米国では3月31日(現地時間)に発表し、5月5日にリリースしたことから、国内への投入タイミングが待ち望まれていたMicrosoftのWindowsタブレット「Surface 3」。日本マイクロソフトは2015年5月19日、記者会見を開いて翌20日から予約を受け付け、6月19日から販売開始することを明らかにした。現行のメインストリームである「Surface Pro 3」とは異なり、解像度1,920×1,280ピクセル(フルHD)の10.8型ディスプレイや、Intel Atom x7プロセッサを搭載している。
日本MSのWindowsタブレット「Surface 3」、個人向けはLTEモデルのみ提供 【レポート】Surface 3の実機・LTE料金プラン・オプション類まとめ |
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LTE契約せずにWi-Fiモデルとして代用可能か
Surface 3の詳しいスペックや価格は既報のとおり。デバイスの厚さは8.7mm、重量も約622g(4G LTEモデルは約641g)と、米国モデルと大差ない。そこで本稿では、記者会見の内容やデバイスの注目ポイントなどを取り上げよう。
最初に登壇した日本マイクロソフト代表執行役社長の樋口泰行氏は、「ユーザーは『どのPCを選ぶ』から『どのエコシステムを選ぶ』に変化しつつある。我々はソフトウェアに特化しつつも、WindowsやOfficeとバラバラだった。今後はiOSやAndroidといった他社エコシステムも梃子(てこ)に、自社のエコシステムを進化させていく」と語った。
さらに米国本社CEOであるSatya Nadella氏の発言「Empower every person and every organization on the planet to achieve more」を引き合いに、すべてのコンシューマーユーザーや企業ユーザーの利便性を向上させるために、力づける姿勢で革新を続けることを再アピール。このビジネスにおいても、個人にも通用するタブレットとしてSurface 3を位置付けているそうだ。
今回は「New Surface Press Conference」という名称で、Surfaceシリーズ最新版を披露する発表会である。ここで同社の姿勢を改めてアピールするスピーチ内容に筆者は首をかしげていたが、その答えはSurface 3のモデル構成にあった。
今回は一般向けモデルを2機種、法人向けモデルを4機種というラインナップ。加えて個人モデルは米国と異なり、LTEモデルに限定。Wi-Fiモデルは用意していない(後の質疑応答でもWi-Fiモデルに関する予定は未定とした)。
その理由として樋口氏は、「戦略的パートナーシップを最大限に活用し、ブレイクさせるため」と語っていた。今回、日本マイクロソフトは、ソフトバンクモバイルと戦略的パートナーシップを結んだ。LTEモデルは、従来の家電量販店に加えて、ソフトバンクモバイル(Y!mobileショップやワイモバイルオンラインストア)も販売店に加わるという。
読者諸氏が気になるのは料金プランではないだろうか。ソフトバンクモバイル専務取締役のエリック・ガン氏は、「スマートフォンと同じ料金プランを適用する」と説明。2年契約の場合は、3年までは3,696円/月(4年め以降は4,196円)が、Surface 3の本体料金に加わる形だ。また、スマホプランLと組み合わせて、月7GBまでの通信容量をスマートフォンとシェアできることも明らかにした。既にソフトバンクモバイルと契約しているユーザーには大きなメリットとなる。
Surface 3自体はSIMロックをかけておらず、他社製SIMカードを挿すこともできそうだ。しかし、日本マイクロソフトは「ソフトバンクモバイルのSIMカードのみ検証した」と、明確な回答は行わなかった。もっとも、Surface 3は4G LTEバンドとして1/3/8、3Gバンドは1/8をサポートしているため、検証する価値はあるだろう。さらにガン氏は、一括購入であればソフトバンクモバイルと契約せずに端末のみ購入することも可能だと説明した。
Surface 3はビジネスアプリ中心のユーザー向けか
それでは、Surface 3自体のスペックにも少し目を向けてみよう。Surface 3の搭載CPUはIntel Atom x7という説明だが、型番までは明らかにしていない。ただ、2Mバイトキャッシュに1.6GHz(ターボ時は2.4GHz)という公式情報や、会場のタッチ&トライコーナーで確認したところ、開発コード名「Cherry Trail」を持つAtom x7-Z8700を搭載していることを確認した。
ストレージはSamsung MDGAGC。こちらは安価なタブレットのストレージとしてよく使われるeMMC(embedded MMC:フラッシュメモリーの一種)である。実際に長期間使用してみないと断言できないが、昨今のSSD搭載PCなどに慣れているユーザーには、遅く感じるかも知れない。軽く試用した範囲では、アプリケーションの起動で手間取るような印象は受けなかった。
搭載OSもWindows 8.1 Updateに置き換わっている(法人モデルはWindows 8.1 Pro)。前モデルとなるSurface 2はWindows RTだったが、プレゼンした米Microsoftのブライアン・ホール氏は、「今後ARMプロセッサやWindows RTを(Surfaceに)使う予定はない」と発言し、改めてWindows RTが終息したことを認めた。
筆者は3月の米国発表時から、安価な原稿執筆マシンとしてSurface 3に注目していたが、前述のように個人向けモデルはLTEのみ。この1点で意気消沈したものの、冷静に考えれば大手量販店で直接購入し、LTE契約をせずスマートフォンのテザリング機能でインターネットに接続すれば、通常のWi-Fiオンリータブレットと同じ使い方ができるはずだ。
だが、Surface 3の価格構成はお世辞に安価とは言い難い。「メモリー2GB・ストレージ64GB」モデルの参考価格は81,800円、「メモリ4GB・ストレージ128GB」モデルの参考価格は91,800円。ここにSurface 3 Type Coverの15,680円、Surfaceペンの5,980円が加わると、10万円を越える。さらに消費税8%も痛い。
Surface ProやSurface Pro 2が予想以上にヒットしたのは、当時の為替レートが大きい。Surface Proの国内発売は2013年6月7日だが、当時のドル円レートは約98円。Surface Pro 2は同年10月25日発売だが、レートは約97円と100円を切っている。そして現在は1ドル約120円だ(2015年5月19日時点)。
このレート差はワールドワイド企業であるMicrosoft/日本マイクロソフトに大きく影響し、Surface Pro 3も2015年6月1日から事実上値上げする。Surface 3はこのレート設定を反映させたため、やや高額な値付けがなされたのだろう。
囲み取材で樋口氏も「各社(為替レートという)同じ条件のため、その土壌で勝負したい」と語っていた。現時点では、Microsoftが行っているようなSurface RTなどの下取りキャンペーンも予定していないため、いかんせんSurface 3は高額なデバイスとなってしまう。
割高感のあるSurface 3だが、デバイスサイズや622g(4G LTEモデルは約641g)の軽量ボディ、Intel Atomが実現する長時間のバッテリ駆動(最大約10時間の動画再生)など利点は多い。Surface Proシリーズと比べるとスペック面の魅力は足りないものの、ブライアン・ホール氏の言葉を借りれば、Surface 3は「過去の経験をすべて投入した最高のデバイスを目指した」モデルだ。ハイスペックを要するアプリケーションを使わず、WebやOfficeスイートが問題なく動作するといった用途を踏まえれば、十分魅力的なデバイスに映るはずだ。
ちなみに一般向けモデルのWindows 8.1は64bit版をプリインストールしているが、今夏に迫ったWindows 10を考えると、4GBモデルがベストチョイスとなる。この辺りは懐具合と相談しなければならないが、Surface 3の購入を思案中の方は参考にしてほしい。
阿久津良和(Cactus)