取材で台湾に来ています。実は、台湾で「Zenfone 2」を買ってしまいました。みんな持ってて良さそうという子供のような理由ですが、日本と台湾では販売されているモデルが違い、価格も違うのです。具体的には、日本国内でも販売されている最上位機種(ZE551。4ギガメモリ、64ギガストレージ)で9,990台湾ドル(4円換算で3万9,960円)です。
この前、3GのデュアルSIMマシンを買ったのですが、海外ではLTEも普及しつつあり、海外利用を考えてLTEのデュアルSIMモデルもいいかなと思ったのも理由です。
ただし、Zenfone 2には複数のモデル、構成があり、さらに仕向地により対応周波数も違います。なので、必ずしも台湾で買うのがベストとはいいきれないのですが、日本で使わないなら、日本で買うよりも安いというのは事実です。
まず、いわゆるZenfone 2には、複数のモデルがあります(表01)。そして日本で販売されているのはそのうちの1つだけです。また、色のバリエーションのほかに、ストレージ/メインメモリ/CPUの組み合わせが個々のモデルにあります。
さらに同一モデル、同一構成であっても、仕向地向けに対応周波数などが違います。また、アンドロイドの設定にある「端末情報」 ⇒ 「認証」に国による違いがあることを考えると、ソフトウェア的にも違いがあると考えられます。
日本国内で販売されているのは、ZE551MLという型番のモデルですが、台湾などでは、ZE550ML、ZE500CLというモデルがあります。ZE550は、日本国内で販売しているZE551MLの廉価版で、ZE500は、5インチ液晶を使った下位モデルです。
構成の違いは、単純にストレージ容量、メモリだけでなく、CPUやディスプレイの違いがあるのに対して、すべての組み合わせがあるのではなく、ごく一部の組み合わせしかありません。これは、カラーバリエーションなどもあるからだと考えられます。日本国内で販売されるZE551だけを見ても12種類のSKUがあります。つまり12種類のパッケージが流通することになります。ただし、カラーバリエーションはどうも背面カバー部分だけの違いのようです。
さらにZE551だけを見ても、仕向地向けに6種類あり、それぞれで対応周波数が微妙に違っています。LTEの対応周波数を見ると日本版と台湾版はかなり近いのですが、同一ではありません。Zenfone 2の周波数対応についてまとめたのが(表02)です。
なお、買った後でわかったのですが、台湾で販売されているZenfone 2には、EU圏で利用可能となるCEマークはあるのですが、米国のFCCの登録がありません。もちろん日本の技適マークもありません。
また、日本円に換算した価格をみるに、どうも米国版が一番よさそうです。日本版、米国版、台湾版のZenfone 2(ZE551)の最上位モデル(メモリ4ギガ、ストレージ64ギガ)の価格を比較したのが(表03)です。それぞれ、原稿執筆時の為替レートで日本円に換算してみました。それぞれ、他の国で利用できないので、価格が違うからといって簡単に買うワケにもいきませんが、結構価格差があることも事実です。
筆者は、おもに海外、特に米国での利用を想定していました。なので、ちょっとガッカリです。周波数の違いはわずかなので、場合によってはネットワークに接続できないこともあるかもしれませんが、さすがに未認証では利用できません。ただ、台湾の人もアメリカにいって困るのではないかとおもうのですが……。
本体背面。上部にLEDフラッシュとレンズがあり、その下がボリュームキー。NFCのアンテナはロゴあたりから下にある。筐体のカラーはゴールド |
背面カバーを開けたところ。バッテリを覆うようにマイクロSDカードスロット、2つのSIMスロットがある。背面がカーブしているのは、こうした構造になっているから |
ストレージ32ギガ版を購入
購入は、台湾市内にある携帯電話ショップの集まったビル(獅子林ビルとしてモバイル関係では有名なビル)にあるASUSのショップ(代理店の経営だそうです)です。最初、どうせ買うなら、最上位機種の64ギガストレージのものを買おうと思っていたのですが、店員さんに、4ギガメモリ32ギガストレージのものにSDカードさせば、容量は補えるし、他のスペックはまったく一緒だから、こっちのほうが絶対にいい、といわれ、32ギガストレージのものにしました。価格は、8,990台湾ドル(同3万5,960円)でした。色はゴールドを選びました。
純正のケースもすすめられたのですが、どうもしっくり来ない感じです。ですが、NFCを使うなら、確実に使える純正ケースがいいといわれました。ですが、材質や手触りなどが気に入らなかったので、純正品の購入はやめて、他のものを探すことにしました。購入したのは、革のような手触り(たぶん合成皮革だと思われます)のケースで、純正品同様に正面カバーに丸い窓の開いているものです。韓国ROAR KC Techという会社のNoble Viewというケースです。カバー側に磁石が入っていて、Zenfone 2はカバーの開閉を検出、カバーを閉じると窓の中に時計などを表示します。また、カバーを開けるとスリープから復帰します。価格は600台湾ドル(同2,400円)でした。
