サヌート・チンダラッタさんはニューヨークに住むタイ人。大都会の喧騒の中でも、ゆったりと話し、優雅にふるまい、美しいものへのアンテナをはりめぐらせている印象です。これまでファッション業界で働いたり、飲食店を経営したり、忙しい日々を送っていましたが、今は母国タイの雑誌にニューヨークのトレンド情報、大好きな日本の旅レポートなどを寄せるライターです。ニューヨーカーのしたたかさに少々、疲れているこのごろ、大好きな日本への移住を夢見るサヌートさんです。

サヌート・チンダラッタさん/34歳/バンコク出身、ニューヨーク在住/ライフスタイルライター

■これまでのキャリアの経緯は?

大学でコンピュータサイエンスを学んだ後、2001年にニューヨークに渡りました。アートとデザインの勉強をするためです。サイエンスの覚えはあるし、あと自分に足りないものなんだろうと考えたとき、アートやデザインにもっと触れたいと思ったのです。だからニューヨークにやってきました。

ニューヨークではいろいろな仕事を経験しました。学校に通いながら、レストランでウェイターをしたこともあって、これがいい人生経験になりました。このときの経験が、2009年にニューヨークで自分のタイレストラン店を開いたときに役立ちました。学校を卒業してから、4年間は小売店でサラリーマンもしましたよ。お店を閉め、雇われる側にも、雇う側にも経験したところで、今はフリーランスのライターになり、ちょっとひと休みしている時期。前からトレンド予測やアートやデザインについての考え、旅行や食について書いていたので、友人であり、「ploygampetch」というタイの雑誌のエディターから、月に2回、ニューヨークのコラムを書いてみないかと言われたときは嬉しかったですね。その後はやはりタイの「ヴォーグ」や「ハーパーズバザー」など、様々な雑誌で記事を書くようになりました。

■現在のお給料は以前のお給料と比べてどうですか?

ニューヨークのトレンド事情を取材し、タイの雑誌に寄稿している

収入はニューヨークで小さな部屋を借りて暮らせるくらいの額です。ライターではそんなに稼げないけれど、この街で一応、暮らせているのでそれも悪くはないと思っています。

■今の仕事で気に入っているところ、満足を感じる瞬間は?

時間の自由がきくこと。朝、満員の通勤列車に乗る必要なし、です。

■逆に今の仕事で大変なこと、嫌な点は?

わかってはいるけど、やっぱりライターの収入の少なさに嘆くこともあります。世界中、どこの出版業界もこんなかんじでしょうね。この仕事はやろうと思えば、いくらでも怠けられます。家で仕事をしていると、ついテレビを見たり、犬と遊んだりしてしまいますから、常に何かに熱中していなければいけないと自分に言い聞かせています。

■日本人のイメージは? あるいは、理解し難いところなどありますか?

親友が日本人なので、若いころから日本にはよく遊びに行っています。タイに帰る途中に必ず寄って、ファッションやオシャレなカフェをチェックしたり、和牛を食べたりしています。日本ではいい体験しかありません。安心感があるし、楽しいこともたくさんありますよね。

■最近、気になる日本のニュースはありましたか?

日本人の友人とのつきあいで、日本語も少しずつしゃべれるようになりました。日本語にもっと慣れるためにも、1日中、テレビはNHKにしています。日本のニュース番組はキャスターが礼儀正しくて、やるべきことをちゃんとやっている印象です。というのも、アメリカの夜のニュースといえば、キャスターがコーヒーを飲みながら、自分の意見ばかりをうるさく発言するていたらくですから。

(編集部注:チンダラッタさん個人の感想です)

■ちなみに、今日のお昼ごはんは?

実は今、日本に来ています。今日は大好きな寿司店でお昼を食べました。ネタのクオリティがよくて、リーズナブル。店員がフレンドリーで、いつ行っても必ずおいしい。今日は「おまかせ」にしました。それからバッテラと地球一大きい(笑)太巻きも食べましたよ。

寿司店では"お任せ"で注文するほどのツウ

日本に旅をするのが大好き

■休日の過ごし方を教えてください。

人が多いところは好きではありません。なのにマンハッタンにすんでいる矛盾(笑)。 だから普通の人とは反対の生活です。込みそうなところには平日に行き、週末は家で過ごします。食事の買い物も、美術館に行くのも、通勤ラッシュが始まる5時前に切り上げます。だから、僕の目に映る日常はのんびりとして、美しいのです。

■将来の仕事や生活の展望は?

ニューヨークに住んでもう15年になるので、人生も次の章をめくるときだと感じています。バンコクに帰るか、東京に住む! 今はマンハッタンでのラストデイズを過ごしながら、物を見て、書くことを楽しんでいます。人生の目標は、料理でも陶芸でも、パンやケーキを焼くことでもいいから、何か手仕事を身につけたいですね。