先週、午前帯で『白熱ライブ ビビット』(TBS)、午後帯で『直撃LIVE グッディ!』(フジテレビ)、『ゴゴスマ GO GO Smile!』(CBC)がスタートし、『スッキリ!!』(日本テレビ)も大リニューアルを施すなど、今春は生放送の情報番組に大きな動きがあった。

ネットメディアでは早くも「視聴率惨敗!」「早くも明暗分かれる」などの見出しが躍っているが、ここではみなさんが見る番組を選びやすいように、狙いや差別化のポイントなどをピックアップ。毎日大半の情報番組を見ているテレビ解説者としての立場から、おすすめ番組を探っていく。

真矢ミキ(左)と高橋克実

隠し切れない真矢ミキの主張

まずは新番組『ビビット』。番組のコンセプトは、『サンデー・ジャポン』『アッコにおまかせ!』らを手がけるスタッフが「エンタメ要素の強い番組を作る」というもの。ただ、そもそも両番組は一週間のエンタメニュースを凝縮させたものだけに、「月~金曜の5日間に薄めて放送するだけになるのでは?」と危惧する声もあった。

オープニングの『ビビット トピックス』は芸能ニュースを中心に幅広いネタをギュギュッと詰め込んで、政治や事件はあとまわし。ここに裏番組との差別化が見られる。レギュラー出演者は、月曜の大久保佳代子、火曜のDAIGO、水曜の中田敦彦、木曜の千原ジュニア、金曜のヒロミ、加藤シゲアキら軽いトークが持ち味のメンバーを据えたのはそのためだろう。

元官僚で合コン好きの「ロングフェイス」岸博幸、風俗ライターや不倫報道の過去を持つ元国会議員・田中美絵子などもいるが、トークは終始軽め。「番組に重みを加えるコメントは必要ない」ということか。鋭いコメントや議論が白熱というより井戸端会議という印象が強く、家事や外出準備をしつつの"ながら見"には最適かもしれない。その上で気になるのは、「芸能人が芸能人のニュースを斬れない」こと。スキャンダル系のネタはスルーし、あいまいなコメントで留める、という残念なスタンスになってしまいそうなムードがある。

また、MCの真矢ミキは、言葉を選び自己主張を控えているように見えるが、そのオーラから視聴者は勝手にメッセージ性を感じ取ってしまう。宝塚時代や「UFOを見た」エピソードなどを話していても、舞台出身者ならではの主張の強い発声が耳に残り、浮いてしまうくらい目立つのだ。真矢ならではの立ち位置をどう見つけるか? 着地点の見つけ方に注目が集まるだろう。

一方、日替わりのコーナーは、月曜の「潜入!人だかりMAP」、火曜の「女医100人にアンケート!最強予防法ランキング」、水曜の「噂の沿線ヨダレシピ」、木曜の「ビビット!出入口調査」とタイトルで分かるように裏番組との明確な差別化はない。唯一、名番組『ザ・ベストテン』の演出を踏襲した金曜の「週刊芸能!ビビットベストテン」にスタッフのこだわりと希望を感じた。

現状、情報の詰め込みを優先させているためか、エンタメ色は薄く無難にまとめているイメージが強い。ただ、もし視聴率の低迷が続いたら"平日のサンジャポ"に近い形まで振り切る日が来るのだろうか。現状は顔のアップからはじまるオープニングや、「○○なの」「○○だって」「ほら」という友だち口調も含めて、"真矢ミキから目が離せない番組"になっている。

安藤優子は意外な引きのスタンス

午後帯の新番組『グッディ』は、「ニッポン人が今見たい情報に日本一"寄り添う"ちょっと硬派な、どワイドショー」というコンセプト。安藤優子の「硬派」、高橋克実の「親近感」という両極端な特長を生かしつつ、時に中和させることで視聴者の間口を広げている。

