既報の通り、Intelは2日にビジネスクライアント向けの管理プラットフォーム「第5世代Intel Core vPro」を発表した。これに合わせて都内で記者説明会を開催し、新たに追加された機能やその背景について説明した。

進歩する仕事術としてのvProテクノロジー

インテル株式会社 代表取締役社長の江田麻季子氏

まずインテル社長の江田 麻季子氏が登壇した。Intelはいまから12年前(2003年3月)にインテルCentrinoモバイル・テクノロジーを発表。「UNWIRE」をスローガンに無線LANをノートPCで普及させようとしたところから始まり、2006年9月に企業向けとしてのvProテクノロジーを発表以降、ユーザーニーズに合わせてvProテクノロジーの機能強化を行ってきた。

また、vProテクノロジーが活用される領域は、ビジネスクライアントマシンだけではなく、POSやサイネージ、サーバーといった分野にも広がっているとこれまでの経緯を説明し、今回は「進歩する仕事術~A Better Way to Work~」として、新たな機能をvProに加えたという。

PCからワイヤーをなくす取り組みの第一歩となったCenrinoモバイル・テクノロジーの発表

企業向けPCとしての管理保守と安全性を上げたvProテクノロジーの発表

vProは2006年以降、機能強化を繰り返しており、当初はクライアントPCだった領域も広げている

企業向けのワイヤレス表示とワイヤレスドックを実現

米Intelのコーポレーション コンピューティング・クライアント事業本部 副社長 兼 ビジネス・クライアント・プラットフォーム事業部長であるトム・ガリソン氏

続いて登壇した米Intelのトム・ガリソン氏は、TEDglobal2010でのSteven Johnson氏のスピーチ"Where good ideas come from"を引用し、「よいアイディアは複数のアイディアがぶつかりあい、結び付くところから生まれる」と述べる。

ガリソン氏によると現在、世界の大企業の70%は職場変革に向けて、何らかのプログラムを実施しており、世界中のトレンドとなっているという。職場変革の動きは、オフィススペースを減らしつつ、社員をなるべくまとめたいという欲求からスタートし、モバイルコンピューティングへの移行と会議スペースの効率的な利用を促してきた。さらに、従業員間の意思疎通が高まることで、創造性が促進され従業員の満足度も上がるという予想外の副次的な効用も見られたとしている。

良いアイディアはいくつかのアイディアがぶつかりあったところから生まれるので、それを促進する職場環境がイノベーションを生み出すという

ワークスタイル変革は会社の生産性を上げるだけでなく優秀な若い人材を引き付けるという意味でも重要とのこと

また、米国では2020年までに団塊ジュニア世代が就労人口の3/4を占める一方、彼らは大企業よりも小さくても創造性の高い職場に行きたいと考えているため、大企業は彼らを引き付ける職場環境作りが求められているという。

Intelは創造的な職場環境を作り出す手伝いを行っており、職場環境の変革ビジネスは10億ドル規模に達している。職場改革を実現するためには「従業員の意思疎通を改善」することや「移動の多いユーザーや分散しているユーザーの要求に対応」すること、「より進んだ生産性とコラボレーションを実現」が必要であり、そのために生まれたのが第5世代のCore vProテクノロジーであるとした。

良いアイディアはいくつかのアイディアがぶつかりあったところから生まれるので、それを促進する職場環境がイノベーションを生み出すという

ワークスタイル変革は会社の生産性を上げるだけでなく優秀な若い人材を引き付けるという意味でも重要とのこと

第5世代となるインテルvProテクノロジーはさらなるケーブルレス化が進められた。具体的には従来のWiDiよりも管理性や堅牢性が強化された、ビジネス向けのワイヤレスディスプレイ技術Intel Pro WiDi、WiGigを使用したワイヤレス・ドッキングが挙げられる。

通常の企業では4年程度の周期でPCをリプレースするので、4年前のPCと今度の第5世代Core vProプロセッサ搭載PCの比較を紹介。4年間使ったPCのバッテリはかなり消耗しているので、新製品と比べると実際にはもっと差があるだろう

第5世代Core vProプラットフォームの構成要素。ワイヤレス・ドッキングのためにはWiGigが必要だが、vProを利用する場合は、これもIntel製であることが定められている。SSDは暗号化に対応している

