東京都・首都高速道路の上に庭園がある、ということをご存じの方はいるだろうか。その庭園の名は「目黒天空庭園」(東京都目黒区)。文字通り、空中に浮かんでいるかのような眺望を味わえる美麗な庭園だ。
しかもその周辺にはおしゃれなこだわりベーカリーやコーヒーショップがひしめいており、購入したパンとコーヒーを持ち込むことで、庭園は文字通りの"天国"と化す。そんな休日の過ごし方を紹介したい。
高速道路の上に季節の花が咲き誇る
「目黒天空庭園」は、東急田園都市線「池尻大橋」駅からほど近い。駅東口を出て国道246号線沿いを渋谷方面に5分も歩けば到着だ。庭園に続く歩道橋を上ってアプローチに入れば、すでにそこは楽園の入り口。空中を巡る首都高速道路の直下をくぐり抜けるように道を行くと、「目黒天空庭園」にたどり着く。
庭園には太陽の光がさんさんと降り注ぎ、自動車の排ガスも届かない高さなので、その空気も高原のような爽やかさ。緑のアーチをくぐり、緑の屋根の下の木のベンチに座れば、まるで英国貴族の庭園で優雅な散歩を楽しんでいるような気分になる。
「目黒天空庭園」は、幅の広い道がゆるやかならせんを描いて上っていく構造になっており、進むほど刻々と変化していく外の景色を眺めるのも楽しい。その独特の形には理由がある。この庭園は、首都高速道路「大橋ジャンクション」の屋上に造成されているのだ。「大橋ジャンクション」にはループ状の構造になっている部分があり、主に庭園を構成しているのもそのループ部の屋上となる。しかし、庭園の静けさとそこに流れる穏やかな時間は、高速道路の真上とはとても思えないほどだ。
筆者が訪れたのは6月の初めだったため、庭園にはアジサイが咲き誇っていた。この時植えられていたのは、梅雨の風物詩としてなじみ深い房状のアジサイではなく、「ガクアジサイ」や「ベニガク」といった盾状に花をつける種類のアジサイが中心。
庭園にはいくつもの休憩所があり、ベンチだけが置かれたシンプルなものから、日本庭園のような意匠が施された屋根付きのものまで雰囲気もさまざま。飲食物の持ち込みも可能なので、ここで一息つきながら軽食、という過ごし方も良いだろう。
池尻エリアでこだわりのパンとコーヒーを!
「目黒天空庭園」で至福のブレイクタイムを味わうにあたり、お供のパンやコーヒーを買うのにぜひおすすめしたい近隣の店がいくつかある。
まずは「ブーランジェリー ラ・テール」(世田谷区三宿)を紹介。庭園からおよそ徒歩15分の場所に位置するベーカリーだ。多少離れてはいるが、「三宿」~「大橋」停留所間でバスを利用すればおよそ7分で着く。
同店は24時間態勢でパンづくりを行っており、毎朝7時から焼きたてのパンが並ぶとあって地元の人々にも大好評。ちなみに筆者のおすすめは、ミルクをたっぷり使った自然な甘みが特徴の「ジャージー牛乳のパン(小)」(108円)と、白あんにフリーズドライのキイチゴが入った「木いちごの薄皮あんぱん」(162円)だ。
池尻大橋駅の近くにも、こだわりのベーカリーがある。駅東口から徒歩1分の「TOLO PAN TOKYO」(目黒区東山)は、なんといっても「カレーパン」(210円)が旨い。チーズ入りの生地は冷めてもパリッとした食感を保ちつつ、モチモチとしたボリューム感も魅力的だ。具材の牛肉にはマリネしたものを使用。ピリ辛のカレーソースの刺激も程よく、非常に満足感の高い一品となっている。
駅から徒歩5分以内のエリアには他にも、「Inspired by STARBUCKS 池尻2丁目店」(世田谷区池尻)や「私立珈琲小学校」(世田谷区池尻)など、こだわりのスペシャルティコーヒーを提供する店舗が並ぶ。国道246号線沿いには「TULLY'S COFFEE(タリーズ コーヒー) 池尻大橋店」(世田谷区池尻)や「EXCELSIOR CAFFE(エクセルシオール カフェ) 池尻大橋店」(目黒区大橋)などのコーヒーショップも。コンビニやハンバーガーショップもあるので、好みに合わせて利用しよう。
"楽園"で過ごす至福のひととき
庭園散策に一息ついてベンチに腰を下ろし、パンとコーヒーを並べればそこには至福の時間が流れる。「この時間が永遠に続いてほしい……ずっとこの場所でおいしそうなパンとコーヒーを眺めていたい……」なんて気持ちになるかもしれない。ちなみに、筆者はなった。
「木いちごの薄皮あんぱん」は、白あんの控えめな甘さの中に、ほのかにキイチゴの香りと酸味を感じる上品な味わい。「ジャージー牛乳のパン」で香ばしいパン生地の香りとほのかな甘みを楽しみ、スパイシーな「カレーパン」に舌鼓を打つ。コーヒーを飲んでふと眺めれば、緑の庭園の向こうに、東京のパノラマが青空の下広がっている……。
アミューズメントパークで思いっきり遊んだり、グルメな街で食べ歩きを楽しんだりするのも良いが、こんな風にゆっくりとした東京での休日の過ごし方も、選択肢に入れてみてはいかがだろう。
ちなみに、今回筆者は国道246号線沿いの歩道橋から進入したが、「目黒天空庭園」へは周辺の施設や道路などさまざまな場所からアクセスできる。近くに立ち寄った際には、ぜひこの"楽園"を体験していただきたい。
なお、同庭園に休園日はないが、荒天時など気象条件によって閉園する場合があるとのこと。開園時間は7時~21時となる。また、言うまでもないことだが、利用の際には「園内禁煙」「ゴミ放置禁止」などの利用ルールを厳守しよう。
※価格は全て税込。記事中の情報・価格は2015年6月取材時のもの