4月25日12時頃(日本時間同日15時頃)、ネパールの首都カトマンズより北西約80kmを震源とする地震が起きた。米地質調査所(USGS)の発表によると地震の規模はマグニチュード7.8で、同国政府は26日、死者が2,663人に達したと発表。カトマンズでは建物が崩壊するほか地割れも発生するなど、景色も一変した。現在ではカトマンズの国際空港は再開し、インドや中国のほか、日本からも救助隊が現地に向かっている。
(c)Flickr/Mapbox
筆者は地震が起きる2カ月前に、ネパールを訪れていた。通りからはクラクションがけたたましく鳴り響き、車とバイクが入り乱れながら走り抜ける。かと思えば、街のど真ん中に野生の猿も姿を現すなど、言ってみれば混沌としている中で人々は規則的な生活をしている、という印象を受けた。しかし、そんな日常の風景すら、今はもうない。深い哀悼の意を表し、在りし日の美しいカトマンズの風景をお伝えしたい。
常時でも電気や水が不足
この4月17日より計画停電時間が週59時間から週47時間へと短縮されたが、それでも地域別に時間帯を変えて、1日6~7時間程度の停電となる。なお、飲食店や高級ホテルなどでは自家発電で対応しているため、計画停電中でも電気がまかなわれている。
また、ネパールにおいては水も切迫しているため、家庭によっては割高になるものの、給水車を呼んで水を購入している。日本人からすると電気も水も足りないと思うと不安で仕方がないだろうが、「ネパールの人々はどこかおおらかな気持ちで生活を送っている」と、ネパール在住の日本人女性は教えてくれた。
しかし、これらは常時のネパールでのことだ。CNNによると、現地では食料や水が不足しているほか、停電が断続的に続いているという。
カトマンズが世界に誇る世界遺産
カトマンズには「カトマンズの谷」と呼ばれる国内最大の盆地があり、この一帯は1979年にユネスコより世界遺産(文化遺産)に登録されている。古くから交易・文化の要衝であったほか、ヒンドゥー教と仏教が共存する独特の宗教文化を育んできた。そんな高尚な場所かと思いきや、周囲にはひなたぼっこをしている人々や、すぐ隣では野菜や衣服など日用使いの品々がずらりと並んだ市場が立っているなど、現地の人々にとって日常に馴染んだ場所になっているようだ。
カトマンズの谷内のダルバール広場は旧王宮に面しており、周囲には生き神・クマリが暮らす館や、ヒンドゥー教と仏教が共存する寺院、宗教的な伝統芸術なども多く存在している。これら伝統建築は老朽化が問題視されていた上に今回の地震が発生したため、渓谷内の建物の中には全壊してしまったものもあるようだ。また、ダルバール広場から歩いてすぐのところにあるダラハラの塔は、今回の地震で足場を残して崩壊してしまったという。
ネパール最大のチベット寺院
カトマンズの谷としてともに世界遺産に登録されたネパール最大のチベット仏教の巨大仏塔(ストゥーパ)「ボダナート」は、ダルバール広場から車で15分程度の場所にある。中心にはブッダのお骨(仏舎利)が埋められているそうで、この世界のチベット仏教の中心地に、巡礼に訪れるチベット僧の姿も多く見受けられた。
四方を見渡すブッダの目が描かれた塔の頂からは五色の祈祷旗「タルチョー」が風にあおられ、神秘的な風景を作り出していた。このストゥーパをチベット仏教用具「マニ車」を手に持って時計回りに巡る。ストゥーパの周辺にはお土産屋やカフェなどが立ち並んでおり、チベット僧以外にも、観光客でにぎわう場所となっている。しかし、今回の地震でこのストゥーパにも、亀裂が生じたという。
ネパール情報を発信しているカトマンズ在住者のツイッターには、「被害の大きい場所の写真をツイートしているが、こういうのは部分的で、カトマンズ市内壊滅というわけではないので、心配しないでください」という声もある。
日本政府もネパール政府からの要請を受け、国際緊急援助隊・救助チームを派遣しており、Yahoo! JAPANでは「Yahoo!基金」にて緊急支援募金を実施している。同募金では寄付額と同額をYahoo! JAPANからも寄付する仕組みになっている(Yahoo! JAPANからの寄付金上限は2,000万円)。詳しくはホームページを参照。
※記事中の写真は2015年2月時のもの