「サンミー」と聞いてそれがパンだと分かる人は関西育ちである可能性が高い。大人も子どももみんな大好きなこのご当地パンは、発売44年を誇るロングセラーなのだ。
チョコのラインにもこだわりが
サンミーが発売されたのは昭和46年(1971)のこと。「当時、パンといえば食パンを中心に、あんパン、クリームパンのような素材を包んだものや、クロワッサンのような油脂を含んだデニッシュが主流でした。そこで、『お菓子のように気軽に食べられるデニッシュを作れないだろうか』と開発したのがこの商品です」。
教えてくれたのは、サンミーの製造元である「神戸屋」経営企画室の藤田容さんだ。藤田さんによると、サンミーはその歴史の長さゆえ、「学生の時によく食べていた」という中高年ファンも多く、年々ファン層を拡大しつつあるのだという。
商品表面には手描きのようなチョコのラインが流れるが、このラインは実は不均等。「焼き上がったパンを生産ライン上でそろえずバラバラに流して、雨のように流れるチョコを機械的に左右に揺らすことで不ぞろいに仕上げているんです」。理由は、全く同じ柄になると、店頭に並べた時に画一的に見えてボリューム感が出ないから。なんともユニークだ。
郷土愛が詰まった「ヨンミー」も
ちなみに、このこだわりの線書きチョコ、ビスケット生地、そして間に挟んだクリームの3つの味を同時に味わえるため、「3つの味」を意味する「サンミー」のネーミングなのだが、サンミーと並ぶ人気を誇る「ヨンミー」なる商品もある。
ヨンミーは季節ごとに異なる様々な素材を使い、次々と新商品を発売しているため、新しい味の登場を心待ちにしているファンも多い。
2014年には、1月~2月末に和歌山県産温州みかん、3月~4月末に奈良県産あすかルビーいちご、5月~6月末に宇治抹茶、7月~8月末に滋賀県産草津メロン、9月~10月末に淡路島牛乳&キャラメル、11月~12月末に大阪ぶどうのヨンミーが発売された。そして2015年には、1月~2月末に有田みかん、3月~4月末に奈良県産あすかルビーのヨンミーが発売されている。
現在発売中のものは「ヨンミー(京都府産宇治抹茶)」であるが、お気づきの通り、全ての素材が近畿のものである。「サンミーは近畿で愛され、育てていただいた商品です。その近畿に恩返ししたいとの想いから、"ヨンミー旅巡り"を展開しているんです」と藤田さん。なんとも郷土愛にあふれた商品である。
「神戸屋は素材のおいしさを引き出すことにこだわり、大手製パンメーカーで初めて、製品の全品種を無漂白小麦粉に切り替え、臭素酸カリウムの自主全面使用禁止、イーストフードと乳化剤の添加物を生産ラインから排除したメーカーなんです。現在では、食パンに関しては全品無添加を実現しています」(藤田さん)。
こだわりの製法で作るパンでファンに笑顔を与え続けている神戸屋。直営店のフレッシュベーカリー神戸屋では、毎年5月から7月の3カ月限定で発売している「とろけるマンゴー」(270円)などの人気パンも販売中なので、サンミー、ヨンミーと合わせてチェックすべし!
※記事中の価格・情報は2015年4月取材時のもの。価格は税別