セルシスが販売終了する2製品の後継として展開している「CLIP STUDIO PAINT」シリーズのうち、漫画制作機能をカバーしているコミスタの後継製品は「CLIP STUDIO PAINT EX」

セルシスの漫画制作ソフト「ComicStudio」(以下、コミスタ)が、2015年6月末をもって販売終了となることが発表された。デジタル漫画制作の定番となっていたソフトにひとつの区切りが示されたことで、今後の制作環境を見なおすクリエイターは多いのではないだろうか。

この報せを受け、SNSを中心にクリエイターたちの情報交換はさかんに行われているが、特に「コミスタ」から、漫画制作が可能な後継ソフト「CLIP STUDIO PAINT EX」(以下、クリスタ)へ移行することに対する不安は大きい。

そこで本稿では、元「コミスタ」使いで、今現在は「クリスタ」に完全移行している漫画家・平尾リョウ氏にインタビューを実施。クリスタ導入で便利になった部分や、コミスタ時代に戻してほしいことなど現場の率直な意見を、単行本化間近の最新作「放課後カタストロフィ」の制作の様子を交えて聞いていった。

平尾リョウ
香川県出身。ゲーム会社でキャラクターデザインや演出を担当後、独立。漫画連載の他、イラスト、キャラクターデザインなど多方面で活動中。漫画作品に「放課後カタストロフィ」、「4じてん。」。キャラクターデザインとして3DS「レジェンドオブレガシー」、マイナビニュース/マイナビ賃貸マスコットキャラクター「マイナビベア」、ゲームマーケット公式キャラクター「チップ、コロ、バン」など。うどん好き。三ツ矢サイダー好き。

――漫画制作の環境をコミスタからクリスタへ完全に移行済みとのことですが、おおよその移行時期を教えてください。

「CLIP STUDIO PAINT」は前身の「CLIP PAINT」の頃から期待してイラスト仕事等に試用していたのですが、漫画制作のメインはずっと「Comic Studio EX」でした。

完全に移行したのは、(コミスタと)同等の「ページ管理」機能がついた「CLIP STUDIO PAINT EX」がリリースされた2012年の暮れからになります。

ページ管理機能のスクリーンショット。EXには複数ページにわたって漫画を描く機能が実装されている

――コミスタから移行されるとき、一番「違い」を感じた部分はどのあたりですか?

インタフェースのスクリーンショット。パレットは個別に配置&ドッキング可能

まずは見た目ですよね。「ComicStudio」からだと初期状態のインタフェースがかなり違うのでビックリしてしまうかもしれません。イラストに特化した「IllustStudio」というソフトから引き継いだインタフェースが多いのでそう感じるのですが、実は相当にカスタムできて、「ComicStudio」に近い見た目にも出来ますのでご安心を!

もうひとつの違いは起動時の画面です。最初に「CLIP STUDIO」という、ソフトというか、ウィンドウを一度経由して立ち上げることになるので、その概念に慣れるまでは起動までのクリック数が増えて、ちょっとわずらわしいなと思っちゃってました。(ごめんなさい!)

『"「CLIP STUDIO」という統合ソフト"の中にある"「PAINT」というソフト"を立ち上げているんだ』、ということだと思うのですが、なんだか混乱しやすいですよね…。とはいえ、今は慣れてしまったので特に起動は気にならなくなりました。この画面での素材の検索やインストールも便利に使わせてもらっています。

起動時。この画面を経由して「CLIP STUDIO PAINT」を立ち上げる

移行にあたって感じる最初の「違い」という意味では、たしかに躊躇した所も多かったのですが、いつまでも「違い」を気にして行動しないのももったいないので、あるとき思い切って、いきなり仕事に実戦投入したんですね。逃げられなくして、無理やり自分に覚えさせました。やってみればなんとかなるもので…締め切りがあると頑張れます…!

――なるほど、実戦投入して体に覚えさせたという感じなんですね。少し話は変わりますが、現状、「クリスタ」を「クリスタ」として使っているか、「クリスタ」を「コミスタ」風にカスタムして使っているか、感覚としてはどちらが近いですか?

やっぱり「コミスタ」が長かったので、「コミスタ」風にして使っていると思います。