愛知県は5月15日、5月臨時県議会提出予定議案等について記者会見を開き、県営名古屋空港見学者受入拠点施設整備事業として「航空のフィールドミュージアム」を構築することを発表した。

「航空のフィールドミュージアム」で新設する受入拠点の展示イメージ図

中部地域は現在、米国シアトル(ボーイング社)や仏国トゥールーズ(エアバス社)に匹敵する航空機産業の拠点を目指し、県営名古屋空港周辺地域ではその中核プロジェクトとして、日本初の国産ジェット旅客機であるMRJ(Mitsubishi RegionalJet)の開発・生産が進められている。MRJは全国さらには世界中から注目をされており、量産機引き渡しの頃にはMRJ見学者が増加することを見越し、受入体制を整えることが必要になる。

MRJの飛行試験初号機

先行例として、航空機産業の聖地であるボーイング社のあるシアトルには、現在も旅客機の工場があり、キングカウンティー空港には完成機が並び、ハイウェイからも見ることができる。また、空港の敷地内には、The Museum of Flight(航空博物館)があり、150機を超える航空機やヘリコプターを展示しており、エバレットの工場では、ボーイング機の製造ラインを見ることができる。

また、エアバス社のあるトゥールーズは、本社および最終組立工場があるヨーロッパの航空機産業の重要拠点であり、最終組立工場はトゥールーズ・ブラニャック空港に隣接し、見学ツアーではエアバス機の製造ラインを見ることができる。また、空港の北端にはアエロスコピア博物館が1月14日にオープンし、エアバス社が製造してきた航空機などを展示している。

MRJの飛行試験2号機

県営名古屋空港周辺の特性として、MRJ量産工場や名古屋航空宇宙システム製作所史料室、空港施設、JAXA、自衛隊基地、エアポートウォーク名古屋等など、航空機産業の集積・航空機の観光資源が点在している。こうした施設を学校等が実施する社会見学はもとより、国内外からの来訪者を広く受け入れるため、県営名古屋空港周辺地域を航空機分野における産業観光の拠点としていく必要があるとしている。

MRJの飛行試験3,4号機

こうした考えの下で「航空のフィールドミュージアム」を構築し、周辺航空機産業関連施設等と協力・連携しながら、シアトル(ボーイング社)やツールーズ(エアバス社)に並ぶ航空機産業の拠点としてさらなる飛躍を目指すという。

見学者を受け入れる新設拠点では、MRJ試験機やYS-11、零戦等の実機を展示する「実機展示ゾーン」を設置する。また、見本市や研修会等が開催できるメッセイベント会場の「メッセゾーン」、名機百選の1/25の超精密模型を日本の航空技術史を物語るギャラリーとして展示する「展示ゾーン(名機百選)」を予定している。

憩いの場としては、ものづくりの体験学習の場も兼ねた「オリエンテーションゾーン」などを設ける。2017年第3四半期のオープンを予定しており、年間約35万人(オープン当初は65万人程度)を目指すという。

三菱重工業MRJ量産工場における見学施設整備計画の概要

そのほか、各施設と連携を深めることにより、県営名古屋空港全体をフィールドミュージアムとして活用するという。具体例として、「MRJ量産工場見学ツアー」や空港施設で「バックグランド・ツアー」、三菱重工名古屋航空宇宙システム製作所史料室で「MHI史料室探訪ツアー」を予定。

また、JAXA名古屋空港飛行研究拠点で「JAXA訪問ツアー」、航空館boonで「航空館boonで遊ぼうツアー」、自衛隊基地で「自衛隊基地見学ツアー」、また、エアフロントオアシスやターミナルビル展望デッキ、神明公園展望台など航空機の写真が撮れるベストスポットを巡る「撮影スポット・ツアー」などを構想している。

こうした構想と並行して、三菱重工業はMRJ量産初号機の納入を予定している2017年4月~6月をめどに、MRJ最終組立工場内に見学コースをオープンすることを予定している。

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