先ごろ、労務行政研究所から発表された夏のボーナスは、平均で73万4434円、前年比3.0%増と2年連続の増加となりました。景気回復は端緒についたばかり。将来への不安も相まって、なかなか思い切った消費に回せない家庭も多いでしょう。そこで、今回のボーナスを機に、これまで思うように貯蓄ができなかった世帯は、家計、貯蓄を改善するチャンスととらえてみてはいかがでしょう。自転車操業の月々の家計に少しでも余裕がでれば、消費意欲も高まるのではないでしょうか。
2015年夏のボーナスは平均73万4434円
アベノミクスから2年。企業の好業績が次々と発表されるなか、まだまだ賃金UPの実感を持てない人も多いことでしょう。しかし、今年の夏のボーナスは2年連続で増加、平均で73万円4434万円と前年比で3.0%の上昇という結果に(労務行政研究所調べ。東証一部上場企業122社への調査データより)。これはリーマンショック前の水準とほぼ同じで(2008年夏季平均74万3380円)、リーマンショック後の2009年(64万8149円)からは、実に約10万円も増加しています。
長くデフレが続き、消費を控える傾向にあった一般家庭からすると、ボーナスは日々の家計の補てんに回り、ボーナスで貯蓄、まとまった買い物は我慢という状況だったことでしょう。今回のボーナスが好調だからと言って、すぐに思い切った行動に出られないのも無理はありません。しかし、ボーナスは家計改善をするのに絶好のチャンスです。ボーナスの賢い使い道を考えてみましょう。
家計、貯蓄改善のテコ入れにボーナスを利用する
お金が貯まらない家計の一番の理由は、突然の出費に対応できず、貯蓄を取り崩してしまうことにあります。日々の生活で節約に励んでも、冠婚葬祭が重なったり、不意の出費があったりすると、家計は一気に赤字になってしまいます。こうした積み重なった赤字をボーナスで解消するといった繰り返しでは、なかなか思うように貯蓄は増えません。
そこで今回のボーナスを以下の3つの観点で使い分けることをオススメします。
赤字があれば、即解消
ボーナス払いでの買い物は止める
特別支出用として「使える貯蓄」としてストック
残ったお金は、使わないお金として確実に貯蓄
ひとつずつ見ていきましょう。いずれも目的は、毎月の家計の平準化です。
まず、赤字があれば、即解消。これは文字通り、毎月の家計で累積した赤字は、即刻解消しましょう。特に、普通預金口座で自動貸越の赤字がある場合は、すぐに返済しましょう。これは普通預金口座の残高がゼロになると、あなたの定期預金を担保に銀行がお金を貸し付けていることを意味します。貸付金利は高く、定期預金の利息なんて、あっという間に吹き飛んでしまいます。余計な利子は払わないことです。
次に、ボーナス払いでの買い物や支払い。もうすでに夏のボーナスをあてにして買い物をしてしまったものは仕方がありませんが、冬のボーナスではこうした買い物はしないようにしましょう。後述する、3の特別支出用の貯蓄から使うようにして、ボーナスが右から左へとなくなるようなお金の流れを止めることが重要です。これは、計画的なお金の使い方をすることで、ムダな買い物や予算オーバーを防ぐことにもなります。
ボーナスを特別支出用のお金としてとっておくことがキモ
今回のボーナスの使い方として、一番キモになるのが、特別支出用として貯蓄することです。これは貯蓄といっても、1年以内に使う予定のあるお金で、使ってもいいお金です。冠婚葬祭など、いつ不意の出費があっても、この貯蓄から使うようにすれば、毎月の家計には影響しません。これまで1年間で日々の基本生活費以外のお金、たとえば自動車保険、自動車税、固定資産税といった必ず出ていく出費と冠婚葬祭などにかかったお金を合計し、だいたいの予算を計算します。その金額を生活費口座とは分けて管理するようにします。せっかくのボーナスも、この特別支出用の貯蓄でゼロになるかもしれません。でもここがふんばりどき。一度こうしたお金の流れを作れれば、毎月の家計のやりくりに苦労することから解放されます。
そして、少しでもボーナスが残ったら、このお金こそ、使わずにとっておくお金として貯蓄することです。今回、3つまでのことができれば、次回は、ボーナスから貯蓄をすることから始めましょう。今回、赤字の補てん分で使ってしまったお金も上乗せできるはずですし、ボーナス払いにしていた買い物分も上乗せできるでしょう。
まとまった金額の買い物や不意の出費は、特別支出用口座から引き出す習慣にすることが、お金が貯まる早道となります。
<著者プロフィール>
伊藤加奈子
マネーエディター&ライター。法政大学卒。1987年リクルート(現リクルートホールディングス)入社。不動産・住宅系雑誌の編集を経て、マネー誌『あるじゃん』副編集長、『あるじゃんMOOK』編集長を歴任。2003年独立後、ライフスタイル誌の創刊、マネー誌の編集アドバイザーとして活動。2013年沖縄移住を機にWEBメディアを中心にマネー記事の執筆活動をメインに行う。2級FP技能士。