インテルは23日、ワイヤレス給電技術に関するイベント「Wireless Charging Forum Japan」を開催した。米IntelがボードメンバーとなっているAlliance for Wireless Power(A4WP)を中心とした内容だが、現在ワイヤレス給電に関わるコンソーシアムの規格すべて(WPC/PMA/A4WP)をサポートした機器の展示もあり、この分野の動向を示したイベントだった。

インテル アジア・パシフィック・ジャパン 営業マーケティング本部 ネットワーク製品マーケティング・マネージャー 梅野光氏

午前中の基調講演ではまず、インテル アジア・パシフィック・ジャパン 営業マーケティング本部 ネットワーク製品マーケティング・マネージャー 梅野光氏が登壇。インテルが掲げる「No Wires」という目標への取り組みを説明した。インテルの「ケーブルレス」への取り組みは2003年のセントリーノ・モバイルテクノロジーから始まったといえる。

当時、有線が当たり前のネットワークケーブルを無線LANによって外し、その後もインテル Wi-Diやインテル ワイヤレス ドッキングによって、ディスプレイケーブル、ドッキングアダプタでもワイヤレス化を果たそうとしている。モバイルPCにおいて「最後のケーブル」が電源というわけだ。

インテルの「No Wires」の歴史。第5世代Intel Core vProによって無線LAN、ワイヤレスディスプレイ、ワイヤレスドッキングステーションまでが実現している

インテルによるエンドユーザーへの意識調査でもWireless Chargingの期待は高く、それに向けた低消費電力の製品に加え、外出先での給電インフラを立ち上げることで市場が促進されるという。現在はモバイルPCにワイヤレス給電を実現した製品がまだ登場していないが、この登場によって最後の一本を除去できるという。

インテルによる意識調査によるとワイヤレスチャージの要求は高い

モバイルPCにおける「No Wires」に残された最後の課題がワイヤレス給電ということになる

A4WP Marketing Vice ChairmanのGraham Robertson氏

次にA4WPのグラハム ロバートソン氏が登壇。冒頭で「ワイヤレス給電のニーズは高まっており機は熟した」と発言。その理由として、市場の中心であるコンシューマーユーザーは、もはや自宅や会社でデバイスを使うだけでなく、例えばコーヒーショップにいるときや歩いていているときでさえもメールやメッセージの送受信を行っている。そのため、バッテリレベルの要求が高くなっている事を挙げた。

また、人々は1台のモバイル端末を持っているのではなく、複数の端末を保有し、それらのバッテリを同時に充電したいという欲求を持っており、コンシューマーエレクトロニクス産業においてもワイヤレス給電は「キラーアプリケーション」になると説明する。

ワイヤレス給電は携帯電話が最初かつ最大の市場だが、タブレットやモバイルPC、そしてウェアラブル機器でも普及すると予測されている

ワイヤレス給電の規格は複数あるが、A4WPの給電規格である「rezence」は、相互運用性やサブワットから数十ワットまでカバーするロードマップを持っており、磁界共鳴方式で複数の機器を同時に安全に給電することができるといった強みがあるという。さらにこちらもワイヤレス給電の規格を推進する団体であるPower Matters Alliance(PMA)との統合に向けて合意したことでさらに優位性を高めるとしている。

現在のワイヤレス給電には3つの標準化団体があるが、A4WPは磁界共鳴の標準化として現在唯一で、電磁誘導方式のPMAとも統合する予定だ

A4WPの4つのベースシステムとその進捗状況。16Wまでのシステム(BSS1.2)に関しては認証中だが、モバイルPCを想定したシステム、ウェアラブル機器を想定したシステムはまだ規格公開に至ってない

メンバー企業は順調に増えており、現在158の企業が加盟しているという

今後のロードマップ。モバイルPCを想定したBSS1.3とウェアラブル機器を想定したBSS1.4が今後公開予定となっている

米Intel インテル エクスペリエンス グループ エコシステム&マーケット デベロップメント担当ディレクター スマティ・ステュワート氏

最後に米Intelのインテル エクスペリエンス グループ エコシステム&マーケット デベロップメント担当ディレクター スマティ・ステュワート氏がインテルが現在注視している3つのユーザーエクスペリエンスのうちのひとつとしてケーブル不要という事を挙げた。

ワイヤレス給電に向けてはA4WPのボードメンバーとして業界を結集しつつ、各種フォームファクターに対応するソリューションを提供。そして、インフラ整備のためのパートナーシップの拡大を目指しているという。

インテルが現在注視しているユーザー・エクスペリエンス。今日は冒頭のケーブル不要に関して説明した

ワイヤレス給電に向けて、業界団体を立ち上げる一方で、フォームファクタに対応するプラットフォーム構築とインフラパートナーを整備する

最後のパートナーシップに関してはマリオットホテルと提携し、ロビーやラウンジ、客室に給電環境を整えている事や、エミレーツ航空との提携によってラウンジやドバイ空港ターミナル、そして機内での給電環境を整えつつあるという。

そのパートナーに関する最近の発表事例。今回はマリオットホテルとエミレーツ航空に関して説明した

その後報道関係者との質疑応答ではPMAとの合併に関する質問があり、A4WPは磁界結合方式には参入せずPMAは磁界共鳴には参入しないことで、お互いの住み分けを図りつつ、共同でロードマップを作成しているという返答した。

また、A4WPの現在アナウンスされている規格は50Wが上限であることに関して、モバイルPCの省電力化を図っていることと、現実の利用環境でフルパワーを使うことは少ないので顕著な問題にはならないと回答。また、インテルのロードマップとしてSkylake(開発コード名)でワイヤレス給電を導入すべく、開発を進めているという。

その後、一般セッションがあり、最後のセッションでFransenlimited technology consultingのBas Fransen氏が今年中にresenceの製品が登場し、来年が磁界共鳴給電の年になるであろうと予測を示した。また、隣の展示会場ではA4WP/PMA/WPC三規格対応の製品やA4WPのチャージャー、モバイルジャケット等の製品サンプルの展示も行われていた。

展示会場から。MediaTekはA4WP/PMA/WPC全対応のレシーバーASIC:MT3188を展示。画像はリファレンスデザインで外周のアンテナがMR(A4WP)、内周がMI(PMA/WPC)用となっている

Legrand社のViciniti Plate。やや湾曲のあるボウルに入れればあまり位置を気にせずチャージ可能だ

店舗等に設備を貸し出して、マーケティング等に活用してもらうビジネスモデルのchargifi。すでに数ヶ国で展開中との事