非日常の中で自分の時間をじっくり味わう。そんなひとり旅へのニーズは年々高まっているという。その旅をより充実したものにするために、ホテル・旅館選びは重要なポイントと言えるだろう。前回の東日本に位置するひとり旅にぴったりのホテル・旅館に続き、今度は西日本に位置するホテル・旅館に注目してみた。
歴史的建造物と日本庭園と"伊豆三古湯"
"伊豆三古湯"のひとつと称されている伊豆長岡に佇(たたず)む「三養荘」(静岡県伊豆の国市)は、昭和4年(1929)に建てられた旧三菱財閥の創始者・岩崎弥太郎氏の長男・久彌氏の別邸を本館にした和尽くしの旅館。日常の喧騒から離れた旅館には約3,000坪という広大な日本庭園が広がっており、四季の移ろいを感じさせる花や樹木のほか、中央に設けられた池が奏でる水の音にも心静まる。
温泉の泉質はアルカリ性単純泉。クセがなくやわらかな感触の湯は肌にしっとりとよくなじみ、美肌効果も期待できるという。男女共に大浴場と露天風呂を設けており、全面ガラスを施した大浴場の湯船には黒御影石を、露天風呂には自然石を使用。静寂な庭を眺めながら、ゆったりとしたひとときが楽しめそうだ。
ひとり利用は宿泊のみで1万8,414円から用意しているが、合わせて伊豆長岡の海・山の幸を用いた懐石料理も楽しむのもいいだろう(大人ひとり1泊朝食・夕食付き/2万8,614円~)。
送迎船の先に広がる京都の奥座敷
京都の奥座敷・嵐山にある「星のや京都」(京都府京都市)は、渡月橋のたもとにある上り桟橋より専用送迎船で送迎してくれるのがポイント。100年前に旅館となった歴史ある日本建築をリノベーションした旅館は、日本庭園のほか客室に京都伝統の「京唐紙」を用いるなど、随所に和の心をちりばめている。
宿泊者限定の京文化ツアーや、ホテル内では伝統芸道「聞香(もんこう)」や茶の湯体験などのアクティビティーも実施しているので、京都観光のひとつに組み込んでみるのもいいだろう(全て有料)。旬の素材をふんだんに使った会席料理を用意しているが、リーズナブルに楽しむなら「シングルユース優待」(大人ひとり1泊/3万6,000円~)がオススメ。客室にはダブルベッドやライティングデスク、窓辺のベンチソファが備えられており、嵐山の景観をひとり占めできる。
おばんざいとともに京都観光を満喫
京都駅内にウェルカムカウンターを設けている「グランドプリンスホテル京都」(京都府京都市)は、京都駅で荷物を預ければスタッフが客室まで荷物を届けてくれるので、京都駅からそのまま手ぶらで観光が楽しめる。
「京都観光一日乗車券付きプラン」(大人ひとり1泊朝食付き/1万3,554円~)はプラン名の通り、京都市バス全線・市営地下鉄全線・京都バス(一部路線を除く)で使える京都観光1日乗車券が付いてくるというもの。また、人気のおばんざいコーナーをはじめ、シェフが目の前で焼き上げるふわふわのオムレツなど、豊富な和洋のメニューをビュッフェスタイルで楽しめる朝食は、庭を眺めながらじっくり楽しみたい。
琵琶湖のそばで古に触れる
「グランドプリンスホテル京都」同様、京都駅内にウェルカムカウンターを設けている「大津プリンスホテル」(滋賀県大津市)は、客室から琵琶湖が眺められるほか、屋外には琵琶湖の形を模したスイミングプール(有料)も設置されている。
ホテルの周辺には、"三井の晩鐘"で知られる「園城寺(三井寺)」(ホテルから車で約15分)や、近江八景にもうたわれ夕照の美しさが絵になる「瀬田の唐橋」(ホテルから車で約15分)などがあるが、もっと気軽に観光を楽しむなら「瀬田川・琵琶湖リバークルーズ乗船券&石山寺拝観券付き」(大人ひとり1泊朝食付きが1万4,946円~)をチョイスしてみるのもいいだろう。外輪汽船「一番丸」にのんびり揺られる琵琶湖クルーズと、茶々(淀殿)や豊臣秀頼が愛したという花が咲き乱れる花の寺「石山寺」が同時に楽しめるプランとなっている。