内側にカードフォルダーがあります。ただし、磁石があるので、磁気ストリップ式のカードは入れられません。台北市内の地下鉄(MRT)は、日本のように非接触方式のプリペイドカードが利用できるため、これを入れておくとおサイフ携帯みたいに改札を通過できるのですが、カードを入れると、窓のほうにはみ出してしまいます。
発売して間もないZenfone 2ですが、すでに大量のケースが売られていました。ただし、台湾では、5インチ版(ZE500)のZenfone 2もあって、そのケースもあるので、5.5インチ(ZE551、ZE550)用でないと使えません。
別途購入したサードパーティのケース。革のような手触りの素材で、韓国Roar KC Techのもの |
価格半分で8割の満足感
台湾での取材中1週間ほど、Zenfone 2を使って見ました。基本的な感想は「価格の割に悪くない」です。台湾でいくつか携帯関係のショップをまわってみましたが、たとえば、SamsungのGalaxyシリーズなどは台湾でも2万台湾ドル(4円換算でも8万円)を越える価格です。もちろん、契約すれば、端末代金はゼロみたいな売り方はされていますが、1万台湾ドル以下(同4万円)となるZenfone 2の最上位機種からみれば2倍以上の価格です。
Zenfone 2は、筐体はプラスティックだし、液晶はHD解像度で高品質とはいいがたいのですが、特に大きな問題もなく、NFCやデュアルSIM、メモリカードスロット、IEEE802.11ac、1300万画素カメラなどと機能的にも一通り押さえてあります。
また、付属の充電器を使えば、40分弱で60%充電できるのも便利です。たとえば外出する日の朝に充電していないことに気がついても、なんとかなります。実際、台湾の取材で、疲れ切ってホテルに帰ってきてそのまま寝てしまい、目が覚めたら朝なんて場合でも、外出準備している間に7~8割は充電できるため、助けられたこともありました。
また、きょう体が大きく、バッテリ容量(カタログでは3000mAh)もあるので、朝7時ぐらいから夜9時過ぎぐらいまで外出しても、バッテリが切れることはありませんでした。
Zenfone 2は、デュアルSIMなので、筆者は台湾で、GSMのみとなるSIM2スロットにドコモの通話用のSIMを装着していました。これで、もう一方のSIM1でLTEデータ通信していても、電話の着信が可能です。残念ながら日本にはGSMのネットワークがないので、こうした使い方ができないのですが、海外にいるときだけであっても、持ち歩く端末が増えないのは便利です。
ワイヤレス充電器がないためか、NFC通信のエラーが少ない感じがあります。筆者の手元にあるNexus 4、Nexus 5(ともに日本国内版)ともワイヤレス充電器とNFCが搭載されているのですが、オムロンの血圧計とのNFC通信でエラーが出ることが多く、あまり実用的でないレベルでした。ワイヤレス充電が影響していると考えているのは、ワイヤレス充電機能がなくNFCを装備しているGalaxy Nexusではほとんどエラーが発生しないからです。受電用のコイルが影響しているのかもしれません。
Zenfone 2とのNFC通信では、数回の通信で一回エラーが起きただけでした。日本に戻ってしまったので、それ以上はためしていないのですが、Nexus 4/5だと数回トライしてようやく通信が成功するという確率なので、エラーレートは低いと判断できます。
不満な点もないわけでもありません。きょう体が大きいのに、スピーカーがモノラルだったり、裏蓋が空くのにバッテリが交換できないなどです。また、背面側は、プラスティックで、あんまり高級感がなくて手触りがツルツルしていて落としそうな感じです。
Zenfone 2は、アンドロイドのナビゲーションボタン(もどる、ホーム、最近のアプリ)がハードウェアボタンになっていて、そのぶんディスプレイ上に表示領域を取らないのはいいのですが、ボタン部分にバックライトがなく、真っ暗な場所では、なれないと少し戸惑います。ただ、配置が標準的なアンドロイドの配置(戻る、ホーム、最近のアプリ)なので、これに慣れているなら、バックライトなしでもなんとか操作は可能です。液晶下の左、中央、右とだいたいの位置を触ればボタンが動作します。
ボリュームキーの位置が背面中央とかなり変則的なのもちょっと気になる点です。ボリューム操作がやりにくいわけではありませんが、手探りでボリュームを探すときにカメラのレンズに触ってしまい、レンズに指の跡がついてしまうのが気になります。また、一般のユーザーでは、それほど気にならない問題なのでしょうが、画面キャプチャー(本体上部の電源ボタンと背面のボリュームダウンの同時押し)がちょっと面倒です。
台湾ではSIMスロット1に亜太電信のプリペイドLTEサービスのSIMを、スロット2にドコモのFOMAサービスのSIMを入れてみた |
クイック充電機能があるので、充電時間は割と短い。やはりLTEで通信を行うと短時間で減っていく。このグラフの場合、100%から12%に到達するまで18時間ぐらい |
ざっと見た感じ、大きな問題や不満もなく、事業者などが扱う、10万円近い価格のハイエンド端末の半分ぐらいの価格で、8割ぐらいの満足感が得られる感じです。機能的には十分ですが、さすがに、質感や手触りといったところでの「高級感」は、それほど大きくありません。とはいえ、カバーをつけてしまえば、外装の問題は見えなくなるし、悪くない機種だと思われます。