2015年夏リリースの公約を守るMicrosoft
5月29日(米国時間)にWindows 10 Insider Previewのビルド10130がリリースされた。着々と開発が進むWindows 10だが、Neowinが「Microsoftの関係者によれば、Windows 10の開発は7月中旬に終了する」と報じている。この7月というキーワードは、MicrosoftがWindows 10のリリース時期を「今夏」と公表した後に、AMDのCEOが「7月末」とうっかり漏らしたことから始まった。
仮に内部関係者の情報が真実だとした場合、開発終了後から最終チェックを経てRTM(製造工程版)に至るまで数週間を要するため、MicrosoftがAMDなどのパートナー企業に通達した「7月末」という時期の信用度はさらに高まる。例えばWindows 8 RTMは2012年8月1日に完成し、8月16日にMSDNや当時のTechNetの会員向けにリリース開始。GA(一般販売開始)は10月26日だった。
MicrosoftはWindows 10を「サービスとしてのWindows(Windows as a Service)」と定義して、アップデートシステムを大幅に変更することを表明している。それはパッケージ販売時代のソフトウェアと異なり、RTMの完成度を極限まで高める必要がないという見方もできるだろう。リリース後の更新プログラムで完成度を高めることができるからだ。その結果、RTMとGAの期間は大幅に短くなる可能性も考えられる。
また、欧米における9月は新学期開始月だ。そのタイミングに合わせた販売キャンペーンが、売り上げアップにつながることを踏まえれば、Windows 10のGAは8月末もしくは9月上旬という想像はあながち間違いではないだろう。
Windows 10 Mobileを同時リリースする可能性
気になるのは、Windows 10 Mobileである。以前のレポート記事でも述べたようにWindows 10は「One Windows」を具現化したOSであり、Windows 10 Mobileの存在も大きい。筆者も、Windows 10 MobileのInsider Preview(ビルド10080)を試してみたが、デスクトップ版と比べると不安定な面が多く、まだ常用レベルには至らないのが現状だ。
Windows 10 Mobileに関する動きとして注目したいのが、日本マイクロソフトが社員向けスマートフォンとしてLumia 830を配布した点だ。技適マーク(技術基準適合証明)を取得し、同社が使用するデバイスに限って国内使用を可能にしたという。ただし、Lumia 830自身に技適マークが付与された訳ではないため、我々は使用できない。
これまで日本マイクロソフトの社員向けスマートフォンは、2011年8月に富士通東芝モバイルコミュニケーションズが開発した「IS12T」だった。当時はWindows Phone 7.5を搭載し、2013年1月にWindows Phone 7.8へアップデートしたものの、2014年10月に同OSのサポートが終了。つまり、半年ほどサポートが終了したOSを使用し続けていたことになる。
少々脱線したが、話をWindows 10 Mobileに戻そう。先のde:code 2015では、マウスコンピューターの「MADOSMA」のデモ機が展示されていたようだが、現時点では、Windows 10 Mobileを搭載するかどうかは明らかにされていない。MicrosoftはBuild 2015で「PC版とモバイル版(の開発テンポ)は異なる」と述べていることから、2015年夏リリースを期待することは難しいだろう。
だが、Lumia 830導入に際して、日本マイクロソフトの「日本市場での事業展開・製品発売を直接的に意味するものではない。だが、社内活用を今後のスマートフォン関連事業の検討・展開材料にする」といった発言からは、前向きな姿勢がくみ取れる。まずはPC版のWindows 10、そしてWindows 10 Mobileの完成を心待ちにしたい。
阿久津良和(Cactus)