――クリスタにしてから便利になった、効率化された部分は?

まず、動作に関してですが、「コミスタ」では重かった処理のいくつかが感動的に速くなりました。特に「,」(次のページ)、「.」(前のページ)と、ショートカットでページを切り替えていくのが段違いに速くなったんですよ!

今までは制作も後半に差し掛かってくると、1ページ1ページが重くて切り替えにかなり待ち時間があったのですが、読み直しながら制作を進められるくらいの速さになり、とても助かっています。「コミスタ」が32bitOS向けでメモリーが最大2GBまでしか認識できなかったのに対して、「クリスタ」は64bitOSに対応しているので、搭載メモリーを全力で使える恩恵が出ているんだと思います。

また、ツールに関しては便利になったことがたくさんあります!

カラー/モノクロページの混在管理

「コミスタ」と「イラスタ」が統合されたことで、カラーページの管理が可能になりました! 漫画の中にカラーページがあってもそのまま完成までもっていけますし、ファイルが分散せず一元管理できるようになりました。これは僕の中でとても大きな出来事でした。

平尾氏が作画を手がける「放課後カタストロフィ」第一話。冒頭4Pがカラーでその後はモノクロ原稿だが、カラー/モノクロ原稿を混在させておくことができるので、全てクリスタだけで仕上げることができたという

「放課後カタストロフィ」の単行本作業。カバーや中扉のイラスト、書き下ろし漫画やラフがひとまとめに管理されている

この機能は何も漫画に限ったものではなく、プロジェクト単位でのイラスト制作にも最適です。差分を作ったり、過去の絵から持ってきて改良したりするのに、フォルダやファイル単位であれこれするより、コピペがしやすいのです。

ここからは、機能ごとにコメントしていきます。

ベクターレイヤー

ベクターレイヤーが、ペンだけでなく、どんな筆でも使えるようになりました。ベクターレイヤー特有の交点削除が油彩や水彩のブラシでも使えて、これはちょっと驚きです。

「囲って塗る」

「コミスタ」では「閉領域フィル」という名前でしたが、名前が変わって使いやすくなりました。ツールでスッと囲んでやると、閉じたエリアだけが一発で塗られます。使いこなせばキャラの色マスクを作るときなどに大活躍です。

2値トーンの切り替え

2値トーンが、レイヤーのプロパティの1ボタンで切り替えられるようになりました! トーンにしたり、戻したりを気軽に高速で切り替えられるので、とても便利になりました。特殊な柄のトーン以外は全てこれでまかなえるようになったので、仕上げの速度が上がりましたね。

交点削除

囲って塗る

2値トーンの切り替えは「ポンポン切り替えられて気持ちいいです」と平尾氏

平尾氏が「最大に便利」と語る"共同作業"機能

これはアシスタントさんをお願いしている漫画家さんにはぜひ試してもらいたい機能です。ファイルを直接やりとりすることなく、複数人でガンガン漫画を作っていけます。在宅ワークが主体ならDropboxの共有フォルダ上で作業すれば、万が一データが壊れても、Dropboxの機能ですぐに復帰ができるので、安心です。

共同作業中の画面(例)。各自が自宅にいながら、「クリスタ」のみで作業を進めることができる

平尾氏が「共同作業」ファイルを作るときの設定を公開。クラウドを経由するので、同期にラグがあっても上書きされないように設定。DropboxとSkypeを使い、参加するスタッフ全員が在宅で作業しているという

「共同作業」機能については現在はページ単位での同時作業ですが、将来的にはレイヤーフォルダー単位で同時作業ができれば最高だなー、と夢見ていたりします。ということで、皆さんにはどんどん使っていただいて、セルシスさんにはぜひご検討いただきたく…!応援しています!