避妊に失敗したときや避妊せずにセックスしてしまったとき、72時間(3日間)以内に服用することで妊娠を防ぐことができる「アフターピル」。前編では、その概要と効果を中心にお話ししました。今回は、アフターピルの副作用など、知っておかなければいけないリスク面について解説します。
吐き気、嘔吐(おうと)などの副作用が出ることも
アフターピルは、計画的な避妊のために用いる低用量ピルに比べホルモン量が多いため、副作用もより強く出る傾向があります。主な副作用は、吐き気や気分の悪さ、頭痛、めまいなどですが、これらは数時間でおさまることが多いようです。ただし中には、吐き気がおさまらず嘔吐してしまう人も。アフターピル服用後、2時間以内に嘔吐してしまった場合は、場合によっては同量のアフターピルを再び服用しなければなりません。そのほか、「消退出血」といって、アフターピルに含まれるホルモンの作用で子宮内膜がはがれるために、生理のような出血がしばらく続くこともあります。
避妊効果は100%ではない
副作用があることのほかに、もう1つ、アフターピルに関して知っておいてほしいのは、たとえ正しく服用しても、100%妊娠を防げるわけではないということです。現在、主に使用されているアフターピルも避妊率は約97~99%とされており、妊娠が99.9%防げる低用量ピルと比較すれば、避妊率は低いといえます。 つまりアフターピルは、あくまで緊急のときに使う手段であり、低用量ピルに替わり得るものではないのです。
またアフターピルの服用は、中絶手術ほどではないにしても、副作用などで女性の体に負担をかけることになります。加えて、あくまで妊娠を回避するための薬であり、エイズをはじめとする性感染症を防ぐものではありません。 決して「アフターピルがあるから、避妊しなくても大丈夫」なんて安易に考えず、妊娠を望まないなら、日頃から計画的に避妊するようにしましょう。
上述のようなリスクはありますが、アフターピルが、緊急避妊法として有効かつ安全な方法であることも確かです。しかし日本では、アフターピルの存在はあまり知られていないのが現状。もしアフターピルを服用していれば、中絶を避けられたというケースも少なくないはずです。セックスの際に避妊に失敗するなど緊急事態に陥ったときには、少しでも早く、アフターピルの処方を行っている産婦人科や婦人科を受診するようにしてください。
※体の状態や既往歴(過去の病歴や健康の記録)によっては、アフターピルの処方ができない場合もあります
※画像は本文と関係ありません
善方裕美 医師
日本産婦人科学会専門医、日本女性医学会専門医
1993年高知医科大学を卒業。神奈川県横浜市港北区小机にて「よしかた産婦人科・副院長」を務める。また、横浜市立大学産婦人科にて、女性健康外来、成人病予防外来も担当。自身も3人の子どもを持つ現役のワーキング・ママでもある。
主な著書・監修書籍
『マタニティ&ベビーピラティス―ママになってもエクササイズ!(小学館)』
『だって更年期なんだもーん―なんだ、そうだったの?この不調(主婦の友社)』
『0~6歳 はじめての女の子の育児(ナツメ社)』など