就職活動をテーマにした「就活ミュージカル!」が東京芸術劇場で上演中だ。「就活、就活、就活―。ぼくらは一体何のために…?」をコピーに、学生や新社会人、就活生の娘を持つ親など様々な立場の人間が「就職活動」に悩みながら生きていく姿を描いた群像劇となっている。舞台稽古と初回公演に足を運んだ。

「就活ミュージカル!」が東京芸術劇場で上演中

同作品は、大学生や若手社会人の有志200名が、プロの手を借りて作り上げたオリジナル作品。日本の就職活動や企業における若者の働き方の現状を社会に訴え、改善策を皆で考えることを目的に活動している団体「就職戦線異状アリ」が主体となりプロジェクトを立ち上げた。

ミュージカルという形式を採用した理由は、誰もが楽しめる表現手段を使って「働くこと」を考えるきっかけとしてもらうため。メンバーは学生が7割、若手社会人が2割、プロが1割。学生の中には、就職活動を終えた方もいれば、これから就職活動を迎えるという方もいるという。答えが不明確な「就職活動への悩み」を抱える立場として、活動の現状を理解し意識を変えたいという思いを抱き参加した学生も見受けられた。

働くことをミュージカルで考える

「就活ミュージカル」のストーリー

舞台の中心は学生や若手社会人が住む「ドリーム・シェアハウス」(通称「ドリーシェ」)。ここで笑い合っていたメンバーが、就職活動が佳境に入るにつれ、自分だけ内定が出ないことや活動がうまくいかない仲間との人間関係などに悩む心の葛藤が描かれる。

思い悩んでいるのは、学生だけではない。本作では新社会人が入社前に感じていた理想と現実のギャップに疑問を抱く姿も物語の鍵となる。「本当にやりたい仕事はこれなのか」「このまま過酷な職場に身を置き続けるべきなのか」ともがき苦しむ登場人物たち。就職活動で「内定がゴール」になってしまう就活生への問題提起となっているのではないだろうか。

様々な立場から見た「就職活動」

それぞれの立場で浮上する問題に苦悩しつつ立ち向かい、衝撃のラストを迎える「就活ミュージカル」。参加学生や若手社会人の熱意が伝わってくる作品となっていた。

キャスト自身の就職活動は?

開演前の舞台稽古で、ミュージカルや就職活動に対するキャストの思いを聞くことができた。

サイトウ役を演じる水野さんは、一般企業への就職活動を行い内定を得たが、自分の進路を再考した結果、卒業後に起業という進路を選択。自身の就職活動を次のように振り返る。

「最終的には内定を辞退し、起業するという結果になったのですが、一般企業の就職活動はわりとすんなり終わりました。周りの友人も同様で、就活うつなどの問題に対する実感はなかったですね。正直、ミュージカルに参加して初めて理解できたというところもあります。起業したのは良い仲間に出会えたということも大きいですね。過去を振り返ってみて、この選択肢で良かったと思います」(水野さん)

舞台稽古の様子

アヤカ役の神明さんは、現在大学2年生。就職活動は未経験だが、ミュージカルを通して「今まではあまり想像できなかったけれど、皆が悩みながら活動をしているということをリアルに感じられるようになった」(神明さん)という。

今後の就職活動については「これから就職活動を迎える学生として、考える機会を得ることができました。悩んでいるのは1人だけじゃなく、皆が悩みながら活動をしているのですよね。ストーリーでは『仲間』が重要な鍵となります。就活でも周りと支えあい、つながってゆくことが重要だと思います」(神明さん)と語ってくれた。

舞台稽古の様子

「就活ミュージカル!」の上演期間は22日まで、公演時間は19日~21日は14時・19時、22日は11時・16時の1日2回。場所は東京都豊島区西池袋1-8-1 東京芸術劇場 シアターウエスト。当日券は高校生以下3,000円、大学生3,500円、社会人4,500円(全席指定/税込み)。