近年減り続ける一方の銭湯の形態は二極化している。古き良き昭和の姿を保つ伝統的な銭湯と、時代に合わせてより近代化・充実した設備を目指す銭湯である。今回紹介するのはその後者、東武東上線「ときわ台」駅より徒歩7分のところにある「アクアセゾン」(東京都板橋区)という銭湯だ。
リニューアルで明るくキレイに
角地のマンションの1階部分、典型的なビル銭湯タイプのつくりで、大枠の基礎はそのままに2014年10月にプチリニューアルをしている。前後を比較すると、浴室の中がスッキリと整理され、より明るくキレイになった印象だ。
自動ドアから中に入ると、左右に券売機があるのでこちらで代金を支払う。正面にフロント。こちらではタオルや石けん類の販売のほか、飲み物やビール、ソフトクリームを購入することもできる。手前のスペースがロビーになっており、テーブルと大型テレビ、自動販売機やマッサージチェアなどが備えられている。脱衣所の入り口は入って右手側。男湯は左、女湯は右に進む。
フローリングの脱衣所は清潔感バッチリ。ロッカーはそれぞれ各面にあり、100円玉の返却式になっている。サウナ利用者はフロントで別途鍵を受け取る仕組みのようだ。中央には腰掛け、洗面台は2基、そのほかデジタル体重計、こちらにも自動販売機がある。
和のモザイクタイルで波を表現
浴室に入ると男女境目側に浴槽、反対側にカランが並ぶレイアウト。カランには全てハンド式のシャワーがついており、無料のボディーソープ&リンスインシャンプーも設置されている。富士山のペンキ絵はないが、境目の壁には和の伝統文様「麻の葉」の形をしたタイルを敷き詰めて、波が描かれている。とあるアートモザイクタイルのブランドなんだとか。
アクアセゾンの魅力はなんといってもその豊富な浴槽。人気が高いのは、手前円形状の真っ白なシルキー風呂と、その奥にある炭酸泉風呂のふたつ。湯は軟水を使用しており、肌はスベスベ、髪はサラサラに。温度は比較的ぬるめだ。
また、別料金だがサウナも根強い人気がある。サウナ室にはテレビ付き。男湯のサウナは約90度の高温サウナだが、女湯の方は約60度で湿度の高いロッキーサウナになっているなどの工夫もある。
施設としてのボリュームで比べれば、大手のスーパー銭湯にはかなうべくもないだろうが、都内統一の低料金(大人460円)、そしてこれだけのクオリティーの銭湯が住宅街に溶けこんでいるというのは銭湯の魅力、面白みでもある。たとえ近所に住んでいなくとも、足を伸ばしてみる価値は十分にある銭湯のひとつだ。
※記事中の情報は2015年3月時点のもの。イメージ図は筆者の調査に基づくもので正確なものではございません
筆者プロフィール: 高山 洋介(たかやま ようすけ)
1981年生まれ。三重県出身、東京都在住。同人サークル「ENGELERS」にて、主に都内の銭湯を紹介した『東京銭湯』シリーズを制作している。