整体師のりょうです。肩こり解消のため、これまでに壁やタオルを使いながら肩甲骨の動きに注目したり、腕や首も肩こりと密接な関係があることを紹介したりしてきました。
これらのストレッチを実践することで、肩こりはさまざまなアプローチから解消できるとご理解いただければうれしいです。今回は肩関節のほぐし方と肩こりの関係について見ていきましょう。
肩こり解消には、筋肉より関節を意識する
肩がこると、どうしても肩の筋肉をほぐしたくなりますよね? その場合の「肩」って、どこを指していますか? おそらくほとんどの人が、肩たたきするときの肩をイメージされると思います。実際に触ると硬くなっているでしょうから、少しでもほぐしたい気持ちはよく分かります。しかし、その部分だけをどんなにほぐしても肩こりは解消されないのです。
肩こりがひどくなれば、肩に重りが乗ったような感じになったり、肩に鉄板が張りついたように感じたりする人も多いことでしょう。そのようなケースでは、肩関節が動きにくくなっているはずです。そこで、肩という筋肉ではなく、肩の関節を柔軟にして肩こりを改善していきましょう。
肩関節を意識しながら動かす
下の写真のように、右腕を枕にして横向きに寝転んでください。
そこから左手の甲を天井へ向けたまま、身体の前を通りながらゆっくりと頭の上まで移動し、また戻します。肩手だけ万歳して戻るイメージです。
一連の動作を終えると、最初と同じ姿勢になると思います。
次に左手を上に上げながら頭へ近づけていきましょう。この場合も左手の甲を上に向けたまま、真っすぐ手を伸ばしゆっくり動かしていきます。
これで、前方向と上方向に腕を動かしたことになります。肩こりがつらいときは、肩の筋肉のこわばりばかり気になってしまうものです。ただ、それでは根本的な解決に結びつきにくいです。
この運動をしてみると、実は肩というのは関節なんだということに気付かされるはずです。この動きを10回くらい繰り返してみましょう。
肩関節を大きく回してみましょう
では、次は回旋させてみましょう。回旋には前回しと後ろ回しがあります。ラジオ体操でもおなじみなのですぐ分かると思いますが、人によって回しやすい方向と回しにくい方向があります。回しにくい方向は注意しながら行ってください。
最初の位置は先ほどと同じです。ゆっくり身体の前を通って頭までもっていき、そこからゆっくり腕を後ろから回します。このときは「大きく腕を回す」ということを考えてほしいのですが、特に肩を大きく動かすように心掛けてください。
では次に反対回しもやってみましょう。今度は先に腕を後ろへ回して頭の上を通り、身体の前から最初に位置へ戻ります。
前回しと後ろ回しをそれぞれ10回ほどしてみましょう。写真だけ見ていると、「そんなことくらい簡単! 」と思われることでしょう。確かにやっていること自体はとても単純です。
もしかしたら、中には「こんなことくらい、立って両腕同時にやればいいじゃないか! 」と思う人もいるかもしれません。もしそう感じられたのであれば、ぜひお試しください。やってみると、なぜ私が今回のやり方を推奨しているのかすぐにお分かりいただけるはずです。今回の写真では左手を動かしていますので、終わりましたら右手も同様に動かしてくださいね。
関節の可動域を広げると健康になる
今回のストレッチで腕を回すことで、肩関節を動かしました。肩関節が柔軟に動くようになりますと、こわばっていた肩こりが解消されます。「肩こりは肩の筋肉をほぐせばいい」という固定概念を覆したことに気付かれることでしょう。
肩に限らず、関節はとにかく柔軟であることが健康の基本です。関節が動く角度や範囲を「可動域(かどういき)」という言葉で表しますが、関節の可動域は狭いより広い方が健康のためにはよいのです。
今回の肩関節をはじめ、股関節や膝関節、足関節(足首)は、整体師として私がいつも患者さんにその状態など問いかける部位です。関節を柔軟にして可動域を広げると、筋肉のこわばりも解消していきます。「肩こりくらい、放っておいても問題ない」と安易に考える人も少なくないかもしれません。ですが、慢性化すると重大疾病につながる恐れもありますから、早めに改善するようにしましょう。
著者プロフィール
鮎川 良
奈良県の学園前にて「RYO整体院」を営む整体師ランナー。整体師だからこそ分かる身体のメカニズムを基に、ストレッチの重要性を説き、クリニックも開催する。ストイックにタイムを追求するよりも、健康で楽しいマラソンライフを提案。筋肉痛になりにくい身体作りや疲労回復のケア方法、自身が提唱する疲れにくいランニングフォーム「エンジョイラン走法」で、フルマラソン走破を目指す人のサポートをしている。著書に『がんばらないで楽に長く走る』(学研パブリッシング)がある。また、累計268万アクセス超の人気ブログ「整体師に学ぶ~マラソンによる筋肉痛改善方法と、フル完走ノウハウ」も執筆している。