顔は履歴書と言われるように、その人をあらわすもの。初めて会う相手は、どんな人かわからないため、一目して分かる顔の情報を基に相手を判断し、コミュニケーションの方法を決めていきます。前回のコラムでお話ししたように、「男性が注目する女性の顔の部分」は目元や肌全体、唇や口元でした。では、反対に「女性が男性の顔を見るとき注目している」のは、どこの部分なのでしょうか。
女性は男性の顔の下半分に注目……結婚相手は「外見の魅力が劣る男性」を
ペンシルバニア州立大学のReginald Adams氏らが『Journal of Experimental Social Psychology』に発表した研究によれば、男性の顔が魅力的かどうか判断するとき、女性は男性の顔の下半分を見ていることが明らかになっています。
その理由として、男性は男性ホルモンのテストステロンの作用によって、下あごが肥大し、全体的に彫が深くなります。また、相対的に目が細くなり、鼻や頬骨も高くなるんです。こういう特徴は、男性をより男らしく印象づけるのですが、女性が男性の顔の下半分を見るというのは男性が性的に成熟しているかどうかを見極めようとしているからなのでしょう。
ただし、これに関連して、女性がパートナーを選ぶとき、一夜限りの相手としてはより男らしい魅力的な男性を好むものの、結婚相手としては外見の魅力が劣る男性を好むとされています。その理由としては、より男性的で魅力的な顔立ちの男性は性的なことへの関心も高く、浮気などの心配があるからかもしれません。それを本能的に、女性は判断しているのでしょう。
男性の目はその人の知性の印象を左右する
他にも、女性が見ている顔の部分としては、目があげられます。前回のコラムで「目は、男性にとって女性を見る上で重要な顔の要素」とお話ししましたが、それは女性も同じ。というのも、「顔の物理的特徴と性格印象」という研究によれば、男性の目はその人の知性の印象を左右すると言います。つまり、男性の目を見ることで、人はその男性の知性の高低の印象を形成しているのです。ちなみに女性の顔の場合、あごと「知性や社会的望ましさ」の印象が関連していると言います。
Cunninghamという研究者は「顔の構造特徴と対人魅力の関係」を検討し、魅力には三つの手がかかりがあることを指摘しています。一つ目は幼児性の特徴であり、大きな目、小さな鼻、小さなあご、目と目の間隔など。二つ目は性的成熟の特徴であり、高い頬骨、狭い頬など。三つ目は、表現力の特徴で、眉毛の位置の高さ、大きな瞳、微笑などです。つまり、ここでも共通して言えることは、目やあごなどが魅力に影響しているということです。
つまり男性だけに止まらず、人は相手の顔を見る上で、漠然と見ているようで、実は目やあごといった顔の部位に無意識のうちに注目し、そういった魅力を判断していたんですね。
※写真と本文は関係ありません
著者プロフィール
平松隆円
化粧心理学者 / 大学教員
1980年滋賀県生まれ。2008年世界でも類をみない化粧研究で博士(教育学)の学位を取得。京都大学研究員、国際日本文化研究センター講師、チュラロンコーン大学講師などを歴任。専門は、化粧心理学や化粧文化論など。魅力や男女の恋ゴコロに関する心理にも詳しい。現在は、生活の拠点をバンコクに移し、日本と往復しながら、大学の講義のみならず、テレビ、雑誌、講演会などの仕事を行う。主著は『化粧にみる日本文化』『黒髪と美女の日本史』『邪推するよそおい』など。