4月28日、NTTドコモの2014年度決算発表が行われたのは既報のとおりだが、発表会の質疑応答では5月にスタートするSIMロック解除についての質問が集中した。
5月にスタートするSIMロック解除の義務化については、これまでドコモは総務省のガイドラインに従って取り組んできたが、年間11~12万件程度の利用があったという。利用者の多くは海外で、現地のSIMを使いたいという声であり、こうしたユーザーが今後どれだけ上積みがあるかは未知数だという。もともとMVNOについては大半がドコモ回線であり、SIMロック解除しなくとも使えたわけで、SIMロック解除が義務付けられてもユーザーの利用シーンは変わらないだろうという見方だ。
一方で、一部のユーザーではあるが、端末を不正に入手してSIMロックを解除して転売するといった悪意のある行為があり、こうした不正を防止したいという観点から、5月からは6ヶ月のSIMロック解除できない期間を設けたという。こうした不正利用の数について具体的な数字は出てこなかったが、少なくともドコモが問題視する程度の規模になっていたことは予想される。
しかし、新ルールのもとでは、機種変して半年以内は海外で使いたくともSIMロックが解除できないことになり、ユーザーが不利益を被ることになる。こうした指摘に対しては、対応を検討すると加藤社長が述べたが、半年ルール自体も社内で十分検討して導入されたはずだという厳しい指摘が飛ぶと、取締役常務執行役員兼経営企画部長の阿佐美弘恭氏が「社長の発言は『様子を見たい』という意味だ」と助け舟を出し、社内でも期間や料金等、十分検討した上での結論だと説明。その上で、お客様の声も聞きながら考えていくとした。
SIMロック解除については、ドコモ側の説明とは裏腹に、料金や期間でauと足並みをそろえてきたあたりに、ユーザーの利便性を考えた議論が十分行われてきたとはにわかに信じがたいものを感じる。一部の転売ユーザーに問題があるのであれば、同一ユーザーが解除できる期間や回数を制限するなど(抜け道は色々とありそうではあるが)対策はほかにも取りようがあるわけで、結局のところはユーザーに自由を与えず、しかしとりあえず反応を見てみる、といった消極的な理由が第一にあるように思われる。
一方で、SIMロックが解除されても、画期的にユーザーにとって有利な状況になり、解除するユーザーが爆発的に増えるといったこともないだろう。
海外で利用したいといった正当な理由があるユーザーには、例えばデポジット制でロック解除する(一定期間が終わって手続きすれば再びロックをかける代わりに返金)などの回避策は提供できないのだろうか。一部の不正ユーザーに拘って真っ当なユーザーに負担をかけるのは、下策としか言いようがない。早期の「検討」を期待したい。