14nmプロセスで35%のトランジスタ数増を行いつつ、ダイサイズを37%下げて消費電力の削減を図ったプロセッサ

vProプラットフォームを採用するOEMメーカー

Intel Pro WiDiはコンシューマ向けのWiDiの発展版で、ネットワークと異なる周波数帯を使い、無線LANの電波が飛び交う場所でも安定した接続を実現する。さらに複数人のミーティングでのスムーズな表示の移行やアダプタのリモート管理といった機能も盛り込む。すでにアダプタが販売されているほか、パナソニックからIntel Pro WiDi機能が含まれたプロジェクターも発表された。

ワイヤレスディスプレイの強化、ワイヤレス・ドッキングとバッテリ持続時間の向上が機能面でのメリットとなる

WiDiと比べるとセキュリティやプライバシー、運用管理、堅牢性の高さがある

パナソニック AVCネットワーク社 常務ビジネスモバイル事業担当 ITプロダクツ事業部長 原田秀昭氏「Let's NOTEはすべてvPro採用で、今回はこれにプロジェクターにPro WiDiを搭載して、ケーブルのないビジネスモバイルの新たなフェーズを作りたい」とコメント

ワイヤレス・ドッキングは社内の共通利用ブースでケーブルを差し込むことなく、ブース内のディスプレイ、マウスやキーボードと無線接続できる。企業では複数メーカーのPCを採用し、配置していることが多いのだが、この場合ではドッキングステーションの互換性のなさが問題となっていた。

第5世代Core vProではIntel製のWiGigモジュールを使うことでベンダーに関係なく利用が可能。複数のドッキングステーションを配置する必要性もなく、ケーブルの抜き差しの手間も省ける。

説明会では米Hewlett-Packardでの事例に関する動画も紹介された。これによると、会議の準備でケーブルの抜き差しによって約5分かかり、これが30万人の従業員規模で考えると年間5億ドルのコストになると試算したという。

ワイヤレスディスプレイの強化、ワイヤレス・ドッキングとバッテリ持続時間の向上が機能面でのメリットとなる

WiDiと比べるとセキュリティやプライバシー、運用管理、堅牢性の高さがある

最後のワイヤードは電源。この対応は今後

ノートパソコンを使う場合のケーブル接続を減らす事と企業向けの管理性・信頼性・安全性の高さというのがvProで言われてきたことだが、最後のケーブル接続は電源だ。しかもこれらはベンダー間での統一がない。

ガリソン氏は電源が最後のワイヤードになっており、これに関してはA4WP(Alliance for Wireless Power)に着目していると発言し今後の対応を示唆した(インテルは2013年6月19日にA4WPのボードメンバーに加わっている)。

展示スペースの様子も紹介

また、会場にはIntelの最新プロセッサをした製品やデモを披露するショーケースも用意されたので、こちらも合わせて紹介する。

vProだけでなくCore i/Mの最新機種の展示が行われていた

WiGigのワイヤレス・ドッキングを用意したのはHP。今後対応製品が増えてくるものと思われる

ワイヤレス・ドッキングのデモ環境。右下のPCを持ってくるだけで、2つの拡張ディスプレイとキーボード・マウスが利用可能になる。非常にすっきりした配置だ

Pro WiDiを使ったミーティングのイメージ。右のノートパソコンで参加者のタブレット画面をスクリーンに投影する。現在は最大16台まで対応している。右に置いてあるのはかつての必需品であった変換アダプタ群

Pro WiDiのもう一つのデモ。右のタッチ対応ディスプレイでタッチ操作した内容が左のタブレットに伝わり、どちらからでもタッチ操作が可能だ

Pro WiDi搭載プロジェクター。デモはXGAモデルのPT-VX425NだがWXGAモデルもある。写真が暗くてわかりにくいが、ケーブルは電源ケーブルだけの接続だ

また、Intelは2日にスティック型PC「Compute Stick」の国内販売を発表した。ここではアイ・オー・データが展示を行っていた。「Compute Stick」と同社製周辺機器をセットで販売するという。

本日もう一つの発表であるインテルCompute Stick。こちらはRAM 2GB/ストレージ32GBのWindows 8.1モデル。RAM1GB/ストレージ16GBのLinuxモデルも発売される

展示を行っていたのはアイ・オー・データ機器で、左のMicrosoftマウス・キーボードとのセット販売も行うという