2015年4月に発売されたCore M搭載のMacBookも、より選びやすくなるのではないだろうか。2011年モデルのMacBook Airと同等とも言われている処理性能でも十分に長く利用できるようになるはずだ。
画面管理による快適性の向上
OS Xにはこれまで、Mission Controlと呼ばれる、開いているアプリやデスクトップを一覧できる機能が用意されていた。またアプリの全画面表示にも対応しており、ディスプレイがあまり大きくないノートブック型での効率的な作業にも適していた。
特に、大型化される傾向にあるマルチタッチに対応したトラックパッドを備えるノート型のモデルでは、4本指で上にスワイプするだけでMission Controlを呼び出し、また同じ4本指の左右のスワイプで、開いているデスクトップや全画面アプリを切り替えることが可能となる。一度覚えると非常に快適で、複数の画面を利用する作業を効率的にこなすことができるようになるはずだ。
OS X El Capitanはこの機能を一歩深め、2つのアプリを1つの画面に配置する「画面分割」の機能が備わった。
全てのアプリウインドウを一覧できるMission Controlの画面から、新しいデスクトップを作ったり、全画面アプリを組み合わせて画面分割の作業スペースを作ることができる。ちなみに、これはWindowsの世界では、Windows 7から搭載されている機能でもある。
筆者はこの原稿も、OS X Yosemite上で、「iA Writer Pro」というテキストエディタを全画面表示にして原稿を書いている。昨今のMacは横長ディスプレイを搭載しているため、全画面表示にして適度な文書の幅に整えると、左右に大きなスペースが空いてしまうことになる。
例えば「Evernote」に下調べしてあったノートをウインドウとして開いておき、iA Writer Proの全画面表示右側にそのノートを配置すると、資料やメモを見ながら原稿を書き進めることができるようになる。 あるいはWebブラウザとTwitterアプリを1つの画面にまとめて情報収集と情報発信を行うウインドウを用意しても便利そうだ。
OS X El Capitanの画面分割は、画面を隅々まで使いながら複数アプリを同時に開く利便性も取ることができるようになりだろう。 次回のレポートでも、引き続き、El Capitanについて、論考していく。
松村太郎(まつむらたろう)
ジャーナリスト・著者。米国カリフォルニア州バークレー在住。インターネット、雑誌等でモバイルを中心に、テクノロジーとワーク・ライフスタイルの関係性を執筆している。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、ビジネス・ブレークスルー大学講師、コードアカデミー高等学校スーパーバイザー・副校長。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura