演劇から始まり、美術、写真、ビデオと根っからのアーティストであるタニア・スミスさんは、オーストラリアのメルボルン在住。アーティストとしての創造性だけでなく、美術への深い造詣が認められ、メルボルンで催されるアートイベントを取り仕切るアート担当官も務めています。草間彌生や横尾忠則が大好きで、日本の“板子”と呼ばれる、その昔、日本でサーフボードのように波乗りに使われていた板でサーフィンもする、日本好きの一面も。天職だというアートで仕事ができる幸せを感じながら、日々働いています。
■これまでのキャリアの経緯は?
大学では演技と演劇を学びました。その後、自分で劇団を立ち上げる一方で、大学でアートを教えることに。それから7年所属した劇団を辞めて、もう一度大学にもどって美術を勉強しなおして、去年、卒業しました。5年前からは自分の作品をギャラリーで発表するようにもなりました。
■現在のお給料は以前のお給料と比べてどうですか?
収入はオーストラリアの標準よりは低く、3万5,000豪ドル(約325万円)くらいです。オーストラリアの中でも大都市のメルボルンでは、家賃と生活費を払ってトントン。ちなみにオーストラリアの平均年収は6万豪ドル(約558万円)です。
■今の仕事で気に入っているところ、満足を感じる瞬間は?
今の仕事は天職! 私の作品は有名でもないし、売れているわけでもないけれど、アイデアを求めながら、大切な人たちのために面白いものを作ることがとても楽しいんです。アート担当官の仕事も、メルボルンでのアーティストとしての経験と知識が認められてオファーされました。
写真を撮ること、動画を撮ること、アートを通じて世界の新しいことを知るのが好きでたまりません。アート担当官をしていると、他のアーティストとも仕事もできます。アーティストたちが素晴らしい展覧会を開き、キャリアアップするのを手伝えるのも嬉しいですね。
■逆に今の仕事で大変なこと、嫌な点は?
アーティストが大変な点はお金と時間に追われること…きっと皆さん、わかってくれるはず!
■ちなみに、今日のお昼ごはんは?
今日はおいしいニョッキを食べました。私はベジタリアンなので(肉も魚も食べません)、ときどきこうしたパスタ料理を少しだけランチに食べます。量を抑えておかないと、夕食が食べられません。この辺はおいしいイタリア家庭料理のお店がいっぱいあるんです。
■日本人のイメージは? あるいは、理解し難いところなどありますか?
パートナーが日本人なので、日本のことは結構知っているし、数年に一度は日本に行っています。日本人はかなり働き者ですよね。それに一緒に仕事をしている日本人のアーティスト達はテクニックにこだわりがあり、ディテールにとても気を配ります。オーストラリアのアーティストは自分の思いを伝えるものだというのに、ちょっと手を抜いたり、ディテールにそれほどこだわらないこともあります。もちろん私もその類! 日本を旅行するのも、日本のものも大好きです。美しい生地やデザイン。アーティストなら、草間彌生、大竹伸朗、横尾忠則。それから、今ではダンスパフォーマーとして知られる須藤元気の大ファンです!
■最近、気になる日本のニュースはありましたか?
東北の地震と津波はオーストラリアでも大きく報じられて、津波のあった夜、パートナーの家族が住む徳島でも津波警報が出たのを覚えています。今も東北の復興に関するニュースを見ますが、そこで仮設住宅に住み、必死に仕事を探そうとしている人たちを見るたびに胸が痛いです。
アベノミクスについてもよく聞きますね。日中間での領土を巡った緊張関係についても。両国がもっとうまく外交術を発揮できるといいなと思います。
■休日の過ごし方を教えてください。
週末はギャラリーに行ったり、音楽を聴いたりしています。メルボルンではいいライブがたくさん見られるので、よく地元のバンドを観に行き、音楽にあわせて踊るのも好きです。暖かくなったら、ビーチに行きます。義理の弟が「板子」という昔ながらの日本のサーフボードを作っているので、それでサーフィンをするんです。
■将来の仕事や生活の展望は?
作品を作りながら、クリエイティブで自分を表現できる人生で、とても幸せ。これからもアートを生みだし続け、ずっと健康で、できるだけ旅ができればいいなと思います。もちろん、定期的に日本にも行きたい! 日本に行くと、「ただいま」という気分になるんです。