「北海道土産だよ! 」と手渡されたものが、「夕張メロンキャラメル」や「北海道十勝バターキャラメル」だったという人はかなり多いはずだ。これらの定番土産は、札幌グルメフーズという会社が手がけている。しかし、「ジンギスカンキャラメル」(140円)や「黒い恋人」(7本入り300円~)という珍土産を展開しているのも同社だ。特にジンギスカンキャラメルは「まずい! 」という呼び声も。そのあたりの事情を同社に聞いてみた。
はじめから「おいしい」と思っていなかった
「ジンギスカンキャラメルは罰ゲームで使われているくらい、おいしくないと言われているキャラメルです。一時期、『笑っていいとも』で紹介されて、ゲストの人たちが『うわーまずい』と口から吐き出したことで、全国的に有名になりました」。
こう語るのは何を隠そう、札幌グルメフーズの長屋俊明社長その人だ。今では爆発的人気を誇るこのキャラメルはその名の通り、北海道名物として知られる羊料理「ジンギスカン」をイメージして作られたもの。ジンギスカンとキャラメル、お世辞にも「おいしそうな組み合わせ」とは言いにくいのだが、この発想にいたるにはどんな経緯があったのだろうか。
箱には「この商品はジンギスカン風味のキャラメルです。」と明記 |
「札幌らしいキャラメルを開発する中で、ジンギスカンのキャラメルを作ってみようと思い至りました。けれど、ジンギスカンのタレというのは、店によって味が違うのが特徴です。ニンニクやショウガなどのバランスもそれぞれで、独自のタレが売りになっています。ですから、特にお手本となるタレはなく『ジンギスカンってこんな味だよね』という感じで作りました。その時、特においしいとも思っていませんでした」。
おいしさよりもジンギスカンの味を忠実に再現する、ここに標準を合わせて開発されたのが、このジンギスカンキャラメルのようだ。とは言え、消費者から「おいしくない」という電話を受けることはないようで、中にはおいしいと感じる人もいるそうだ。その点に関して、「ミルクとかおいしい要素も入っているので」と長屋社長。味については賛否両論のようだが、そのインパクトと話題性から売れ行きは順調だという。
「黒い恋人」はもともとあった!
一方、あの有名な北海道土産「白い恋人」を想起させる「黒い恋人」には、どんな開発経緯があったのだろうか。
「黒い恋人は、香港の土産屋から『白い恋人』と似たような商品がないかと問い合わせがあったことがきっかけで作りました。『白い恋人』は集客力があるものの、香港では販売できない事情があったのです。そこで、JAあさひかわで販売している『黒い恋人』というブランドの黒豆を見つけました。
うちから出している『夕張メロンキャラメル』が全国のデパートで1位の売り上げになっていたこともあり、『黒豆を使った商品を展開すればプラスになるよ』とJAあさひかわを説得して、黒豆6割とチョコ4割を合わせて作ったのが、うちの黒い恋人という商品です」(長屋社長)。
意外にも、「黒い恋人」というネーミングは、すでにJAあさひかわによって使われていた黒豆のことだったのだ。お菓子の黒い恋人には、黒豆を粉末にして炒ったものが入っており、一口食べると黒豆の香ばしさが口に残る。味については好評らしく、「苦労して作っただけあった」と長屋社長は言う。
今から5年前の発売当初、お菓子の黒い恋人の売れ行きは芳しくなかったようだが、新千歳空港に置くようになったのをきっかけに、発売から3年目にして火がついたように売れ始めたという。今では北海道内にあるデパートの半数以上で販売されており、北海道を代表する人気菓子となっている。
さて、気になるのは札幌グルメフーズの次なる新作である。同社は1年に数回、新商品を出しており、この春にも夕張メロン味のチョコをとうもろこしでつくったコーンパフにかけた「夕張メロンとうきびチョコ」を発売するという。他には、パッケージに北海道らしいタンチョウ鶴や鹿などの動物を描いた袋に入ったお菓子や、北海道かぼちゃチョコなるものも予定しているとか。
北海道ならではのネタもおいしさも提供してくれる札幌グルメフーズ、今後の開発にも期待したい。
※記事中の情報・価格は2015年4月取材時のもの。価格は税別