高層タワーの上階から眺める東京は、無機質なビルが果てしなく続き、アスファルトの道が縦横無尽に走る大都市だ。しかし、そんな東京にも緑あふれる庭園が多く存在する。今回はその中でも、都会であることを忘れてしまうだけでなく、外国気分やタイムスリップ気分も楽しめる庭園を紹介しよう。

一瞬にして英国豪邸のある風景へ

明治時代は西洋文化が雪崩のごとく日本に入ってきた時代。西洋風の建築が至る所に建てられ、舞踏会などが催されていたという。そのような建築は現在もいくつか残されている。そのひとつが「旧岩崎邸庭園」だ。

「旧岩崎邸庭園」には英国風の白い洋館が

(c)Flickr/Yoshizumi Endo

庭園の奥には英国風の白い洋館が堂々とそびえている。この屋敷は、明治政府によって建てられた「鹿鳴館」を建築したジョサイア・コンドルの設計だ。屋敷をバックに芝生に座ってみれば、そこはもう英国の田園。

また、この庭園にはそのほかに2つの建築がある。書院造りの和館とスイスの山小屋をかたどった撞球室(ビリヤード場)だ。和館は洋館と結合されていて、さらに撞球室には地下道でつながっている。地下道を通ることはできないが、洋館から和館へと内部を見学しながら通っていくことは可能だ。和館のお茶席で抹茶をいただきながら庭を眺めてみるのもいいだろう。

その時々で開催しているイベントでは、普段立ち入ることのできない場所を見学できるほか、コンサートなどを催すこともあるという。場所は東京メトロ千代田線「湯島駅」から徒歩3分と行きやすいのもうれしいところ。

大都市での疲れも癒やす庭園

都庁、そしてオフィスビルや巨大商業施設が立ち並ぶ新宿にありながら、憩いを求めて訪れたくなるのが「新宿御苑」だ。付近には入場無料の公園もいくつかあるが、料金を支払ってでもここは行く価値があるだろう。

「新宿御苑」はオフィスビルが立ち並ぶ新宿のオアシス的な存在

(c)Flickr/Taichiro Ueki

その理由のひとつが美しく整えられた広大な芝生だ。そこから遠くに望むビル街や東京タワーはほのかに幻想的で、まるでニューヨークのセントラルパークにいるような錯覚を覚えてしまうほど。フランスの街路を思わせるプラタナスの並木道や江戸時代から残されている庭園、そして中国風の建築や昭和初期の門衛所など数多くの見どころがあるため、散策をしながら探してみるのも楽しい。

最寄り駅は東京メトロ丸ノ内線「新宿御苑駅」や、東京メトロ副都心線/都営新宿線「新宿三丁目駅」で、いずれからも徒歩5分。「新宿駅」からでも徒歩10分である。駅からの道すがらカフェでコーヒーでも買って、静かで優雅な休日を過ごしてみてはいかがだろうか。

江戸時代の城を思う入場無料の庭園

日本の中枢的地域・千代田区にありながら、自然豊かでランナーにも人気の高い皇居。そのさらなる魅力は内部にまで足を踏み入れた時に気付くはず。それが、「皇居東御苑」だ。

「皇居東御苑」ではベンチ等を利用して簡単な飲食も可能

(c)Flickr/Toshihiro Gamo

入場無料ながらいつ訪れても手入れが行き届いていて美しい。ここには、幕末に焼失するまで江戸城があったため、その名残のどっしりとした石垣や重厚な門、白鳥の訪れる堀などがある。その間をぬって歩いていけばちょっとした江戸時代の城を探検する気分を味わえるだろう。庭園にはベンチなどの休憩できる場所も多い。木漏れ日とそよ風の中で食べるお弁当は格別だ。

本丸の芝地では、不定期に皇居警察音楽隊によるランチタイムコンサートが行われていることも。観客は思い思いに芝生に座り込み、30分間の演奏を聞くことができる。皇居東御苑には北桔橋門、平川門、大手門から入ることができるため最寄り駅も様々。東京メトロ各線「大手町駅」や「竹橋駅」からは徒歩5分、「東京駅」からは徒歩15分ほどでたどり着ける。

未来都市の姿を垣間みる地上35mの庭園

都市の発展によって作られる、鉄とコンクリートの建築物。それを巧みに活用した作られた庭園がある。「目黒天空庭園」だ。首都高速道路大橋ジャンクションの屋上を利用した、都市ならではの庭園で、まさに近未来型と言えるだろう。

「目黒天空庭園」は首都高速道路大橋ジャンクションの屋上にある

ぐるりと半らせんを描いたジャンクションは、上空から見ると美しい緑の弧となっている。庭園の長さは約400mでゆるやかな坂になっており、一番高い場所は地上約35m。時期によっては展望台から富士山も望めるという。そのほか、木陰を楽しめる「潤いの森」や枯山水の「奥の庭」など、10個のエリアに分けられているため、楽しみながら勾配を歩くことができる。

通常、庭園は日が暮れる前に閉園してしまうところが多いが、目黒天空庭園は21時まで開園している。デザインを考えて灯された照明の中、夜の散策を楽しんでもいいだろう。最寄り駅は東急田園都市線「池尻大橋駅」で、そこからは徒歩3分だ。

東京は時の流れの速い経済都市ではあるが、歴史ある建築や、木々に覆われ花の咲く庭園も多い。ホッとひと息を入れられる、自分好みの庭園を探してみてはいかがだろうか。

筆者プロフィール: 木口 マリ

執筆、編集、翻訳も手がけるフォトグラファー。旅に出る度になぜかいろいろな国の友人が増え、街を歩けばお年寄りが寄ってくる体質を持つ。現在は旅・街・いきものを中心として活動。自身のがん治療体験を時にマジメに、時にユーモラスに綴ったブログ「ハッピーな療養生活のススメ」も絶賛公開中。