米Appleは8日(現地時間)、サンフランシスコで開催されたWWDC基調講演において、この秋に提供される「iOS 9」の機能を発表した。主な特徴は、新設計のSiriと検索機能により、ユーザーの次のアクションを先回りしてアプリや情報提供のアシストを行うことや、iPad向けのマルチタスク機能の搭載、また数々のビルトインアプリ刷新などとなっている。
基調講演において、Apple ソフトウェアエンジニアリング担当副社長 クレイグ・フェデリギ氏は、新たなバージョンのSiriは以前のものより40%高速化したと説明。Siriで「昨年8月のユタの写真」と検索し、表示された画像をリマインドする、といった文脈的なリマインド機能をデモで見せた。
また、利用者の活動パターンに基づき、最も関連性の高い情報を予測して探し出したり、利用者が入力する前に起動すべきアプリや連絡すべき人物を自動的にサジェストするなど、ユーザーの先を読むアシスタントとして機能。検索結果のカテゴリも、スポーツのスコアやスケジュール、動画、計算機など、より広くなった。
iPad向けには新たに「Slide Over」機能により、スワイプするだけで2つのアプリを同時に画面上に表示させることが可能になる。さらにタップすれば画面を分割するSplit View機能が起動し、2つのアプリを並べて使用が可能。「Picture-in-Picture」機能では、他のアプリを使いながらFaceTimeやビデオの視聴が利用できる。これらのマルチタスク機能はビルトインアプリが対応する他、サードパーティー製アプリにも簡単に搭載できるAPIが提供される。入力・編集をアシストするShortcut Barや、Multi-Touchジェスチャー機能も追加されている。
ビルトインアプリのアップデートでは、「マップ」が新たに主要都市の交通機関網と時刻表をサポートし、乗り換え案内に対応し、電車・地下鉄・バス・徒歩の組みあわせたルートを提案。飲食やショッピング関連の検索をすると、近くの関連施設を表示するNearby機能も搭載する。
「メモ」は新たに指を使ったドローイングに対応する。また、チェックリストの作成や、写真を直接取り込むこと、他のアプリから重要なアイテムを直接ノートに記録することも可能。
新たに追加される「ニュース」アプリは、新聞・雑誌のデザインレイアウトとインタラクティブなデジタルメディアを統合し、利用者の関心を学習して関連したコンテンツを配信するパーソナライズされた媒体となるもの。これは、カスタムタイポグラフィー、ギャラリー、オーディオ、ビデオ、インタラクティブアニメーションに対応するデジタル配信フォーマット「Apple News Format」で動作する。
Apple Payには、小売業者発行のクレジットカードやポイントサービスに対応する「Discover」機能が搭載される。PassBookが新たに「Wallet」アプリとなり、Wallet内でカードを管理する仕組みとなる。また、7月から英国でもApple Payの提供が開始される。
iOSの基盤については、バッテリー消費の最適化により持続時間が標準で約1時間長くなり、さらに延長できる低電力モードも追加。また、より小さな空き容量でソフトウェアをアップデートしたり、「Install Later」機能で使用していない時間にアップデートを行える。パスコードの強化やOSレベルでの2段階認証搭載で、デバイスやApple IDへの不正アクセスをより難しくする。
デベロッパ向けのAPIでは、サードパーティー製アプリへのディープリンクへの拡張検索機能、ゲーム開発向けのGameplayKitとModel I/O、またゲームプレイを記録するためのReplayKit、自動車メーカーのCarPlayアプリ開発サポートなどの他、新たなHomeKitプロファイルやHealthKitデータポイントが提供される。
iOSおよびOS Xのためのプログラミング言語SwiftはSwift 2にアップデートされ、新機能とパフォーマンス改善を提供。また、Swiftのコンパイラと標準ライブラリは今年後半にオープンソースとして利用可能になる。
iOS 9ベータソフトウェアとSDKは、iOSデベロッパプログラムのメンバー向けに即日提供開始。パブリックベータプログラムは7月より提供される。iOS 9のリリースは2015年の秋となる。対象機種は、iPhone 4S以降、第5世代のiPod touch、iPad 2以降、iPad mini以降となっている。なお、今回発表されたうち、一部の機能は地域や言語を限定して提供される可能性がある。