フィギュアスケートの世界選手権が3月25日、中国・上海にて開幕する。大会連覇を目指す羽生結弦選手をはじめ、日本人選手たちの活躍が待ちきれないファンも多いだろう。
同大会の開催は、2014-2015シーズンのフィギュアスケートのフィナーレが近づいてきている証しでもあるが、今シーズンも実にさまざまなドラマがファンの心を打った。そこで、日本人フィギュアスケート選手の活躍を中心に、世界選手権を前に今シーズンを一度振り返ってみよう。
グランプリシリーズ
日本の絶対エース・羽生選手を強烈にライバル視する町田選手が、グランプリ(GP)シリーズ初戦のスケートアメリカ大会でトータル269.09をマークし、大会2連覇を果たした。2014年のソチ五輪では、銅メダルまであとわずか1.68差だった。その「近くて遠い距離」を埋めるべく、積んできた努力が結実した大会だった。
■無良崇人選手がスケートカナダ大会で初優勝
■GPシリーズ中国杯で羽生選手が負傷、ルール整備を求める声も
GPシリーズの中国杯では、羽生選手に悲劇が訪れた。フリー直前の公式練習で、中国のエン・カン選手と激突。氷上に激しく体を打ちつけ、頭部などから流血を伴うケガを負った。出場は不可能かに思われたが、ソチ五輪の王者は戦うことを選択。傷だらけの体でもフリー2位の154・60をマークし、総合で2位に入った。
ただ、Twitter上では羽生選手の出場に関して「物凄いまでのアスリート精神でしたね」という"擁護派"と「この判断が正しいとは思えない」という"反対派"で意見が割れた。また、「はやくルール整備したほうがいいよ」など、直前の6分間練習の方法を変えるべきといった持論を展開する意見もあった(原文ママ)。
■町田選手がエリック・ボンパール杯2位でGPファイナルを決める
ソチ五輪で5位、その後の世界選手権で2位と着実に実力を付けていった町田選手が、エリック・ボンパール杯でトータル237.74にまとめ、2位になった。この結果、3シーズン連続のGPファイナル出場を決めた。
■NHK杯は無良選手が3位、羽生選手が4位で共にGPファイナル決定
グランプリファイナル
先の中国杯で負傷した羽生選手は、GPファイナルにギリギリ6位での出場となったが、ショートプログラム(SP)で94.06をマークすると、フリーでも圧巻の演技を披露。およそ1月半前の"悪夢"からの完全復活を印象付けるかのような、自己ベストの194・08をたたき出し、トータル288・16で見事に優勝、大会2連覇を達成した。
GPファイナルには、羽生選手のほかにも町田選手、無良選手、本郷理華選手が出場した。町田選手はSPで2位につけたが、フリーでのジャンプミスが続き、6位に沈んだ。ファイナル初出場の無良選手は5位、繰り上げで同じく初出場となった本郷選手も5位のユリア・リプニツカヤ選手(ロシア)と1・66差の6位となり、共に"ほろ苦デビュー"となった。
全日本選手権
12月26日から28日にかけて開催された2014年最後の大会「全日本選手権」は、羽生選手の大会3連覇で幕を閉じた。「ジャンプ着氷時の流れ」「空中姿勢での工夫」などのジャンプ時の工夫や、フリーの演技後半に3本のジャンプコンビーネーションを入れる演技構成などを武器に、着実に得点を伸ばして栄冠を手にした。
男子では、大会終了後に町田選手が電撃引退を表明し、ジュニアの新鋭・宇野昌磨選手が2位に入るなど、見どころが満載だった。また、昨シーズンも同大会で3位に入っている小塚崇彦選手が、観客を魅了する演技で今大会でも3位に入った。女子では女王・浅田真央選手が不在の中、「練習の鬼」との異名を持つ宮原知子選手が新女王に輝いた。3位に入った樋口新葉選手をはじめ、女子はジュニアの活躍が光った。
四大陸&世界ジュニア選手権
■四大陸選手権、女子は宮原選手と本郷選手が2位、3位でフィニッシュ
■世界ジュニア選手権で17歳の宇野選手が初優勝
全日本選手権でその実力を見せつけた宇野選手が、SP1位、フリー2位の安定した滑りを見せ、トータル232.54点で悲願の初優勝を果たした。日本男子選手の優勝は、2002年の高橋大輔選手、2005年の織田信成選手、2006年の小塚崇彦選手、2010年の羽生結弦選手に続き、5人目の快挙となった。
残り少ない今シーズンをしっかりと目に焼き付けよう
もちろん、今回紹介した選手以外にも、数多くのフィギュアスケート選手が世界や国内の舞台で活躍している。自分がずっと応援・注目してきた選手が見事な演技を見せ、銀盤でいつも以上にまぶしく輝く瞬間はファン冥利(みょうり)に尽きるものがあるだろう。そんな機会も、今シーズンは残すところあとわずかとなった。最後まで、その勇姿をしっかりと目に焼き付けるようにしよう。