台湾・台北で開催されたCOMPUTEX TAIPEI 2015が閉幕して約1週間が経過した。毎年、アジアにおけるPCシーンを再確認する場であるとともに、IntelやMicrosoftなどのPCシーンのスタープレイヤーと各OEMの間の温度差や距離感をつかめる重要な位置づけにあるイベントでもある。
今年のCOMPUTEXはNO NEWSであると言われていたし、実際にそれに近いものでもあった。
たとえばIntelが第6世代CoreプロセッサとしてコードネームSkylakeの出荷開始を発表したかというと、それはなかった。各社は早々に対応マザーボードなどを発表しているし、フタを開けばSkylakeといった機器もチラ見せされてはいたのだが、大本営からの正式なお披露目はなかった。
MicrosoftはMicrosoftで、あろうことかCOMPUTEXの開幕前日の6月1日にWindows 10の製品版配布開始となるGeneral Availability(GA)が7月29日となったことを発表した。この日に史上最大のアップグレード大作戦が敢行されるというわけだ。だが、その発表はCOMPUTEXとは無関係の公式ブログでのものだった。
Microsoftは6月3日にCOMPUTEXでの基調講演を予定していて、同社OEM担当執行役員のNick Parker氏が登壇、Windows 10に向けての施策等をアピールしたのだが、GAの日付はすでに2日前に発表されていただけに、盛り上がりに欠ける結果となってしまった。
もし、COMPUTEXの基調講演という場で、GAの日付が発表されていれば大きな盛り上がりを見せ、アジアで開催されているCOMPUTEX発のニュースとして世界中を駆け巡ったのにと思うとちょっと残念だ。関係者は誰もがそれを期待していたのではなかろうか。
もちろん、OEM各社にとってはWindows 10搭載PCの出荷の準備をいちはやく進めるためにも、GAの日付は早ければ早いほどいいし、その日付がより早く伝えられることを希望していただろう。だが、COMPUTEXという場を少しでもエキサイティングなものにするための配慮はあってもよかったのではないだろうか。その後ろ側で、有力OEMに対してGA相当のバイナリが渡されるのだとしても、マーケティング的にはもう少し派手な演出があってもよかった。
一方、Intelは、例年9月に開催されている開発者向けの会議Intel Developer Forum(IDF)を、一カ月前倒して8月中旬にサンフランシスコで開催する。おそらくここがSkylakeデビューの場となるのだろう。
さらに、ヨーロッパにおける見本市IFAでOEM各社の搭載製品が披露される。このシナリオでは、アジアにおけるCOMPUTEXの存在感が実に希薄なものになっているわけだ。昨年のCOMPUTEXにおけるIntelは社長のRenee James氏が基調講演に登壇、台湾ベンダーへの長年の協力に対して謝意を表明し、そして、Core Mプロセッサを大々的に発表していたことを考えると、今年の活動は、このイベントへの取り組みに多少の積極性後退を感じざるをえない。
もちろん、ASUSやAcerなどの台湾ベンダーは数々の新製品を発表していたし、南港展示会場のホールは昨年同様の盛り上がりを見せていた。来場者数や出展者数も、それほど落ち込んではいなかったようだ。そこを見る限りは、PCシーン未だ衰えずを実感することができたかもしれないのだが、その舞台裏状況を憶測すると、もはやPCシーンの中心は、台湾という地域からだんだんと遠ざかっているようにも感じる。
北米は年初のCES、アジアは6月のCOMPUTEX、EU圏は9月のIFAと、3つの地域で行われる3つのイベントを順に見ていけば、次の半年に起こるトピックスはほぼ網羅でき、世界全体の地域ごとの温度差も把握できる。そう思ってはいたが、少しずつ、シーンを活性化するネジと歯車はギクシャクしたものになってきているようだ。