マイナビニュースの女性会員200名に「このひとエロそうと思った男性の言動」について聞いてみたところ、「ちらちらお尻や胸元を見ていたとき」(34歳/ホテル・旅行・アミューズメント/事務系専門職)、「体(胸)を見てしゃべる」(25歳/不動産/事務系専門職)、「脚ばかりみてる」(24歳/機械・精密機器/事務系専門職)など、目線がエロいという答えが多く返ってきました。ですが、そもそもエロチシズム、いわゆる「エロさ」とは何なのでしょうか。どうして異性を見て、エロいと感じてしまうのでしょうか。

性的な魅力を感じる対象は文化によって左右される

エロという言葉には、いろいろな意味がありますよね。ここではひとまず性的魅力という意味で考えていくことにしましょう。ひとが異性に対して性的な魅力を感じるのは、一つには生殖行動と関係していることは間違いないでしょう。進化心理学的にいえば、性的な興奮を覚えることで、繁殖という行動を引き起こし、子孫を残すことを実現させるわけです。

ですが興味深いことに、人が何に性的な魅力を感じるかは絶対的なものではなく、文化によって左右されます。例えば、私たち日本で生まれ育った男性の多くは、女性の胸に引きつけられてしまう、大きな胸の女性と街ですれ違うと、悲しいかな思わず振り向いてしまうという人も多いのではないでしょうか。ですが、南米の国ブラジルでは事情が違います。ミス・ブンブンコンテストというのを聞いたことはありませんか。ブラジルで、最も美しいお尻を決定するコンテストのことです。そう、ブラジルでは胸よりもお尻なんです。

「胸」か「お尻」かは服装の歴史が違うため

日本人だとどちらかというと、胸を大きくしたい、お尻は小さくしたいという女性が多いでしょう。ですが、ブラジルではお尻を大きくする手術が、女性の間で行われています。それはブラジルでは、お尻に性的な魅力を感じるからです。ではなぜ、日本人はお尻なのではなく胸なのか。それは、今の日本が欧米文化の影響を受けているから。もともと、着物(和服)を着ていた頃であれば、日本人も胸よりはお尻でした。

着物の話がでたので、性的魅力をファッションとの関係で考えてみましょう。被服心理学では、性的魅力を感じる身体部位のことを、性的部位とよんでいます。この性的部位、じつは隠されていることでこそ性的部位になり得るとされています。分かりやすく言えば、もろ見えの状態や見慣れてしまうと性的部位ではなくなるということです。

例えば、ロングスカートをはいていて、脚がみえないとき。なにかの瞬間、風でスカートがめくれ脚があらわになる。すると、それをみて興奮する男性というのは少なくないでしょう。ですが、生足でショートパンツをはいている女性を夏場に街で沢山見かけても、興奮を覚えるという男性はさほどいないでしょう。言い換えるとチラリズムこそが、性的魅力を生み出すことにもなります。ひとことでエロといいますが、実はけっこう奥深いものなのですね。

※写真と本文は関係ありません

著者プロフィール

平松隆円
化粧心理学者 / 大学教員
1980年滋賀県生まれ。2008年世界でも類をみない化粧研究で博士(教育学)の学位を取得。京都大学研究員、国際日本文化研究センター講師、チュラロンコーン大学講師などを歴任。専門は、化粧心理学や化粧文化論など。魅力や男女の恋ゴコロに関する心理にも詳しい。現在は、生活の拠点をバンコクに移し、日本と往復しながら、大学の講義のみならず、テレビ、雑誌、講演会などの仕事を行う。主著は『化粧にみる日本文化』『黒髪と美女の日本史』『邪推するよそおい』など。