シンガポールに12店舗を展開する大手ワインカンパニーでマネージャーとして働くブイアン・ネメク・ダシュゼブクさん。いつかモンゴルに戻ってワインラウンジを開きたいという夢の実現に向けて、現在はワインショップでハードワークをこなしながら、ワインの知識を磨いているブイアンさんに話を聞きました。

ブイアン・ネメク・ダシュゼブクさん/シンガポール在住/33歳/ワイン会社勤務

■これまでのキャリアの経緯は?

18歳の時、モンゴルの縫製工場で働き始めました。母はシングルマザーで病気がちだったので、2人の妹の学費も稼ぐためにも、早くから働かなければならなかったのです。ある時、オフィス街のレストランはお昼時、いつも満員だと気づきました。そこで手作りのハンバーガーをオフィスにデリバリーする仕事を妹と始めました。昼食を食べに行く暇もないほど忙しいビジネスパーソンも多かったので、とても喜ばれました。

いつか自分の店を持ちたいと考え始めた頃、新聞広告で良さそうなカフェが売りに出されているのを見つけ、思い切って買い、モンゴルの食材を使った西洋料理の店を始めました。当初は地元の人が仕事帰りに気軽に立ち寄るようなレストランバーでしたが、次第に外国人のお客様が増えてきました。私は当時英語が話せなかったので会話に困り、シンガポールへ語学留学することにしました。

シンガポールで部屋を借りるために訪れた不動産屋で、私を案内してくれたのが今の夫です。第一印象は全くタイプじゃなかったのですが、優しい人柄にひかれて7年前に結婚。当初は夫の不動産業を手伝っていましたが、将来の夢のためにも大好きなワインに関わる仕事をしたいと考え、3年前にこのワイン会社に就職しました。今はショップのマネージャーとして、ワインの販売やワインイベントのオーガナイズなどをしています。

■現在のお給料は以前のお給料とくらべてどうですか?

夫を手伝って不動産業をしていた時はかなりの額をもらっていましたが、今は一般的な事務職の給料と同じくらいです。この仕事はお金のためでなく、将来の夢を叶えるためにしているので、日々勉強で、とてもやりがいがあります。モンゴルでのレストラン経営や接客の経験を活かせるこの仕事は私にとても向いていると思うし、ボスも私の働きぶりに満足し、先日昇給してくれました。

ワインの販売やテイスティングのほかにも、ワインやチーズのイベント、パーティーのオーガナイズなど、仕事は多岐に渡る。

■今の仕事で気に入っているところ、満足を感じる瞬間は?

多くの人と知り合えることですね。一緒にワインを飲むと、より親しくなれます。ネットワークが広がることで、将来の夢の実現の助けにもなると考えています。また、働きながらワインの知識を身につけられるのは、ありがたいですね。お客様にワインの説明をするのに、豊富な知識が求められるので、勉強は大変です。今、社内のワインの資格のレベル2に向けて勉強中。レベル5になると本場フランスでの研修が待っているので楽しみです。

■逆に今の仕事で大変なこと、嫌な点は?

午前11時から午後11時までと、勤務時間が長いのが一番の悩みです。夜のイベントなども多いので、仕方ないですね。シンガポールで働くモンゴル人の中には、何かにちょっと挑戦しても、すぐに諦めて「やっぱりシンガポールは大変だった」と、帰国する人もいますが、私は学歴もなく、英語も話せない中、必死に努力するしかなくて、ようやくここまできました。時にはつらいこともありますが、夢の実現に向けてさらに頑張っていきたいと思います。

■ちなみに今日の昼ご飯は?

勤務時間が長いので、いつもは夫が昼休みにどこかで食べ物をテイクアウトして、私のお店に持ってきてくれて、一緒に食べます。この日は職場のそばの韓国料理店でポッサムという豚料理を食べました。野菜もたっぷりで、とてもヘルシーでした。

今日のランチは韓国料理。中央にある茹でた豚足の冷製を薬味やキムチなどと一緒に菜っ葉で巻いていただきます。コラーゲンたっぷり!

■日本人のイメージは? あるいは、理解し難いところなどありますか?

顧客には日本人も多いですが、モンゴル人と似ている部分もあって、とても親しみやすいです。よくうちのお店でワインを買って、階下の中華料理店に持ち込む方がいますが、私のおすすめワインを気に入ってくれます。うちには日本の甲州ワインやサントリーのウィスキー「山崎」なども置いていますよ。私はウィスキーより日本酒の方が好きですが。寿司と酒の相性は抜群ですね!

■最近TVやラジオ、新聞などで見た・聞いた日本のニュースは何ですか?

モンゴルでは日本と言えば相撲です。ヨーロッパ人が毎晩テレビでサッカーを観るように、モンゴル人は毎日、日本の相撲中継にくぎ付けです。私も先場所の白鳳の優勝をはじめ、モンゴル人力士の活躍を嬉しく思っています。

■休日の過ごし方を教えてください。

多くのシンガポール人の例にもれず、夫はおいしいものを食べることが何よりも大好き。休日は2人でちょっと高級なレストランへ行くこともあります。料理とワインの相性の勉強にも役立って、一石二鳥です。ワインはほとんど毎日飲みますが、平均すると1日にハーフボトルぐらいでしょうか。仕事柄、減らすのはなかなか難しいですね。

■将来の仕事や生活の展望は?

夢は母国モンゴルにワインのラウンジを開くことです。モンゴルではウォッカの方がメジャーですが、最近は海外旅行をしてワインの魅力にハマる人も増えてきました。5年後になるか、10年後になるのかは分かりませんが、夫がモンゴルに五階建てぐらいの小さなホテルを建てて、そこの一階に私のワインラウンジを作れたらいいねと話しています。まだ子供はいませんが、教育環境はシンガポールの方が優れているので、将来はシンガポールとモンゴルの両方に家を持って、ビジネスと子育てを両立できたら理想的ですね。