NTTドコモは5月20日、茨城県古河市内の市立小・中学校32校を対象に9月1日よりLTE対応学習用タブレット1,421台を導入することを発表した。同日、古河市役所ではNTTドコモと古河市による協定締結式が行われた。本稿ではその模様をお伝えする。
古河市のねらい
これまで古河市内の一部の小学校では、校内のWi-Fiに対応した学習用タブレットを導入し、電子黒板と連携した授業などを展開してきた。今回、古河市ではiPad Air 2を、重点整備校として古河第五小学校、上大野小学校、大和田小学校の3校については児童1人1台、その他の小学校20校においては1クラス分にあたる各校40台という規模で導入する。LTE対応学習用タブレットを導入することで、古河市ではどのような効果を期待しているのだろうか。古河市教育長の佐川康二氏が詳細を説明した。
佐川氏はまず、ICTにより教員主導・一斉教授型の授業が「学習者主体・能動的な学習」に変わると解説する。そしてLTE対応学習用タブレットを導入することで、児童が学校・校外・家庭といった環境を問わず、いつでも何処でも積極的に端末を使うようになることを期待している。例えば家庭内では、タブレットで宿題を済ませてクラウドにアップすることで提出が完了する。すると教員は児童1人1人の理解に応じたきめ細かな指導ができ、管理もしやすくなる。LTE対応モデルならWi-Fi環境のない教室でも使えるので、国語、算数、理科、社会、音楽、図工などあらゆる課目で利用シーンが増える。クラウドを活用したツールなどで協働学習を行えば、児童はクラスメートの多角的な見方や考え方に触れることができる。体育の授業では、LTEにより校庭内の何処にいても使用が可能。1人1台のタブレットが用意されていれば、鉄棒のさか上がりなど実技のフォームを友人同士で撮り合い、確認し合うこともできる。佐川氏は「クラウドと繋がった学習支援ツールを利用することで、個が活きるグループ学習が行える。共に学びを創りあげる、学びの共有化・協働化が実現できる」と解説した。
ドコモの教育分野への取り組みについて
続いてNTTドコモ 取締役常務執行役員の高木一裕氏が登壇し、ドコモの教育分野への取り組みについて説明した。同社では、これまでも教育サービスの提供などを通じて教育ICT分野の推進を図ってきた。スマートフォン向け学習支援サービス「ドコモゼミ」、ゲーム感覚で楽しめる親子向け知育サービス「dキッズ」、無料で学べるオンライン大学講座「gacco」など、その内容は多岐にわたる。
ところでNTTドコモでは今春4月、中期目標として"競争"から"協創"へと経営ビジョンをチェンジすることを表明している。これは従来の顧客獲得競争から脱却し、利用者により高品質なサービスを提供することを示唆するもの。様々なパートナー企業との「協創」により、顧客に新たな価値を創造し、さらには産業の活性化や社会的課題の解決へ貢献する、というのが、ドコモが目指す中期目標だ。高木氏によれば、今回の古河市との取り組みも、こうした考えに基づくものだという。同氏は「ネットワーク、ソリューションはドコモが提供する。そして学習支援ツールなどのコンテンツは、パートナー会社様から提供いただく。ドコモだけが前に出るのではなく、古河市様、ドコモ、パートナー様、みんなでコラボレーションして新たな価値を創っていく」と解説した。
なお上記の取り組みとは別に、NTTドコモでは古河市の協力のもとに、教育ICTに関する共同研究を行う。その内容は、古河市立古河第一小学校(5・6年生)を対象にタブレット端末100台を導入し、ICTを活用したクラウド型教育プラットフォームの効果検証を行うというもの。実証期間は平成27年9月1日から平成30年8月31日までで、教育の質の向上および児童生徒の学力向上への効果を検証する。遠距離通学支援バスを利用する児童には腕時計型のウェアラブル端末「ドコッチ」を提供して、安心・安全に通学できる環境作りの検証を行う。またオンライン学習サービス「gacco」の仕組みを利用することで、教員の教育ICTスキルを向上させる効果検証も行われる。
高木氏は「ドコモでは、"いつか、あたりまえになることを。"というスローガンを掲げている。現在は特別な取り組みのようにも思えるが、数年後には、小学生はいつもタブレットを持って勉強しているという環境が整っているかも知れない。ドコモでは、そうした社会を実現していきたい」と結んだ。