現在、日本での避妊法の主流はコンドームですが、実はそれ以外にも選択可能な避妊法はいろいろとあります。前編では、低用量ピルや子宮内避妊システム、ペッサリーなど、女性主導で行える避妊法を紹介しました。後編では、殺精子剤や避妊手術といった、そのほかの避妊法について解説。あわせて、広く知られているけれど実は誤った避妊法についてもお話しします。

直前に膣内に入れる殺精子剤や、手術で避妊する方法も

次の方法は、多くのカップルにとってはあまり現実的とは言えないかもしれませんが、こういう方法もあるということはおさえておきましょう。

・殺精子剤
セックスの直前に、膣内に精子を殺す薬剤を入れておく方法です。薬剤の種類には、発泡剤、ゼリー、クリームなどがありますが、発泡剤以外は現在、日本では発売されていません。手軽で副作用もほとんどありませんが、挿入して約5分経過しないと効果が現れず、持続時間も約60分と限界があります。また、薬の量や濃度が落ちると効力も落ちることに。単独では失敗の可能性が高いため、コンドームなどとの併用が基本です。

・避妊手術
女性の場合は、卵管をしばることで、卵子と精子の通り道をふさぐ卵管結さつ術、男性の場合は、精管をしばって精子が放出されないようにする精管結さつ術(パイプカット)を行います。避妊効果は高いものの、一度手術してしまうと機能を元に戻すことが難しくなるため、将来妊娠を希望する人にはお勧めできません。すでに子どもがいて、これ以上妊娠を望まない人などが、確実な避妊法として選択する場合があります。

失敗する可能性大! 誤った避妊法

多くのカップルが避妊法として選んでいる方法の中には、あてにならない誤ったものもあるので、注意が必要です。

・膣外射精
射精の直前に膣から男性器を出し、膣外に射精するという方法のこと。有効な避妊法と勘違いしている人も多いのですが、これは間違い。精液は射精の前から少しずつ出ているからです。また女性器の近くに射精した場合は、精子が膣内に入り込む可能性もあります。

・オギノ式
月経周期から排卵日を予測し、その前後数日間はセックスしないという方法です。この方法は、もともと妊娠を望む人が妊娠しやすい時期を知り、妊娠率を高めるためのもの。排卵日を確実に知ることは難しいため、有効な避妊法とは言えません。

前編・後編にわたり、コンドーム以外の避妊法をいろいろとご紹介しました。もちろんコンドームも、安全で有効な避妊法のひとつであり、性感染症を防ぐ方法として有効です。ただし、どの避妊法にもメリットとデメリットがあり、中には単独では確実に避妊できないものもあるので、時には複数の避妊法を組み合わせることも必要です。パートナー任せにせず、2人で話し合いながら、より確実で自分たちに合う避妊法を見つけてくださいね。

※画像は本文と関係ありません

善方裕美 医師

日本産婦人科学会専門医、日本女性医学会専門医
1993年高知医科大学を卒業。神奈川県横浜市港北区小机にて「よしかた産婦人科・副院長」を務める。また、横浜市立大学産婦人科にて、女性健康外来、成人病予防外来も担当。自身も3人の子どもを持つ現役のワーキング・ママでもある。

主な著書・監修書籍
『マタニティ&ベビーピラティス―ママになってもエクササイズ!(小学館)』
『だって更年期なんだもーん―なんだ、そうだったの?この不調(主婦の友社)』
『0~6歳 はじめての女の子の育児(ナツメ社)』など