富士通では、NTTドコモの2015年夏モデルとして約5.2インチのAndroidスマートフォン「ARROWS NX F-04G」を5月28日より発売する。同端末は、"瞳の虹彩"を認識してセキュリティロックを解除できる「虹彩(こうさい)認証」を搭載したモデルだ。同機能は、実際どの程度の精度で利用することができるのだろうか? そこで本稿では、この虹彩認証に焦点を絞ってARROWS NX F-04G を紹介していきたい。
ちなみに虹彩とは、瞳孔のまわりの色のついた部分のこと。虹彩認証システムでは、赤外線照明を用いて眼球をカメラで撮影、個人の特徴点を抽出する仕様となっている。ちなみにスマートフォンに虹彩認証システムを搭載するのは、ARROWS NX F-04Gが世界で初めて(2015年5月12日時点、富士通調べ)とのことだ。
まずはスペックをチェック!!
まず簡単に端末のスペックをおさらいしておこう。ARROWS NX F-04Gは、約5.2インチのWQHD(1,440×2,560ピクセル)IPS液晶を搭載したスマートフォン。解像度は超高画素密度の564ppiとなっており、ディスプレイの美しさは今夏モデルの中でも群を抜いている。
WQHD(1,440×2,560ピクセル) IPS液晶を搭載。サイズ/ 重量は、約146(H)×70(W)×8.8(D)mm/ 約155g、カラーバリエーションはIris Green、White、Blackの3色で展開する |
背面には高速オートフォーカスに対応した約2,150万画素のメインカメラを採用。4K動画の撮影にも対応している。前面には約240万画素のインカメラを搭載し、画面のどこをタッチしてもシャッターが切れる。そしてインカメラの横には、虹彩認証システム「Iris Passport」で使用される専用の赤外線カメラを配置している。
主な仕様は、以下の通り。OSはAndroid 5.0、内蔵メモリは3GB、ストレージは32GB。外部ストレージはmicroSDXC(最大128GB)に対応する。CPUはMSM8994(オクタコア、2.0GHz+1.5GHz)を採用。バッテリー容量は3,120mAhで、IPX5/8に準拠した防水、IP6Xに準拠した防塵性能を備える。
通信面では、受信時最大225Mbps/送信時最大50Mbpsの「PREMIUM 4G」に対応。LTEとWi-Fiを同時利用するマルチコネクションにも対応する。このほかVoLTE、IEEE802.11a/b/g/n/acに準拠したWi-Fi、最大10台までの同時接続に対応したWi-Fiテザリング、近接無線伝送技術「TransferJet」、Bluetooth 4.1、ワンセグ/ フルセグ、赤外線通信、おサイフケータイなどに対応している。
虹彩認証システムの実力は?
それでは、虹彩認証システム「Iris Passport」の使い勝手について紹介していこう。今回筆者は実際に、ARROWS NX F-04Gに筆者の虹彩を登録してみた。画面に表示されるアニメーションの説明に従ってレンズをみつめること10秒ほど。簡単に登録できた。なお登録に際しては、虹彩認証と併用する解除方法として「パターン」「暗証番号」「パスワード」のいずれかを選ぶことができる。
虹彩の登録後、さっそくロック解除を試みてみた。すると、ほんの一瞬でロックは解除され、ホーム画面が表示された。またたく間に(と言っても、またたき中には虹彩が確認できないが!)ロック解除できるので、まるでセキュリティロックをかけ忘れたかのような錯覚におちいる。使い勝手はとても良いようだ。
虹彩認証が機能しないケースは?
では、虹彩認証が機能しないケースはあるのだろうか。いろいろ試してみた。まずは眼鏡をかけた場合。伊達メガネ、度の入ったメガネの両方で試してみたが、簡単にロック解除できた。ここまでは予想通り。次にサングラスで試してみた。オレンジ色のサングラス、薄い黒色のサングラス、濃い黒色のサングラスなど数種類を使った。
結果は、用意したすべてのサングラスで虹彩認証システムが機能してロック解除できた。色の濃いサングラスではさすがに時間がかかったが、窓際に差し込む太陽光の下に移動したところ、無事にロック解除できた。もっとも、サングラスをかけない裸眼の状態が虹彩認証に最適な環境であることは言うまでもない。では、夜間には使えるのだろうか。そこで日没後の真っ暗な部屋で、電気をつけずに試してみた。すると赤外線LEDの光に瞳が照らされ、簡単にロック解除できることが分かった。
ロック解除以外にも様々な使い道
虹彩認証は、端末のロック解除以外にも様々な使い道がある。例えば、オンラインサービスを利用するときを想像してほしい。ログイン時には、決まってIDとパスワードの入力が求められることだろう。セキュリティのためには仕方がないこととは言え、利用の度にこれらの情報を入力するのはとても面倒だ。そこでARROWS NX F-04Gに搭載された「パスワードマネージャー」が活躍する。同機能は、虹彩認証するだけでIDとパスワードが自動入力されるというスグレモノだ。
ドコモコンテンツを購入する際には、虹彩認証によって簡単にdocomo IDでログインできる仕様となっている。また、任意のアプリにロックをかける「アプリケーションロック」も利用可能。指定されたアプリを開こうとすると「虹彩認証が必要です。目を映して下さい」というメッセージが表示され、虹彩認証が求められるようになる。
双子でも虹彩は異なる
先のNTTドコモの新製品発表会では、ARROWS NX F-04Gの虹彩認証を紹介するブースに双子のモデルの姿があった。これは「一卵性双生児でも虹彩の模様は異なる」というメッセージを伝えるための演出だった。開発に携わった富士通の説明員によれば、ヒトの虹彩は個人に固有のもので、およそ2歳くらいで確定し、その後は生涯にわたって変化しないのだとか。ちなみにARROWS NX F-04Gに搭載された虹彩認証システムの”他人受入率”(他人を本人と誤認識して受け入れてしまう確率)は10万分の1。その信頼性は、かなり高いといえそうだ。
最後に蛇足となるが、ARROWS NX F-04Gには、画面をタッチするだけでディスプレイを点灯できる「タッチでON」機能も搭載されている。虹彩認証と併用すれば、利便性がさらに向上するだろう。例えば片手に荷物を持っての移動中、あるいは満員電車でつり革につかまっているとき、片手ではスマホが確認できない。スマホを持つ手で、ロック解除のための暗証番号を打ち込むのは無理な話だ。日傘や雨傘が必要不可欠になるこれからの季節、片手が傘でふさがるようなシチュエーションも増えるだろう。しかしARROWS NX F-04Gなら、タッチでONでディスプレイを点灯、虹彩認証でセキュリティロックを解除できる。片手しか空いていない状況でも、便利に使えそうである。
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本稿では、ARROWS NX F-04Gの虹彩認証機能に焦点を絞って端末を紹介してきた。高いセキュリティを維持しつつ使い勝手を損なわないARROWS NX F-04Gの虹彩認証システム「Iris Passport」は、万人に薦められる次世代の生体認証システムに仕上がっていた。気になった方は、最寄のドコモショップでチェックしてみてほしい。