5月29日に発表されるGDP改定値、「マイナス成長」になる可能性高まる
米国の1-3月期の実質GDP成長率は、速報ベースで前期比年率+0.2%にとどまった。ほぼ「ゼロ成長」だ。その後に発表された3月の貿易赤字は514億ドルと、2月の354億ドルから急増した。港湾ストによって滞留していた輸入がスト終了ととともに計上されたことが大きかったようだ。
冒頭のGDP速報値は、未発表だった3月分の貿易収支の推計値が代入されており、ここまで赤字が膨らむとは想定されていなかった。別の言い方をすると、5月29日に発表されるGDP改定値は、実際の貿易収支が反映される結果として、「マイナス成長」になる可能性が高まっている。
すでに発表された経済指標は「まだら模様」
昨年1-3月期も、寒波の影響などから実質GDP成長率はマイナスだった(前期比年率-2.1%)。しかし、その後、4-6月期は同+4.6%、7-9月期は同+5.0%と顕著な回復をみせた。果たして今年はどうか。4月以降の経済指標はまだそれほど明らかになっていないが、すでに発表されたものをみると、「まだら模様」だ。
消費者信頼感指数をみると、ミシガン大学のものが2007年以降で2番目の高水準となる一方で、コンファレンスボードのものは4か月ぶりの水準に低下した。ISM製造業景況指数は3月から横ばいだった。昨年10月以降の下落基調に歯止めはかかったものの、2013年5月以来の低水準にとどまった。一方でISM非製造業景況指数は上昇し、5か月ぶりの高水準となった。
ISM指数を素直に解釈すれば、寒波や港湾ストなど年初の一時的な要因がはく落して、景気に上向きの力が加わった。ただし、昨夏以降のドル高や、原油安を背景とした設備投資の減少は、製造業部門にとって大きな下押し圧力となり続けている、といったところか。
製造業部門と非製造業部門の就業者数の比率はおよそ1対9と、後者が圧倒的に多い。そこで、この比率を用いて、ISM製造業指数と同非製造業指数を加重平均して、景気統合指数を作成した。当然のことながら、景気統合指数は非製造業指数に近い形状となり、4月には昨年11月以来の水準に上昇した。
今後発表される4月以降の経済指標は明るいものが増え、景気の回復基調が明確になるとみている。ただ、実際の指標で確認されなければ、確信は持てない。とりわけ、非製造業部門を中心に雇用は勢いを増すか、最近の賃上げの事例が示すように賃金上昇率は高まるか、ガソリン価格が上昇に転じるなかで、個人消費や小売売上高に悪影響は出ないか、それらがチェックポイントとなりそうだ。
執筆者プロフィール : 西田 明弘(にしだ あきひろ)
マネースクウェア・ジャパン 市場調査部 チーフ・アナリスト。1984年、日興リサーチセンターに入社。米ブルッキングス研究所客員研究員などを経て、三菱UFJモルガン・スタンレー証券入社。チーフエコノミスト、シニア債券ストラテジストとして高い評価を得る。2012年9月、マネースクウェア・ジャパン(M2J)入社。市場調査部チーフ・アナリストに就任。現在、M2JのWEBサイトで「市場調査部レポート」、「市場調査部エクスプレス」、「今月の特集」など多数のレポートを配信する他、TV・雑誌など様々なメディアに出演し、活躍中。