電子書店パピレスが運営し、コミックから小説、実用書、雑誌、グラビアと幅広いジャンルの電子書籍を取りそろえている電子貸本サイト「Renta!」。特にコミックは、少年漫画、少女漫画、ティーンズラブ、レディース、青年漫画、4コマ、萌え、サブカル、ボーイズラブなど最も豊富なラインナップを誇っているが、今回はボーイズラブ漫画の4月の月間ランキングの中から、注目作品をピックアップして紹介していこう。

テンカウント

『テンカウント』宝井理人(新書館)

極度の潔癖性である社長秘書・城谷忠臣は、ひょんなことから心療内科に勤める無愛想な臨床心理士・黒瀬陸に出会う。城谷の潔癖性を“勝手に”治そうとする黒瀬の条件は“友達として助言させてほしい”ということ……そんな不思議なイントロダクションから始まるのが宝井理人の『テンカウント』。城谷の潔癖性を克服するために個人的なカウンセリングで始まったのは“できないこと10項目をひとつずつクリアしていく”という治療法。“ドアノブに触る”“私物を人に触られる”“本屋で買い物をする”といった“治療”を進めていく。徐々にお互いの性格を確かめていくうちに、城谷に“黒瀬君といたら少しだけ普通のひとになったみたいに錯覚する”という気持ちが沸き起こる……。お互いがそれぞれを気にし始める心理描写でグイグイと読ませる。絵柄もキレイなので、ボーイズラブを読んだことがない方にもおすすめの作品。果たして2人の“テンカウント”が済んだときに何が起こるのか?

それでも、やさしい恋をする

『それでも、やさしい恋をする』ヨネダコウ(大洋図書)

ボーイズラブ界を揺るがせたという噂の、ヨネダコウデビュー作『どうしても触れたくない』のスピンオフ作品『それでも、やさしい恋をする』。ゲイの出口晴海は打算的に男を物色している。しかし今回好きになってしまったのは、年下の飲み仲間でノンケの小野田良。しかしそのノンケのはずの小野田が共通の知り合いである、ゲイという噂の嶋俊亜紀に恋してしまう……。しかし3年後、ついに出口は小野田に告白することになる……。前作で名脇役だった小野田を中心にしたラブストーリーは、大した山場もなく、いわゆる普通のサラリーマンの仕事とともに淡々と展開が進んでいく。『どうしても触れたくない』のエピソードを交えつつ、交差するように時系列が進んでいくが、戸惑いなく読み進めることができる。ラブシーンも随所に登場するものの、ストレートな読者が読んでも読後感は悪くないだろう。あくまでも日常を淡々と描く、そんな作者の手腕によるところが大きいのかもしれない。先の展開も必ず気になる秀作。

やじるし

『やじるし』はらだ(リブレ出版)

下衆、屑、変態、ドM、鬼畜、社畜、ラブコメ、切ない系などボーイズラブ界の鬼才と称される“はらだ”ワールド全開の短編集『やじるし』。新歓コンパで慣れない飲み会と酒に圧倒されていた名もないゲイと、彼に声をかけてくれた見るからに好青年だが同級生を装った名もないクズ男の物語「やじるし」。幼いころの事故がトラウマとなり倒錯した世界に入るこむシュンとユウマの物語「ひきずる音」。愛情に飢えているかわいそうな子とそれと見つけ襲う変態教師の物語「歪みはじめ」。残業中ゲイビデオを見ているところを見知らぬ男に発見されてしまうお笑いお化け系「れいの男」など……そのどれもがあまりにも倒錯しており、時にカジュアルに時にハードに展開する性描写も“鬼才”著者の持ち味。一度はまり込んだら抜け出せない、王道のボーイズラブをさまざまな“ジャンル”で楽しめる作品といってよさそうだ。

1位は桜日梯子の『抱かれたい男1位に脅されています。』、2位に雨宮かようの『ハジメくんとふたりのえっちな先輩のとろとろラブ』、3、5位はスカーレット・ベリ子の両作品などがランクインしている。なお4月のボーイズラブ漫画ランキングは以下の通り。

順位 作品タイトル 著者/原作者名
1位 抱かれたい男1位に脅されています。 桜日梯子
2位 ハジメくんとふたりのえっちな先輩のとろとろラブ 雨宮かよう
3位 四代目・大和辰之 スカーレット・ベリ子
4位 テンカウント 宝井理人
5位 女王と仕立て屋 スカーレット・ベリ子
6位 ブルースカイコンプレックス 市川けい
7位 トモダチ以上のこと、シたい。 倉橋トモ
8位 彼の両性具有独占欲 カノンチヒロ
9位 花ヶ谷営業所のカレ 天禅桃子
10位 子寮の肉奴隷-鬼畜に飼われた3年間 菊の助 uroco

文:大口八太郎