賃貸住宅を借りて2年を経過すると請求されることがある更新料。東京では「賃料の1ヶ月分」を請求されるケースが多く、決して安くない金額ゆえ、かなり痛い出費と感じる方もいるでしょう。払わなくてもいいのなら払いたくない!と思ってしまいますが、何か出費を抑えるコツはあるのでしょうか? 。そこで、賃貸住宅の更新料支払いについて “不動産・住生活”のプロに伺いました。
契約書に更新料を支払うことが明記されていれば、支払う必要がある
契約書に更新料を払うことが明記されていれば、払わなければなりません。ここで、契約書に更新料の支払いについて明記されていなければ、払う必要はありません。もし、契約書に更新料支払いが明記されていないにもかかわらず、「更新料を払ってほしい」と言われた場合は、「契約書に書かれていないので払う必要はないです」と伝えればよいのですが、対応に困ったときは、「払う」とは言わずに、最寄りの消費生活センターに電話したり、自治体の不動産(法律)相談に連絡したりしてみましょう。連絡先を調べるには、「消費生活センター」で検索したり、居住地の自治体に電話して「賃貸住宅の更新料のことで法律相談したいのですが」と尋ねたりしてみましょう。窓口を教えてもらえます。
更新料の支払いが明記されている場合でも、非常に高額な場合は、そのまま払う必要はありません。ここで、高額といわれる目安ですが、平成23年7月に最高裁判所が判決で触れています。判決の元になった訴えは以下のように3件ありました。
①月額賃料4万5,000円、契約期間1年、更新料10万円
②月額賃料5万2,000円、契約期間2年、更新料賃料の2か月分
③月額賃料3万8,000円、契約期間1年、更新料賃料の2か月分
このくらいであれば、高額すぎるとはならないと判断しています。
ところで、契約書に明記されている場合、これからもずっと更新料を払っていくことに抵抗感を覚える方もいらっしゃるでしょう。
更新の際に、全く交渉できないのかといえば、必ずしもそうではありません。アパートやマンションを借りる際には、契約期間が定められています。その契約を更新する際に、借りている側から貸している側に支払われるお金が「更新料」です。2年契約であれば、2年に一度ですが、まれに1年契約となっていることがあるので注意しましょう。更新料は、先ほどの最高裁の判例では「賃料の補充や前払い、契約継続の対価などの趣旨を含む複合的なもの」と定義されていますが、実際は、地域的な長年の慣習です。大家さんが不動産会社でその費用を折半したり、大家さんが全額受け取ったりしている例がほとんどです。更新料は、地域や物件によりに金額などに違いがあります。
更新料の支払いを拒否した場合どうなる?
もし、契約書に更新料を支払うことが明記されているにもかかわらず、払わなかったらどうなるのでしょうか。すぐ退去させられることにはならないのですが、更新料を払ってもらうために裁判を起こされたり、退去時に敷金から更新料分を差し引かれたりする可能性があります。裁判を起こされれば、契約書に明記されている分、支払を免れることは難しいでしょう。また、ずっと払わないままでいると最悪の場合、賃貸借契約の解除となり、退去せざるをえなくなることがあります。そうなるまでには、時間を要しますが、払っていない間ずっと、大きなストレスを抱えることになります。かなり心臓の強い方でなければ、こういった状況には耐えられないのではないでしょうか。
更新料の有無は地域によって違う。関東圏では支払うのが一般的、関西圏では支払わないことのほうが多い
平成29年度(2017年度)の国土交通省「住宅市場動向調査」によると、更新手数料がある世帯は、38.2%となっています。その月数は「1 ヶ月ちょうど」が77.4%を占めています。エリア別にみていくと、平成29年度では、三大都市圏が38.2%。首都圏では、57.0%、中京圏では17.8%、近畿圏では12.8%。首都圏での設定は半数以上を占めているのに対し、中京圏や近畿圏では2割以下と地域によって違いがあります。物件別にみると、一戸建てでは30.4%に対し、集合住宅では39.0%とやや多めになっています。
これとは別のやや古い調査になりますが、平成19年(2007年)に国土交通省が発表した「民間賃貸住宅実態調査」によると、首都圏で徴収している割合が最も高いのは神奈川県90.1%。続いて千葉県82.9%。東京都65.0%、埼玉県61.6%となっています。千葉県、東京都の平均金額は「1ヶ月分」。埼玉県では「0.5カ月分」、神奈川県では「0.8カ月分」です。一方で、大阪府や兵庫県では「ゼロ」。また、北海道では28.5%が更新料を設定しているものの、金額は「0.1カ月分」。広島県でも19.1%の物件で徴収されていますが、こちらも「0.2カ月分」の設定です。地域差がありますね。
大家さんによっては更新料の減額交渉に応じてくれることがある
このように、契約書に明記されていれば、高額でない場合、支払わなければなりません。それは、先ほど述べたように平成23年の最高裁判所における更新料の判決があるからです。ただし、大家さんがこちら側の話に耳を傾けてくれれば、お互いに話し合うことは可能です。そして、大家さんが「退去されると次がなかなか決まらないかも」と思い、内容に納得してくれれば更新料の金額が見直される可能性はあります。実際に、大家さんの側から「今回は更新料が必要だが、次回以降の更新時期の更新料をなしにする」という契約を提示して再契約した例もあります。一方で、人気のある立地や物件で、次の入居者が見つかりやすいような場合は、大家さんが納得しないかもしれません。こうなると、更新料は支払わなければなりません。
更新料の減額交渉をするには、それまできちんと暮らしていることが大事
更新料が負担になっているなら、率直で正直な思いを伝えてみましょう。「更新料が負担になっています。暮らしやすいこの住まいを気に入っているので、半月分程度にしてもらえれば退去をやめたいと思うのですが」などです。長く住みたいと思うなら、その気持ちも伝えてみてはいかがでしょうか。なお、これ以前にあなた自身が、家賃の滞納や近隣に迷惑をかけた住み方をせずに、きちんと暮らしていることが基本です。普段から丁寧な人同士のお付き合いは大切です。何年くらい住むか先を考えて、話し合ってはどうでしょうか。
更新料に消費税はかかる?
ところで、消費税がまもなく10%にアップしますが、建物が住宅として使用されていれば、更新料には消費税はかかりません。ただし、不動産会社に更新手数料などを支払う場合、これに消費税がかかってきます。また、住宅として使用している方には、無関係の話題ですが、借りている物件が事業用(店舗や事務所)として使用していれば、消費税が必要になります。
更新料のない部屋を選ぶのも一つの方法
なお、これから住まい選びをするのであれば、更新料のない物件を探すのも方法です。更新料が一般的な首都圏でも、たとえば先の平成29年度(2017年度)の「住宅市場動向調査」データをみると、首都圏で43%の民間賃貸住宅に更新料が設定されていません。不動産会社に「更新料がない物件を探しています」と伝えてみましょう。UR賃貸や東京都住宅供給公社など、公的な賃貸住宅には更新料はありませんから、こういった物件を選ぶのも方法です。
高田七穂(たかだ なお):不動産・住生活ライター。住まいの選び方や管理、リフォームなどを専門に執筆。モットーは「住む側や消費者の視点」。書籍に『絶対にだまされない マンションの買い方』(共著)『マンションは消費税増税前に絶対買うべし!?』(いずれもエクスナレッジ)など。「夕刊フジ」にて『住まいの処方銭』連載中
※本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。