「山登りがしたい! 」と思った時が登り時。都心から行きやすくて初心者でも楽しめる山は意外とたくさんあるもの。今回はその中から、初心者も、ひとつふたつ登ったことがある人も満足できる山を紹介しよう。それぞれに山登りだけじゃなく、もう一歩踏み込んだ楽しみがあるものばかりだ。
超メジャーながら楽しみ方はいろいろな山
初心者向けの山と問われれば、誰もが最初に口にするのは「高尾山(たかおさん)」(東京都八王子市)。新宿駅から47分、駅から登山口までも徒歩5分というアクセスの良さで、しかも夏にはビアガーデンも開かれるという、かなり身近な雰囲気の漂う山だ。登山ルートはいくつもあるため、体力や見たい景色に合わせて選んでみよう。気軽に自然を楽しみたい場合にはケーブルカーを使って中腹まで登ることもできる。
しかしそれでは登山の虫が治まらない、という人には山頂から尾根伝いに歩く「縦走(じゅうそう)」はいかがだろうか。高尾山山頂から西の陣馬山まで、パノラマの景色を眺めつつの山歩きを楽しめる。全て歩くと18.5km、標準で約5時間半かかるが、途中で下山できるルートもあるため、体力に合わせてプランを立ててみてもいいだろう。
また、宿泊と合わせて登山とアウトドアを楽しみたい場合には、高尾山山頂まで徒歩1時間の位置にある「日影沢キャンプ場」にテントを張ってみてはいかがだろう。予約制だが場所代無料で利用することができる。
古からの信仰の山で自然を満喫
日本三御嶽として知られる「御岳山(みたけさん)」(東京都青梅市)も人気の高い山のひとつだ。標高は929mながら、831m地点まで登ることのできるケーブルカーが運行している。山頂には長い歴史を持つ御嶽神社、それまでの道のりには推定樹齢1200年の神代のケヤキがあり、元旦には初日の出も見ることができるというから、古くから信仰を集めている山なのもうなずける。
山頂まで行ったら少し足を伸ばして、東京とは思えないような大自然を堪能したい。苔むした奇岩と渓流の広がるロックガーデンや、いくつもの滝は幻想的だ。さらに霊場を味わうには、宿坊に宿泊してみるのもいいだろう。宿坊によっては滝行を体験できるところもある。
低山ながら秘境感満載
絶景と人間の造り出した遺跡を同時に楽しみたいなら「鋸山(のこぎりやま)」(千葉県安房郡)はいかがだろう。標高329mと低い山で初心者でも登りやすいが、ほかの山にはない見どころが満載だ。
江戸時代より石材を採る石切り場であったために、削られた高い絶壁や洞窟があり、崖に掘られた巨大な仏像などの遺跡も残されている。洞窟に入るなら懐中電灯の用意を。また、中腹の飛び出した崖から下をのぞく「地獄のぞき」はスリル満点だ。頂上から見渡す海は美しく、低山であることなど忘れてしまうに違いない。
1000m超え&登山後の温泉も格別!
1,000m超えの山に挑戦したいのなら、「金時山(きんときやま)」(神奈川県箱根町)がオススメ。標高1,213mながら茶屋やトイレなどの設備があり、初心者にも最適。頂上からのぞむ富士山は絶景である。麓へ下りたら箱根の温泉でゆっくり疲れを落とそう。もう少し挑戦したい場合には山頂から明神ヶ岳や乙女峠などの縦走も可能だ。ちなみに、金時山の金時とは「まさかり担いだ金太郎」のこと。この山で山姥に育てられていたという伝説があるそうだ。
ただし、5月6日に気象庁が箱根町大涌谷園地付近(噴煙地)に火口周辺警報(噴火レベル2、火口周辺規制)を発表している。火口周辺警報(レベル2)が出ているのは、大涌谷噴煙地を中心とした半径約300mの範囲内で、大涌谷を通るロープウェイやそこへつながる道路及びハイキングコースの通行止めを行っている。
箱根に「箱根山」という名称の山は存在せず、箱根内輪山(早雲山、神山、駒ヶ岳等)と箱根外輪山(金時山、明星ヶ岳、大観山等)の総称として使われている。現状、火口周辺(半径300m)以外は通常の生活ができているが、観光で訪れる場合も町や関係機関からの関連情報に十分留意が必要となる。
いずれも初心者でも登れる山ではあるものの、やはり山は山。靴や服装、補給食や水分、もしもの時の救急用具やゴミ袋の用意など、誰もが山登りを安全に楽しめるよう、しっかりと供えておきたい。また、睡眠不足や飲酒は身体への負担が大きいため、万全の体調で楽しむ余裕をお忘れなく。
筆者プロフィール: 木口 マリ
執筆、編集、翻訳も手がけるフォトグラファー。旅に出る度になぜかいろいろな国の友人が増え、街を歩けばお年寄りが寄ってくる体質を持つ。現在は旅・街・いきものを中心として活動。自身のがん治療体験を時にマジメに、時にユーモラスに綴ったブログ「ハッピーな療養生活のススメ」も絶賛公開中。