日本国内での使用人口が4,000万人とも5,000万人以上とも言われているSNS。これを効率的に活用できれば、企業やその製品の知名度を格段に上げることも夢ではない。
とはいえ、自社でSNS広報を始めるとしたら一体、何から始めたらいいのか? もし、自分が担当を任されたら、どうやって運営したら良いのか? と疑問や戸惑いは尽きないだろう。
こうした声に応えるべくおじゃましたのは、SNS公式アカウントが人気を集めるタニタだ。ヘルシーメニューを提供する社員食堂やそのレシピで一躍有名になった健康総合企業である同社は、企業アカウントも「フォロー必須」「おもしろ過ぎww」「おしゃれ」と大評判なのだ。実際、体重やカロリーに興味がない、あるいは体組成計が何なのか知らなくても、SNSを通じてタニタに親しみを持った人は多い。
ということで、Twitter、Facebook、Instagram等で企業アカウントを運営するタニタに、SNS広報のイロハを教わってきた。代表してお話を聞かせてくださったのは、Instagramアカウント「tanita_jp」の担当者だ。
まずは、見てもらうこと
――SNS広報で意識していることを教えてください
「1人1人に訴えていけるSNSの特徴を生かして、多くの方の目に触れ『タニタ』という名前を覚えていただきたいと考えています」
――目に触れるためにはどのような努力を?
「例えばTwitterの場合、常にタイムラインに乗るように心掛けています。おもしろいかどうかも重要ですが、見た方の記憶に残れるかどうかが勝負。そのため、こまめな投稿は欠かせません。とにかく記憶に残すこと。意識されるところから道は開けます」
――何度も見るうち、親しみがわく気持ちに訴えるんですね!
「最初は『あ、タニタ、また出てるなー』くらいから始まってくれればいいんです。うっすら名前が記憶に残り、だんだん『気になるなぁ』と意識していただければ『やった! 』という感じですね。出社や退社の時間帯はSNSをする方が多くなりますので、その辺を狙ったりもしていますよ」
Twitterでの広報はタイムラインを意識
――テキスト主体、画像メインとSNSにも個性がありますが
「現在、TwitterやFacebook、Instagram、ニコニコ動画にアカウントを持っていますが、それぞれのSNSで見てくれる方が異なります。当然のように、内容やノリを変えることが必要になってきます」
――具体的にどのような違いを意識していますか?
「Twitterはテキストをタイムラインで見せて行きます。流れていく感じですから、特にライブ感を大切にして、健康計測機器メーカーの固いイメージとのギャップを狙いつつ、常にタイムラインに乗るようにしています」
他社広報とからんだり、ゲームの話をしたりとずいぶん自由な印象があるタニタのTwitterだが、「広報」という軸はブレていない。イエローの自社製品の画像と共に「これを見た人は黄色の画像を貼れ 」とリツイートを誘ったり、「おはようございます!カロリズムお忘れなく(=゚ω゚)ノ」とさりげなく商品名を出したりと、遊び心を盛り込みつつ根気よく「タニタ」の名前を露出し続けている。
Facebookは「シェア」を念頭に置く
――Facebookはどのような点を意識していますか?
「Facebookは、実名で『いいね』しやすいよう社員や社内の紹介が主体。シェアを念頭において話題を探すのがなかなか大変なんです」
Twitterに比べてぐっと落ちついたイメージのFacebook。セミナーのお知らせや商品の紹介など、好き嫌いが分かれない話題がクセのないコメントで紹介されている。いつ、誰が見ても受け入れられる雰囲気を保つのは、かなりのテクニックが必要かも。セール情報やクーポンが織り交ぜられているからお得感もあり、主婦やファミリー層にもさくっと読み続けてもらえそうだ。
Instagramは「インパクトのある画像」が重要
――ご自身が担当されるInstagramは?
「画像が主なので、一目でインパクトを与える絵を探さなければいけません。計測機器や料理ばかりでは飽きられますので、どう楽しく見ていただくかを探っているところです」
Instagramは1枚の画像で、いかに目を奪うかが勝負。若い女性の利用率が高いだけに、カラフルさやかわいらしさで目を引いている。イベントやランチなどスタンダードな内容も多いが、北欧系の家具の中に置かれた体組成計や歩数計を抱えるバービーなど、スタイリッシュな演出につい見入ってしまう。
――担当者はひとつのSNSに1人ずつですか?
「はい。数人で投稿するとキャラがブレますから。例えば弊社のTwitterには9万人以上のフォロワーがいますが、担当者が変わったら、皆さんすぐにわかるかと(笑)。ただ、複数のスタッフがチェックするようにしています。これでミスが減りますし、ネタに詰まるのも防げるんです」
SNSから生まれた商品も
――名前を覚えてもらう以外の効果は?
「最近ではTwitterのやり取りから、アニメ『TIGER&BUNNY』とコラボの体組成計が生まれました。声優さんの声で、計測値や評価を読み上げてくれるプレミアム仕様なんです。新商品に対する反響もリアルに聞けるのもSNSならではですね!」
――最後に、SNS広報を始める方へのアドバイスを
「まめに投稿すること、継続していくことが大切かと思います。それから、1人の担当者の個性を生かした広報をする場合でも、決して1人で抱え込まないこと。SNS広報は試行錯誤して、反応を見ながら育てて行くものです。まわりの意見を受け入れ、万一ミスをしてしまった時は素直に訂正できる自分でいることが必要だと思います」
――ありがとうございました
個人色が強いイメージのタニタのSNS。遊び心が満載ように見えるけれど、独特のノリが生まれたのも常に周囲にアンテナをはり、反応を素直に受け入れる姿勢があったからなのだろう。