会見やイベントの多い「午後の生放送で速報性を優先させる」スタイルは裏番組の『情報ライブ ミヤネ屋』(読売テレビ)と同じ。特筆すべきは、ニュースを3~4つのポイントで切り取り、DVDのメニュー画面を思わせる表示にしていること。「何が問題なのか? 何が言いたいのか?」がとにかく分かりやすく、そのままtwitterやSNSに書き込めてしまう。

日替わりパネラーは、マキタスポーツ、高橋茂雄、カンニング竹山、川島明、土田晃之の芸人と、政治・教育などの専門家にコンビを組ませるシンプルな形。特色としては芸能ニュース担当に『週刊女性』の芸能記者を起用している(『ミヤネ屋』はスポーツ新聞芸能記者)ことくらいで、MC2人の目線を大切にしているスタンスがうかがえる。実際、高橋は「僕だったら」、安藤は「私はこう思う」というコメントが多く、小倉智昭と菊川怜が中心の『情報プレゼンター とくダネ!』(フジテレビ)に近い。

さらに、高橋が原稿を噛んだり、時間の読みを間違えたりして、安藤から強めのツッコミを受けるのがお約束になっている。"昭和のかかあ天下"を思わせるほのぼのとした関係性は、主婦ウケ狙いなのかもしれないが、このあたりにかつて同枠で放送されていた『知りたがり』『アゲるテレビ』の教訓が生かされている。

メインニュースのあとに、脱力系コーナー「このニュース知ってました?」を据えているのもこの番組の狙い。例えば6日の放送では、「人類初! アントキの猪木の無観客始球式」「大学生の仕送りが激減! 極貧料理の実態」など、報道番組では取り上げないネタで、スタジオに自然な笑い声が飛び交う雰囲気を作っていた。

エンディングコーナー「これがホントの茶の間の声 カッツミーのニッポン人まとめ」でもそのユルさを継続。アンケート調査の中から高橋がネタを選んでボヤくのだが、イラストを交えた演出も含め、やわらかいイメージを大事にしていることがうかがえる。

想像以上に安藤が"引きのスタンス"を取っているため、サラッとまとまりすぎている感もあるが、それこそ戦略の1つであり、宮根誠司の押しが強い「『ミヤネ屋』が肌に合わない」という人は肌に合うかもしれない。今のところ、『ミヤネ屋』は堂々と構えているだけだが、『グッディ』が我慢強く放送を続けていれば、いずれ熾烈(しれつ)なバトルに発展するのではないか。

リニューアルした『スッキリ』

テリー伊藤&杉野真実アナの卒業と、上重聡アナ&岩本乃蒼アナの加入。そして、コメンテーターを2人から4人に倍増させ、セットやBGMを一新した『スッキリ』。上重アナの不正融資疑惑という思わぬスキャンダルに見舞われたが、ここでは気にせずに内容を見ていく。

目を引くのは、オープニングコーナー「まるっとスッキリ」。これまでは8時ちょうどから、あいさつなしでトップニュースを掘り下げていたが、最新ニュースをフラッシュで見せるスタイルに変更。裏番組の『とくダネ』『モーニングバード』と横並びの方法に変えたのは、明らかなテコ入れだ。

その他のコーナーは、アニメ「ふなっしーのふなふなふな日和」が目立つくらいで、大きな変化はなし。やはり大増員したコメンテーターに注目が集まる。その顔ぶれは、月曜に手嶋龍一、杉山愛、高橋真麻、長沼毅、火曜にロバート・キャンベル、はあちゅう、はるな愛、五百田達成、水曜に宮崎哲弥、望月晶子、大沢あかね、犬山紙子、遼河はるひ、川村優希、木曜に坂口孝則、おおたわ史絵、松嶋尚美、宇野常寛、金曜に菊地幸夫、青木愛、武井壮、湯山玲子。

コメンテーターとして実績がある人をメインに据え、"視聴者目線のタレント"が2人、"異色の専門家"が1人の計4人という構成になっている。何と言っても肝は、"異色の専門家"枠であり、生物学者の長沼毅、ブロガーのはあちゅう、コラムニストの犬山紙子、批評家の宇野常寛、著述家の湯山玲子。特に「テレビを見ない」はあちゅう、「空気を読まない」宇野常寛は常に賛否両論を巻き起こす存在であり、そのコメントは生放送ならではの危うさもあって楽しめそうだ。

