デジタルにおけるイラスト/漫画制作では、ソフトやペンタブレットなどの制作環境が、作画効率や作品の質に大きく影響する。価格や機能、適している作品ジャンルもソフトによって異なってくるため、自分のニーズに合ったものを選ぶことがポイントだ。

今回は、初心者でも操作しやすいシンプルなものから中・上級者のプロフェッショナルな制作に応えるものまで、ソフト5本をピックアップし、その特徴を紹介していく。

Photoshop

アドビ システムズの画像編集ツール「Photoshop」

写真編集やイラスト制作の領域において、多くのクリエイターにとってなくてはならないソフトであるPhotoshop。今年で25周年を迎える同ソフトの進化は、デジタルにおけるクリエイションの進化の歴史そのものと言っても過言ではない。筆圧感知によるブラシの表現力や、透明度・線幅の操作など、ペンタブレットとの組み合わせによって、そのポテンシャルを最大に発揮することができる。

ソフトウェア単体の価格が高いことがネックであったが、現在ではAdobe Creative Cloudにて、月額980円という格安の「フォトグラフィプラン」が用意されている。PhotoshopとLightroomといったふたつのデスクトップアプリや連携モバイルアプリをセットにしたもので、画期的な価格設定ながら、最新版のPhotoshopの機能をフルで使えるプランとなっている。

AUTODESK SKETCHBOOK PRO

オートデスクのペイントソフト「AUTODESK SKETCHBOOK PRO」

ペンや鉛筆、エアブラシなど、あらかじめ100種以上の描画ツールが用意され、世界に多くのユーザーを持つペイントアプリ。Photoshopのようなオールマイティーな画像編集ソフトと比較すると、イラストの機能に絞り込まれているため、手軽にイラストだけを楽しみたいという人におすすめだ。

手ぶれ補正や、自由に消失点を設定できるパースガイドなど作画をサポートする機能のほか、作画したイラストをつなげて簡易的なアニメーションを再生できる機能も特徴的。価格は$2.99/月、$24.99/年。

CLIP STUDIO PAINT EX

セルシスのマンガ・イラスト制作ツール「CLIP STUDIO PAINT EX」

セルシスのマンガ・イラスト制作ツール「COMIC STUDIO」と、イラスト制作ツール「ILLUST STUDIO」を前身とした、カラーイラストとモノクロ漫画ページ両方をひとつでまかなえる漫画・イラスト用ソフト。国内メーカーの製品だけあって、トーンツールや、ベクター描画、定規ツールなど、漫画制作のかゆいところに手が届く機能がそろう。

また、カラー/モノクロの原稿を作品ごとで同時に管理できるほか、複数人でひとつの漫画に描き込める共有作業モードも画期的。なお、2015年6月末をもって前身である「COMIC STUDIO」が販売終了となるため、今後は"コミスタ"ユーザーも「CLIP STUDIO PAINT EX」に移行していく流れとなるだろう。価格はダウンロード版2万3,000円、パッケージ版3万6,500円のほか、月々500円のバリュー版も展開。

なお、「CLIP STUDIO」シリーズは全2種類で、イラストや単一ページの漫画向き(複数枚ページ管理はEXのみ)スタンダードモデル「CLIP STUDIO PAINT PRO」も展開。こちらの価格はダウンロード5,000円、パッケージ版9,180円、月々500円のバリュー版。

openCanvas6

ジャングルのWindows専用ペイントソフト「openCanvas6」

使いやすいインタフェースと、イラストに必要な多彩な機能がそろう、Windows専用のペイントソフト。レイヤー機能や自由変形、テキストツールなど、ペイント・デザイン系の機能を幅広く押さえているだけでなく、イラストの雰囲気をレベルアップできる「フィルタ」機能や、描き手順を記録/再生できる「イベント」機能など、手軽にイラストを楽しめるオリジナル機能を持つ。

penCanvas専用の投稿サイト「ポタグラ」では、10代・20代を中心としたユーザーのイラスト投稿が盛んに行われており、コミュニティとして人気を集めている。価格は5,800円。

CloudAlpaca

メディバンのイラスト・漫画制作ツール「CloudAlpaca(クラウドアルパカ)」

イラスト・漫画制作機能の両方を備えながら、すべての機能を完全無料で利用できるペイントツール。コマ割機能や、ネーム連携機能など、漫画制作のためのベーシックな機能を搭載。「メディバン」にて会員登録をすれば、クラウドでのデータ管理や、チーム制作機能、追加のスクリーントーン素材のダウンロードも可能だ。

作品の雰囲気を大きく左右するセリフの書体も、「クラウドテキスト」機能で豊富なフォントから選ぶことができる。Web漫画市場が盛り上がりを見せる時代において、その間口をさらに広げてくれるアプリと言えるだろう。

まとめ

ソフトを選ぶにあたっては、イラスト制作であれば、Photoshop、AUTODESK SKETCHBOOK PRO、openCanvas6、漫画制作がメインであればCLIP STUDIO PAINT EX、クラウドアルパカといったように、まずは制作ジャンルにおいて絞り込むとよいだろう。無料のトライアル期間や、月額のシステムを活用して、実際に使用感を確かめながら購入を検討することもおすすめだ。

なお、現在ワコムでは同社のペンタブレット「Intuos Pro」を購入すると「AUTODESK SKETCHBOOK PRO」(1年間無料メンバーシップ)と「openCanvas6」のダウンロード版がもれなくもらえる「Create more」キャンペーンを実施中。キャンペーンサイトでは、メールアドレス登録でプロのクリエイターのカスタムブラシなどの素材や、作品のレイヤー構造まで見られるPSDファイルをダウンロードできる企画も実施。キャンペーン期間は2015年9月30日まで。

※全製品とも、価格は記事掲載時点のもの。