筆者は先週のレポート記事で「Windows 10は8月~9月上旬にリリースされる」と述べた。過去のWindowsリリースまでのプロセスから導き出した一つの予想だったが、現実Microsoftは想像を超えていた。Microsoftは7月29日からアップグレードを提供すると発表したのである。
これまでの推測のとおり、音声パーソナルアシスタントのCortanaは米国をはじめとする7カ国に限定提供され、7月29日の時点で日本語音声は使えない。正直なところ、"リリース日ありき"で進んでいる印象を拭い切れないが、同日からWindows Update経由でWindows 10に無償アップグレードできることは確実である。そこで現時点の情報を踏まえて、システム要件やアップグレードパスを確認しよう。
まず、システム要件は基本的にWindows 8.1と大差はない。だが、ディスプレイ解像度を明言している点は目新しい。すでに多くのPCがシステム要件を満たすようになったため、Windows 7は必要解像度を併記せず、Windows 8では「Windowsストアアプリをスナップする場合、1,366×768ピクセル以上」という注意書きがあった程度。Windows 8.1ではさらに「1,024×768ピクセル以上」に緩和されている。
■Windows 10のシステム要件
- プロセッサ:1GHz以上のプロセッサまたはSoC
- メモリ:32ビット版は1GB、64ビット版では2GB
- ハードディスクの空き領域:32ビット版OSでは16GB、64ビット版OSでは20GB
- グラフィックカード:DirectX 9以上(WDDM 1.0ドライバ)
- ディスプレイ(画面解像度):1,024×600ピクセル
Windows 10が要求する1,024×600ピクセルは、WSVGAとも言われ、一時期のネットブックで多く用いられていた解像度だ。もちろん当時のネットブックは低スペックなプロセッサを搭載していたため、Windows 10が動作するとは思えない。こちらは7インチクラスのタブレットを考慮したシステム要件と捉えるべきだろう。
アップグレードパスについては、基本的にHome系エディションはWindows 10 Homeへ、Pro向けエディションはWindows 10 Proへアップグレード可能である。なお、Enterprise エディションやWindows RTは対象外だ。
32ビット版のWindows 7/8.1から64ビット版Windows 10にアップグレードできるか否かについては明示されていない。筆者は技術的に可能と推測するが、無駄な混乱を避けるためか今回は保留された形だ。その際必要になるのがクリーンインストールだが、OSG Data and FundamentalsチームのGabriel Aul氏は、詳細は後ほど公開すると断りながら、「1度アクティベートすれば再インストールは何回でも可能」とツイートしている。
この発言が「回復」の再インストール機能を指している可能性もあるが、MicrosoftはWindows 8.1のインストールメディアを作成する公式ツールをリリースしていることから、あまり神経質になる必要はなさそうだ。ただし、Aul氏はISOの提供については「わからない」と述べている。
他方でWindows 10にアップグレードすると削除される機能が存在する点にも注意を払いたい。まず、Windows Media Center、Windows 7のデスクトップガジェット、USBフロッピードライブのインボックスドライバーが削除される。
USBフロッピードライブに関しては、Windows 10 Insider Preview ビルド10130をインストールしたPCに接続したところ、インボックスドライバーで動作した。もっともこの結果を踏まえて「大丈夫」と判断するのは早計だ。今後もUSBフロッピードライブが必要な方は、ベンダーが配布するデバイスドライバーを確保しておこう。
あと、Windows 7ユーザーが注意したいのがDVDビデオの視聴である。Windows 8からDVDビデオ再生時に用いるMPEG-2コーデックを省いており、Windows 10にも搭載していない。
Windows 10アップグレードの日まで残り8週間。今のうちに未適用の更新プログラムを確認し、使っていないアプリケーションをアンインストールするなど、PC環境の整理に勤しむことをお薦めしたい。
阿久津良和(Cactus)