全体の印象としては、テリー伊藤、勝谷誠彦、ドン小西らベテラン勢が去り、加藤浩次が「急に僕がオッサンに見えるようになった」とボヤいたように、番組が一気に若返った。もともとエンタメやグルメなど女性向けのネタを選ぶ番組だったが、リニューアルでその流れが固まったか。女子会のようなライトな盛り上がりを求める人にはおすすめの番組と言えるだろう。

なぜ情報番組ばかりになった?

現在、日本テレビとフジテレビは、早朝4時台から18時台までほとんど生放送の情報番組を流し、テレビ朝日とTBSも7~8割を占めている。つまり、日中の民放各局は、CSのような"ニュースチャンネル化"していると言っても過言ではない。

「さまざまな番組が見られる」ことがテレビの魅力だったはずなのに、なぜこのような状況になっているのか? その理由は『笑っていいとも!』の終了が象徴するように、日中のテレビ視聴者が減っていることが挙げられる。

さらに、その人たちが流れているのは、ネット動画やソーシャルゲームなどであり、「自分の好きなものを選べる」選択肢の多さでテレビは太刀打ちできない。ゆえに、「気が向いたときしかテレビを見ない」これらの若年層よりも、「安定してリアルタイム視聴が見込める」中高年層狙いで、情報番組が増えているのだ。

しかし当然ながら、扱うネタも映像も変わり映えはしない。裏番組だけでなく、同じ局の番組とも被っているだけに、視聴者に「どれも似たようなもの」「司会者が違うだけ」という印象を与えてしまっているのは確かだ。それは同時に、「視聴者は情報番組をハシゴして見る可能性が低い」ことを意味している。

「朝から夕方まで情報生番組を放送する」という方針は、「テレビ局同士が現状の限られた視聴者を食い合っている」ということに他ならない。ジリ貧にならないために、「新たな視聴者層の開拓をどう行うか?」、それは情報生番組に課せられた"裏テーマ"とも言える。

期待される名物キャラの発掘

ただ、現場のスタッフたちは、「少しでも違いを作ろう」「もっと面白くできないか」と試行錯誤している。その努力が最も見えるのは、独自取材。事件関係者に追跡取材をしたり、スポーツ新聞の芸能スクープを独占インタビューで掘り下げたり、差別化するための材料を集めているのだ。「情報番組を選び、評価するときのポイント」として視聴者のみなさんにおすすめしたい。

もう1つの差別化は、名物キャラの発掘。『スッキリ』のスイーツ真壁、『とくダネ』の天達武史、『ミヤネ屋』の林裕人シェフのような「つい見てしまう」キャラが増えるほど視聴習慣がつきやすいだけに、新番組は新たな人材発掘に励んでいくだろう。

反面、現在のコメンテーターたちは、プロデューサーの意図を汲み、コンプライアンスを意識した優等生コメントや芸人の軽いボケが多く、生放送にも関わらずハプニングやドキドキは感じられない。「どうせこんな感じで言うんでしょ」ではなく、「あの人はこの事件にどんなコメントをするんだろう?」「あのゴシップをどう斬るのかな?」と期待を抱かせてほしい。

生放送の情報番組は、ドラマや音楽番組のように「録画している人もいるから」という言い訳は通用せず、「視聴率が評価の全て」という環境下に置かれている。その点、『ビビット』『ゴゴスマ』は早くも苦境に立っているが、"同じジャンルでの勝負"だけに「テコ入れ次第で一気に浮上できる」可能性を秘めている。プロデューサーを筆頭にスタッフの力量がリアルに問われそうだ。

■木村隆志
コラムニスト、テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴する重度のウォッチャー。雑誌やウェブにコラムを提供するほか、取材歴1000人超のタレント専門インタビュアーでもある。著書は『トップ・インタビュアーの聴き技84』など。