出雲旅をもっとディープに味わう
星野リゾートの中でも、「界」は"和"をテーマにその土地ならではのおもてなしをコンセプトにしている。そのひとつで出雲国風土記にも記された「神の湯」玉造温泉に佇む「星野リゾート 界 出雲」(島根県松江市)は、全室露天風呂付きの純和風の宿となっている。古くから美肌の湯で知られている玉造温泉の大浴場には、出雲大社をかたどった湯口の内湯や野趣あふれる露天風呂が用意されている。
旅館から出雲大社までは車で60分という距離。八重垣神社や玉作湯神社などのパワースポットめぐりや松江の城下町散策を楽しんだ後は、夕暮れ時を狙って宍道湖(しんじこ)の絶景に出会ってみるといいだろう。「ひとり旅でできるだけお得に泊まりたい」というニーズに応え、平日に1日1組限定の「パワートラベル! 大人の自由な一人旅プラン」(大人ひとり1泊朝食・夕食付き/3万9,500円~)を用意している。
2つの世界遺産を同時に楽しむ
広島県に2つある世界遺産を同時に楽しむならば、「グランドプリンスホテル広島」(広島県広島市)を旅の拠点にするのもいいだろう。瀬戸内海に面したホテルの前には、世界遺産の厳島(いつくしま)神社がある宮島行きの高速船乗り場があり、広島のもうひとつの世界遺産・原爆ドームがある平和記念公園へもホテルから車で約15分という立地となっている。
中でも「厳島神社と広島温泉を満喫の旅」(大人ひとり1泊朝食付き/1万2,153円~)には宮島行きの高速船片道チケット交換券が付いており、宿泊者専用の展望露天風呂 広島温泉「瀬戸の湯」も満喫できる。朝食は和洋ビュッフェと和朝食のどちらかを選べ、朝食券は平和記念公園にある広島国際会議場内の「レストラン セレナード」でのランチに使うことも可能だ。
ジオパーク散策とともに"心身の美"を磨く
特に女性にオススメなのが、パワースポットとして人気の室戸岬にあるリゾートホテル「星野リゾート ウトコ オーベルジュ&スパ」(高知県室戸市)。世界ジオパークにも認定されている室戸ジオパークを散策するほか、ホテルの中でゆったりしながら"心身の美"を磨くこともできる。
全客室オーシャンビュー仕様で、ホテル内には太平洋を眺められる小さなライブラリーも設置。旅行雑誌や写真集などを取りそろえており、コーヒーやハーブティーが自由に楽しめるのもうれしい。また、海洋深層水100%の温水プールや、海の恵み成分をふんだんに取り入れたスパトリートメント(有料)も用意している。スタンダードルームは大人ひとり1泊朝食・夕食付きを3万8,000円から展開している。
圧倒的な非日常の中で南風を浴びる
石垣島から高速艇で10分程度のところにある竹富島は、昔ながらの集落が大切に守られた、沖縄の"原風景"を今に伝える圧倒的な非日常が楽しめるところ。そんな竹富島にある「星のや竹富島」(沖縄県八重山郡)もまた、竹富島内の集落と同じように石垣で囲まれた赤い瓦屋根の木造家屋となっている。
竹富島の伝統建築を踏襲した客室は1棟ずつ独立しており、海を渡ってやってきた南風を浴びていると、なんだか離島の住人になったような気分になってくる。24時間楽しめる温水プールでの星空浮遊浴のほか、星空撮影レクチャーや島の民具作り体験などのアクティビティー(有料)を活用して、ここでしか味わえないひとときをゆったり過ごしてみるのもいいだろう。「シングルユース優待」として、大人ひとり1泊4万3,200円から用意している。
※記事中の情報は2015年6月取材時のもの。価格は消費税・サービス料込み。プランや価格は期間限定やWEB限定のものもあるため、詳細は各ホームページを参照