米Intelは5日(現地時間)、"Haswell-EX"の開発コード名で知られていたIntel Xeon E7-8800 v3シリーズおよび、Intel Xeon E7-4800 v3シリーズを発表した。前世代からコア数やLLCが増加し、パフォーマンスが向上したほか、Intel TSXをサポートした。

「Xeon E7 v3」ファミリ

「Xeon E7 v3」ファミリは、ミッションクリティカルな基幹業務に加え、インメモリデータベースやビックデータ分析といった分析ソリューション、仮想化といったワークロードに向けた製品。

「Xeon E7 v3」ファミリのターゲットとなる領域やユーセージ

今回発表されたラインナップはIntel Xeon E7-8800 v3シリーズが8モデル、Intel Xeon E7-4800 v3シリーズが4モデル。一部を除いて16コア/18コアがIntel Xeon E7-8800 v3シリーズ、8コア/10コア/12コア/14コアがIntel Xeon E7-4800 v3シリーズとなっている。

「Xeon E7 v3」ファミリ。3種類のグレード分けに加えて、特定の領域に最適化されたモデルも用意する

アーキテクチャがHaswellベースとなり、前世代の「Ivy Bridge-EX」から、IPCが向上したほか、コア数とスレッド数が最大15コア/30スレッドから最大18コア/36スレッドに、LLCが最大37.5MBから最大40MBに増加している。

「Xeon E7 v3」ファミリの概要

前世代の「Ivy Bridge-EX」からスペック面で強化されたポイント

こちらは機能面での強化ポイント

基本的な内部構造は、2014年9月発表の"Haswell-EP"こと「Xeon E5-2600 v3」ファミリと大きな違いはなく、2重のリングバスや統合電圧レギュレータ(iVR:Integrated Voltage Regulator)による電力管理、DDR4メモリサポート、仮想化機能の実装などが行われている。

リングバスの構造はHaswell-EPと同じ

コアの特徴としては従来のHaswellベース製品とほぼ変わらないが、これまで無効化されていたTSXがようやくサポートされた点に注目したい

「Xeon E7 v3」ファミリはトランザクションメモリ命令「Intel TSX」(TSX:Transactional Syncronized Extentions)をサポート。TSXはもともとHaswell世代のCPUで実装されていたが、問題が見つかっており、Haswell-EPでは「実装はしているものの、無効化」という状態だった。その後、2015年3月にBroadwellベースのサーバ向けSoC「Xeon D」シリーズで命令の追加が発表された。

TSXの詳細については、Hisa Ando氏の記事大原雄介氏の記事を参照してもらいたいが、トランザクショナルメモリをハードウェアで実装し、メモリロック処理のオーバーヘッドを解消し、マルチプロセッサ/マルチスレッドでの処理を高速化する。

TSXではHLE(Hardware Lock Elision)とRTM(Restricted Transaction Memory)の2種類が用意され、HLEはレガシーのXACQUIRE/XRELEASEプリフィクスを使用し、既存のコードをベースとして利用できる。一方、RTMはXBEGIN/XEND/XABORTという新しい命令を使用する。

TSXではHLE(Hardware Lock Elision)とRTM(Restricted Transaction Memory)の2種類が用意され、HLEは既存のコードをベースに、RTMでは新命令を使う

Intelによると、SAPのインメモリデータベース「HANA」とIntel TSXを組み合わせたところ、前世代のIntel Xeon E7-4890 v2と比較して、5.9倍のパフォーマンス向上が実現できたという。

また、最大メモリ容量は1ソケット当たり最大24個の64GB DIMMに対応し、4ソケットのシステムでは最大6TB、8ソケットのシステムでは最大12TBと前世代から変わらない。しかし、メモリインタフェースSMI Gen2(Scalable Memory Interface)の転送速度が前世第の2,667MT/sから3,200MT/sに向上した。さらにメモリコントローラに接続されるメモリバッファの世代も新しくなった。パフォーマンスモードでは最大1600MHz、ロックステップモードでは1866MHz(いずれもDDR4メモリ、DDR3メモリはどちらのモードでも最大1600MHz)で動作する。

メモリ周りの強化もポイントの1つだ

「Xeon E7 v3」ファミリでは、ダウンタイムが発生する頻度、エラーによる損失を抑える「Run Sureテクノロジ」を強化し、システムRAS機能およびメモリRAS機能をはじめとする新機能の追加を行っている。

「Run Sureテクノロジ」の拡張も行われている

システムRAS機能「エンハンスドMCA Gen2」では、OSに対するエラーリポート前にファームウェアでエラーを受けるという流れは従来と変わらないが、ファームウェアで記録できるエラーログを拡張し、より詳細な解析を行うことが可能となったという。メモリRAS機能「アドレス・レンジ・メモリー・ミラーリング」では、メモリの特定領域だけをミラーリングでき、さらに粒度の細かいメモリミラーリングを提供する。

「エンハンスドMCA Gen2」。Ivy Bridge-EXで搭載されていた機能の強化版で、エラーログ機能を拡張している

「アドレス・レンジ・メモリー・ミラーリング」では、障害があった際にシステムダウンにつながるような重要な部分だけをミラーリングするということもできるという

このほか、複数のランク・スペアリングやDDR4コマンド/アドレス・パリティ・エラー・リカバリーといった機能も備える。

複数のランク・スペアリング

DDR4コマンド/アドレス・パリティ・エラー・リカバリー